旅立ち編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
滝の音が耳に残る。
白く砕ける水が岩を打ち、霧が立ち上った。足を止めるつもりはなかったが、気づけば視線が引き寄せられていた。
『サスケ』
サスケ「………」
彼女に呼ばれたような気がした。
くだらない。
イタチを殺すため、大蛇丸の元へ行き力を手に入れに来た。そのためなら何だって捨てると決めた。仲間も、里も、情も。今さら振り返る理由なんてない。それなのに、滝の飛沫が頬を掠めた瞬間、不意にあいつの顔が脳裏をよぎった。
里を出る前に向けられた視線。俺を励まそうとする声。理解しようとする態度。そのすべてがどうしようもなく苛立たしかった。
衝動だった。意識するなと自分に言い聞かせるほど、逆に存在が頭から離れなくなる。すぐ傍にいるのに届かない。手を伸ばせば掴めそうで、決して思い通りにはならないその距離が気に食わなかった。
ただ、欲しいと思った。それだけだった。無理やり唇を奪った瞬間のことは、今でも覚えている。一瞬で強張った身体に、驚いたように見開かれた瞳。そして、受け入れられなかったという事実。それだけが、今も胸の奥に澱のように沈んでいた。
サスケ「……チッ」
怒りとも後悔とも違う、もっと粘ついた感情が胸の奥に沈んでいた。そして、その正体も分かっている。俺が弱かったからだ。力がなかった。だから届かなかった。だから相手の意思に左右されるしかなかった。あの時の俺には、それ以上の何かを掴む力がなかった。
だが、今は違う。俺は力を手に入れる。イタチを殺し、その先へ辿り着く。誰にも覆せない力を、誰にも奪われない力を。そうなれば、届かないという感覚も、失うという恐怖も意味を失う。誰かの選択に振り回されることもない。拒絶されることもない。あの時のように、自分の無力さを思い知らされることも。
欲しいものはこの手で掴む。二度と取りこぼさない。逃げるなら追う。遠ざかるなら、その背中を見失わない。たとえどれだけ足掻こうと、どれだけ距離を取ろうと。今度は逃がさない。
サスケ「……待ってろ」
イタチを殺し、この血の意味を証明する。すべてを終わらせたその先で、あいつのところへ行く。
あの夜は終わりなんかじゃない。
俺にとっては、始まりだった。
