サスケ奪還編
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あいつのアパートを訪れるのは、今夜が初めてじゃない。任務帰りに夕飯を一緒に食べることは、これまでも何度かあった。たまたま時間が合った夜。どちらからともなく声をかけて、気づけば同じ卓を囲んでいる。
だから今日も、理由は特別じゃない。
――明日、旅立つ前夜だということを除けば。
テーブルに並ぶのは、簡単な夜ご飯。派手さはないが、手抜きじゃないことは一目で分かる。こういうところが、あいつらしい。
カカシ「へぇ……相変わらず、うまそうだね」
『適当だよ』
カカシ「その“適当”がいいんだって」
箸を伸ばしかけて、ふと目に留まった。
カカシ「……そのピアス、奈良家のじゃない?」
何気ない調子で振ると、名前は思い出したように口を開く。
『あ、返し忘れてた。あの任務の時に、シカマルが願掛けでくれたの。綺麗にしてから返せって言われてて……明日、返せるかな』
……なるほど。自来也様の言葉が、ふと頭をよぎる。〝あの一族は、人を引き寄せる〟。サスケもそうだった。そして、シカマルまでか。ほんと、厄介なくらい人に好かれる。
カカシ「ま、急ぎじゃないでしょ。そのうち返せばいいさ」
向かい合って座り、箸を取る。湯気の立つ料理と、静かな夜。こういう時間が、いつの間にか当たり前になっていたことに、今さら気づく。
カカシ「……明日、出るんだよね」
『うん』
それ以上は聞かない。もう、決まっていることだ。しばらくは、どうでもいい話をする。里の噂、任務の愚痴。軽い冗談。それでも、会話の端々に“最後”が混じる。
カカシ「……こうして飯を食うのも。しばらくは、なしだね」
『……そうだね。先生、私がいないからって、女の人、連れ込みすぎないでよ』
――ゴフッ。
思いきり、汁物が喉に詰まった。
カカシ「……げほっ、げほっ……急に何言い出すのさ」
『私が、何度その現場を見たと思ってるんですか』
一度や二度じゃない。
……まあ、否定はできない。
カカシ「はいはい。“できるだけ”自粛する」
『できるだけ、ね』
……信用されてないな。彼女に言われると、なぜか反論する気が失せるから不思議だ。「ああ」と曖昧に返すと、あいつは小さく笑った。
『……ちゃんと、戻ってくるから』
その一言が、胸の奥に静かに引っかかる。長期任務は珍しくない。それでも、明日からこの時間がなくなると思うと、どうにも落ち着かない。箸を進めながら、何でもないふりをする。
カカシ「……無茶だけは、しないこと」
それが、今言える限界だった。きっと言ったところで、無駄だろうが。食事を終え、片付けを手伝う。流しに並ぶ食器の音が、やけに大きく響く。そろそろ、帰る時間だ。玄関までの距離が、やけに短く感じた。
カカシ「じゃ。……またね」
『……いってきます、先生』
夜風が、少し冷たい。背後で扉が閉まる音を聞きながら、小さく息を吐いた。まったく。ただの夜ご飯だったはずなのに、どうしてこんなに引っかかるんだか。部下だろうが何だろうが、二人で他愛もない会話をして、同じものを食べる夜の味を覚えてしまった。
〝連れ込みすぎないでよ〟
あいつの言葉を思い出す。……少し真面目に頑張ってみますか。そんなことを、心の片隅でほんの少しだけ思いながら、自室の扉を開けた。
