中忍選抜試験編 前編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あ、やばい。
完全に言い間違えた。
ここ数日、誰かさんの修行に付き合わされ、そのうえ当の本人がなかなか部屋へ戻らないせいで、寝不足が続いている。若いってのは恐ろしい。蓄積した疲労のせいか、言葉を選ぶ余裕なんてとっくに削げ落ちていた。とはいえ、今のはさすがにまずい。目の前の女が勢いよく振りかぶった手を、避けるべきか、それとも甘んじて受けるべきか、判断が一瞬遅れる。
「……このクズ」
次の瞬間には、反射的にその手首を掴んでいた。しまった、そう思った時にはもう遅い。彼女は苛立ったように手を振り払い、そのまま足早に立ち去っていく。完全に火に油を注いだ。去っていく背中を見送りながら、近くの柱へ背を預ける。深く息を吐き、首の後ろをぽりぽりとかいた。
「……やれやれ」
寝不足ってのは、ろくなことがない。
『またですか、カカシ先生』
少し不機嫌そうな声に振り返ると、買い物袋を提げた擦り傷だらけの名前が立っていた。あちこちに傷を作っているくせに、本人は気にした様子もない。その無頓着さが、いかにもこいつらしい。
カカシ「ま、大人の事情ってやつかな」
肩をすくめて誤魔化すと、案の定、呆れたような視線が返ってくる。
『……平手打ちされる〝大人の事情〟なんて、私は知りたくないです』
カカシ「ハハ。名前も年頃なんだから、恋話の一つや二つあってもいいだろ」
『二つもあっていいものなんですか?』
カカシ「……時と場合によるね」
『だから、さっきみたいになるんじゃないですか』
痛いところを突く。思わず言葉に詰まり、視線を逸らして曖昧に笑うしかなかった。ほんと、遠慮がない。名前は一人で暮らしてきたせいか、年齢のわりに妙に大人びている。物怖じしないというか、核心に踏み込むことを躊躇わないというか。出会った頃はもう少し年相応だった気もするが、今ではすっかりその面影も薄れてしまった。
カカシ「悪かったよ。ほどほどにする」
『私には関係ありませんので、ご自由に』
カカシ「なんか最近冷たいよね」
『何回、同じような現場見せられてると思ってるんですか』
カカシ「それは本当に…ごめんよ」
素直に頭を下げれば、すぐさま呆れた声が飛んでくる。
『それも何回目ですか…それより、今からご飯なんですけど、カカシ先生食べてきますか?』
相変わらず切り替えが早い。きっと興味がないのだろう。さっきまで説教していた相手とは思えないほど、あっさり話題を変えられ、思わず言葉を失う。名前 は自分の部屋の方を指差し、当たり前のように言った。
『あけておきます』
それだけ言い残してさっさと歩き出していく。その背中を見送りながら自然と苦笑が漏れた。最初は驚いたものだ。年頃の女が男を平然と部屋へ招き入れることにも、鍵を開けっぱなしにして待っていることにも。だが、それももう五回目ともなれば驚きは薄れる。
カカシ「……本当に、扱いに困るな」
ぼやきながら部屋へ向かうと、案の定、鍵は開いたまま。玄関には俺用のスリッパまで用意されていた。名前 はすでに夕食の支度の真っ最中だった。皿が手際よく並べられ、立ち上る湯気と香ばしい匂いが食欲を刺激する。彩りも悪くない。初めて招かれた時は、交流の一環、そんなものだと思っていた。それが今では、完全に胃袋を掴まれてる。
カカシ「本当に、うまそうなご飯だ」
