中忍選抜試験編 前編
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___あ、やばい。
完全に言い間違えた。
ここ数日、誰かさんの修行に付き合い、監視対象がなかなか部屋に戻らないせいで寝不足続き。疲労が蓄積しすぎて、言葉を選ぶ余裕なんてとっくになくなっていた。目の前の女性から飛んでくる平手打ちを、避けるべきか受けるべきか……判断が一瞬、遅れる。
「……このクズ」
掴まれた手を振り払い、女は早足で去っていった柱に背を預け、俺はひとつ、深く息を吐く。…やれやれだ。
『またですか? カカシ先生』
少し不機嫌そうな声に振り向くと、買い物袋を提げた擦り傷だらけの名前が立っていた。身なりを気にしないその様子が、逆に彼女らしい。
カカシ「まあ、大人の事情ってやつかな」
『……平手打ちされる“大人の事情”なんて、私は知りたくないです』
カカシ「ハハ。名前も年頃なんだから、恋話の一つや二つあってもいいだろ」
『二つもあっていいものなんですか?』
カカシ「……時と場合によるね」
『だから、さっきみたいになるんじゃないですか』
……痛いところを突かれた。言葉に詰まり、視線を逸らして笑うしかなかった。一人で暮らしてきたせいか、彼女は年齢のわりに妙に大人びている。時々、こうして核心を突く言葉を、容赦なく投げてくる。
カカシ「悪かったよ。ほどほどにする」
『私には関係ありません』
一拍置いて、彼女は袋を軽く持ち上げた。
『……それより、ご飯にしましょう。お腹すきました。カカシ先生も、まだですよね?』
部屋の方を指す仕草に、一瞬言葉を失う。最初こそ驚いたが、もう何度目だろう。こんな気遣いをされるとは思っていなかったから、返事が少し遅れた。
『あけておきます』
先に歩いていく背中を見送りながら、思わず苦笑する。
カカシ「……本当に、扱いに困るな」
鍵は開けっぱなしで、スリッパまで用意されていた。部屋に入ると、名前はてきぱきと夕食を並べている。香りも彩りもいい食事。初めて招かれた時は、“交流の一環”くらいにしか思っていなかったのに――気づけば、完全に胃袋を掴まれている。
『……』
カカシ「…………」
『……』
カカシ「今日は、誘ってくれないと思ったよ」
『……私が帰ってくるの、待ってたんでしょ?』
一瞬、言葉に詰まる。俺が言うことはあっても、女性にここまで素直に言われるのは珍しい。笑いそうになるのを、なんとか堪えた。
『監視対象が遅いと、気になりますよね。それに、お疲れの様子だったので。修行に付き合ってもらってるお礼も兼ねて』
カカシ「くく…お疲れ、か。予想外すぎて面白いよ」
ああ、そっちの意味か。一瞬、別の意味で受け取ってしまった自分に、内心で苦笑する。
『バカにしました?』
カカシ「いや、褒めてるんだ。本当に……油断できないな」
『……そうですか?』
カカシ「悪い意味じゃないよ。気にしないで」
眉間に皺を寄せる彼女の頭を、軽く撫でる。振り払われることはないが、じとっと睨んでくるその目が、面白くて仕方がない。その反応に――気づけば、またひとつ。彼女への興味が、確かに増していた。
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アスマ「おい、聞いてんのか?」
カカシ「聞いてるよ。で、何?」
アスマ「いや絶対聞いてねーだろ。部下が心配で心ここにあらずって顔してるぞ。……今年の第一試験官、森乃イビキだぞ」
カカシ「よりにもよって、あのサディストか」
アスマ「そういやさ。お前んとこの“お気に入り”も推薦したって聞いたぞ。まだ二か月だろ? 来年でもよかったんじゃねーのか」
カカシ「名前のこと? 別にお気に入りじゃない。ただ、本人が“出たい”って言ったから出すだけ」
ここ数週間、ナルトたちに追いつくために、任務も修行も、まとめて叩き込んでいたせいか、里では妙な噂が立ち始めているらしい。
アスマ「付き合い悪いと思ったら、毎日あの子と一緒とはな。そりゃ嫉妬する奴も出るわ」
紅「最近、妙に静かだった理由が分かったわね」
カカシ「うるさいな。俺を何だと思ってるんだよ」
アスマ・紅「すけこまし」
カカシ「……ひどくない?」
アスマ「冗談だって。で、本当に大丈夫なのか? 前は忍術すらまともじゃなかったろ」
アスマ班に連れていった時のことを思い出す。あの頃は緊張で技も出せず、会話もぎこちなかった。
カカシ「若い子の成長は、侮れないよ」
アスマ「……ほらな。やっぱお気に入り」
俺の顔を見たアスマは、数度瞬きをしてから、じわりと口端を吊り上げた。
