サスケ奪還編
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シカマル「……絶対、返せよ」
そう言って、彼は右耳につけていたピアスを外し、こちらへ放ってきた。反射的に受け止め、私は手のひらの上で一度だけ転がす。ほんの気休めみたいに指先で軽く拭ってから耳へ通すと、間髪入れずぶっきらぼうな声が飛んできた。
シカマル「そんな汚くねーよ」
『いや、一応ね?』
思わず小さく笑いが漏れる。張り詰めていた空気がほんの一瞬だけ緩んだ。今は、その何気ないやり取りがひどく助けになった。私はピアスへそっと触れてから静かに前を向く。君麻呂と共に現れた異様な気配を纏う敵。その存在感は、言葉にしなくても理解できた。危険だと本能が警鐘を鳴らしている。
直感だけれど確信にも近い。たぶん、あれは私の相手になる。シカマルも、それが分かっているからこそ、こんなふうにピアスを渡したのだろう。だから私は安心させるように笑ってみせた。
『大丈夫だよ。私は……死なないから』
そう告げるとシカマルは眉をひそめる。呆れたみたいな顔なのに、その目だけが少し苦しそうで。
シカマル「お前のその口癖、やめろ。縁起でもねぇ。死にに行くやつの台詞にしか聞こえねーんだよ」
『……何言ってんの、シカマル。言霊って知ってる?』
シカマル「そんなん、ナルトでも知ってるよ」
ナルト「なんだそれ、どーいう意味だってばよ‼︎」
不満そうな声が飛び、思わず小さく笑ってしまった。私は耳につけたピアスへそっと触れながら静かに続けた。
『私は、それを信じてる。それに私は、言葉にして……言った人に約束してるの。私は、約束を破らない』
その言葉に、シカマルはしばらく黙り込む。やがて、諦めたみたいに深く息を吐いた。
シカマル「何を根拠に信じたらいいのかわかんねぇよ」
『私を信じてくれたらいいよ。それに、みんなも助けに行かなきゃだしね。』
散り散りになった仲間たちの姿が脳裏を過る。次郎坊の拘束から抜け出せたのは、間違いなくシカマルの作戦のおかげだった。でも、その代償みたいに私たちは分断された。今ここにいるのは、ナルトと、シカマルと、私だけ。だからこそ、早くみんなの元へ向かわなきゃいけない。誰一人、欠けさせるわけにはいかない。
『初めての隊長任務なんでしょ?』
シカマル「……あ?」
『絶対、成功させてやる』
一瞬シカマルが目を見開いた。そのあと、呆れたみたいに肩を竦めて小さく笑った。
シカマル「……ったく、お前は俺を過信しすぎだよ」
『さて、仕切り直しだね。あのサスケが入った入れ物、取り返さなきゃ』
シカマル「ああ」
短い返事、その直後だった。
キミマロ「あの女は生け捕りだ。殺さなければ、どう扱おうと構わない……大蛇丸様の命令だ」
淡々と告げられた言葉と同時に、敵の視線が真っ直ぐこちらを捉えた。背筋を冷たいものが走る。来る、そう理解し一気にチャクラを練り上げたけれど、次の瞬間には視界いっぱいに敵の姿が迫っていた。
『――っ!?』
速い。認識した時にはもう目前だった。細い指が容赦なく喉を掴み、そのまま凄まじい力で後方へ叩き飛ばされた。景色が激しく反転する。宙を舞いながら、それでも私は無理やり声を張り上げた。
シカマル・ナルト「名前!」
『ナルト!シカマル!すぐ追いつくから!』
その瞬間、視界の端でナルトが歯を食いしばったのが見えた。シカマルもまた、険しい顔でこちらを睨んでいる。必ず戻る。胸の奥で強くそう言い聞かせた。私はサスケに伝えたいことがある。だから、こんなところで終われない。
二人との距離が十分に開いたのを確認し、私は一気にチャクラを引き上げる。体内で膨れ上がった力を無理やり外へ解放した。
『いい加減……離せっ‼︎』
拘束していた腕が弾き飛び、私はそのまま地面へ着地した。荒く息を吐きながら目の前の敵を睨みつけたその時、初めて女が口を開いた。
「やあー、名前ちゃん」
その声を聞いた瞬間、背筋が凍りついた。ありえない。でも、この気味の悪い喋り方を私は知っている。
『……お前は……カブト』
