サスケ奪還編
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シカマル「……絶対、返せよ」
そう言って、彼は右耳につけていたピアスを外し、こちらへ放ってきた。反射的に受け取り、手のひらで一度だけ転がす。ほんの気休めに指先で軽く拭ってから耳に通すと。
シカマル「そんな汚くねーよ」
ぶっきらぼうな声が飛んできて、思わず小さく息が漏れた。張り詰めていた空気が、ほんの一瞬だけ緩む。今は、その何気ないやり取りが、ひどく助けになった。
『大丈夫。私は……死なないから』
そう言って視線を上げる。君麻呂と共に現れた、異様な気配を纏う敵。その存在感は、言葉にしなくても“危険”だと理解させるには十分だった。
シカマルの作戦で、次郎坊の拘束からは脱することができた。だが、その代償のように、私たちは散り散りになってしまった。今ここにいるのは、ナルトと、シカマルと、私だけ。
キミマロ「あの女は生け捕りだ。殺さなければ、どう扱おうと構わない……大蛇丸様の命令だ」
淡々と告げられた言葉と同時に、女の視線がこちらを捉える。背中を、冷たい汗が伝った。一気に力を引き出そうとした、その瞬間、視界が女で埋め尽くされる。
気づけば、目前。細い指が容赦なく喉を掴み、そのまま後方へと叩き飛ばされた。宙を舞いながら、必死に声を張り上げる。
シカマル・ナルト「 名前!」
『ナルト!シカマル!すぐ追いつくから!』
ナルト達と距離が十分に開いたのを確認し、その瞬間、チャクラを一気に引き出した。拘束が、弾け飛ぶ。
『いい加減……離せっ‼︎』
初めて、女が口を開いた。
その声を聞いた瞬間、背筋が凍りつく。
「やあー、 名前ちゃん」
『……お前は……カブト』
カブト「呼び捨てで呼んでくれるほど親しくなったのかい?それは嬉しいな。……どうだい、この子。君のクローンなんだよ」
ぞくり、と背中に寒気が走る。
言葉が、喉に張り付いて出てこない。
カブト「君の一族は、ずいぶん特殊らしいね。それに……最強の一族だとも聞いている。必ず大蛇丸様の役に立つはずだと思って、実験している最中なんだ。君の祖先をベースにして、そこへ君の血液から採取したデータを埋め込んでいる」
過去に、何度も血液を採取された記憶が脳裏に蘇る。その事実を思い出した瞬間、全身に鳥肌が立った。
カブト「さあ……頑張ってくれ」
薄く笑って、告げる。
カブト「君自身と、戦ってもらおう」
カブトが言い終えたその瞬間、女が動く。
次の瞬間、距離は消え拳と拳がぶつかり合った。金属が衝突したかのような鈍い衝撃音が走る。刹那、相手の腕に走る亀裂が目に入った。土が崩れるように、皮膚がぽろりと剥がれ落ちる。その下から現れたのは、生身とは思えない、異質な質感。
息を呑む暇すら与えられない。続く一撃で、肩口が大きく欠けた。砕け散った破片は血を流すことなく、地面へと変わっていく。
未完成。
そう理解するのに、時間はかからなかった。だが、その力は私をも上回っている。カブトの言った〝祖先〟その存在が、そうさせているのだろう。もし、これが完成していたら。そう考えただけで、背筋に冷たいものが走った。次の瞬間、背後を取られ、腹部を貫く重い衝撃。
『……っ⁉︎』
熱が身体を突き抜け、息が詰まる。口から血がこぼれ、膝が崩れ落ちた。地面に手をつく。視界の端で、クローンが静かに歩み寄ってくる。そこに感情はない。ただ、私だけを映す冷たい瞳があるだけだった。
カブト「そこまでだ。生け捕りと言っただろう」
場に、軽い調子の声が落ちる。
カブト「……君の祖先は、本当にすごいね。ギリギリだったけど、この時点でオリジナルすら上回るとは。いや……戦闘前からの疲労が影響しているのかな」
分析するように、ぶつぶつと独り言を続ける声。その音がやけに遠く聞こえた。意識が薄れていく中、必死に頭を回す。敵の体はもう崩れかけている。あと少し。ほんの少しでも、体が動いてくれれば、みんなのところへ戻れる。サスケを、追える。
……そのときだった。
頭の奥で、低く冷たい声が響く。
〝君は本当に、弱いよね〟
視界が揺れた。次の瞬間、目の前に立っていたのは、もう一人の“私”。幻影のようで、けれど、はっきりとした輪郭を持つ存在。その“私”は、くすくすと笑いながら、こちらを見下ろしている。
〝私の力を、貸してあげる。そうすれば……サスケを、救えるよ〟
分かっていた。これは、触れてはいけないものだ。それでも、私は差し出された手を取ってしまった。その瞬間、体の奥からチャクラが溢れ出す。制御など最初からできなかった。
口角が、勝手に吊り上がる。体が、前へと踏み出す。拳を叩き込むたび、クローンの体が崩れていった。腕が、脚が、顔が、土の塊となって、砕け散る。止まらない。殴る、叩く、何度も、何度も。
すでに限界を迎えていたクローンは、完全に動かなくなっていた。それでも、拳は振り下ろされ続ける。
『アハ……アハハハハ‼︎』
それは、私の声だった。けれど、私のものではない。呼吸は荒く、拳は裂け、血が地面に落ちる。腹に穿たれた穴から流れる血さえ、意識の外だった。拳は、止まらない。
「……もう、いい」
背後から落ちたその声は、不思議なほど静かだった。怒鳴りでも、命令でもない。ただ、空気に溶けるような一言。振り下ろそうとしていた拳が、空中で止まる。ぴくり、と指先が震えた。荒く乱れていた呼吸が、一瞬だけ詰まった。
誰?
そんな疑問すら、どこか他人事のように頭をよぎる。ゆっくりと、軋むような感覚とともに首を回す。視界が動き、焦点が合う。そこに立っていたのは、見慣れた仲間の姿だった。
『……ダメ……シカマル……』
喉の奥がひりつく。声を出したつもりなのに、掠れて、ほとんど音にならない。
『……逃げて……』
それは、忠告だった。懇願だった。
そして、最後の“理性”だった。
テマリ「⁉︎そいつから離れろ‼︎‼︎」
切り裂くような叫び声が響く。風を操る忍の本能が、目の前の“異変”を正確に捉えていた。だが、その声すらもう、届かない。胸の奥で、何かがぷつりと音を立てて切れた。
次の瞬間、私の口元がゆっくりと吊り上がる。それは笑おうとした結果ではなかった。勝手にそうなった。まるで、新しい獲物を見つけた獣が「逃がさない」と確信した瞬間のように。
頬が引き攣り、笑みが、深く、深く刻まれていく。視界の中心に映るのは、シカマル。恐怖でも、躊躇でもない。ただ、次に壊すべき存在としての認識だけが、そこにあった。
