サスケ奪還編
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サスケに突然キスをされ、想いを告げられたphあの日から、胸の奥はずっとざわついたままだった。拒絶した瞬間に彼が見せた、必死で追い詰められたようなあの表情が、どうしても頭から離れない。
仲間として信じていた存在が、あんな目で「欲しい」と言った。私は、どう受け止めればよかったのだろう。何を返すのが正解だったのか。考えれば考えるほど、胸が締めつけられていく。
食事は喉を通っても味がしない。眠っても浅い夢ばかりで、目が覚めるたびに疲労だけが残った。気づけば、何度も窓の外を眺めている。時間だけが、意味もなく過ぎていった。
そんな時だった。
コン、コン──。
控えめなノック音に応じて扉を開けた瞬間、シカマルが私の顔を見て、露骨に眉をひそめた。
シカマル「……ひっでぇ顔だな。何があったかは知らねぇけど、まともじゃねー」
図星すぎて、言い返す言葉が喉につかえる。そのまま視線を逸らした私に、彼は少しだけ間を置いてから、低く続けた。
シカマル「……サスケが、里を抜けた」
一瞬で頭の中が真っ白になる。息を吸うことすら忘れて、胸の奥がぎゅっと強く締めつけられた。
シカマル「サスケを追う班に加わってくれ。ナルトがな、真っ先に“お前も絶対必要だ”って言ってた」
『……私が?』
思っていた以上に、声が震えていた。不安と恐怖、それから拭いきれない後悔が入り混じった、自分でも驚くほど弱い声。胸に浮かんだのは、たったひとつの疑問だった。
私に、追う資格なんてあるのだろうか。
私は、サスケの気持ちから目を逸らした。向き合うことができず、拒絶することしか、できなかった。
そんな私が、追っていいの?
サスケは、私に何を求めていたの?
あの時、本当は何を伝えたかったの?
考えれば考えるほど、思考は絡まり合い、胸の奥がぐちゃぐちゃになっていく。答えはひとつも見つからない。そんな私を見透かしたように、シカマルが小さく溜息をついた。
シカマル「……サスケと何かあったから、そんな顔してたのか。ったく……ウジウジしてんなよ」
その言葉に、はっとして顔を上げる。
シカマル「らしくねぇだろ。お前は、仲間をぜってぇ見捨てねぇやつだ。今、お前の大切な仲間が、敵の手に行こうとしてんだ。守れなかったら……一生後悔すんぞ」
その通りだった。頭では、痛いほど分かっている。それでも、怖かった。
『でも、私……サスケに……どう答えれば……』
言葉が途切れた瞬間、シカマルは眉をひそめ、吐き捨てるように言った。
シカマル「いつものお前なら、“早く行こう”って真っ先に飛び出してるはずだ。ナルトより先に走るくらいにな。……違うか?」
その一言で、膝がわずかに震えた。
図星すぎて、胸が締めつけられる。
シカマル「悩むなとは言わねぇ。でもな、悩むなら──サスケに会うまでの時間、全部使え。会ったら、ぜんぶぶちまけろ。逃げんなよ。お前らしくねぇ」
胸の奥で、固く閉じていた何かが、じわりとほどけていく。逃げたかったわけじゃない。ただ、どうすればいいのか分からなかっただけだ。でも、会わなきゃ何も始まらない。会わなきゃ、何も終わらない。深く息を吸い、拳をぎゅっと握る。
『…行く。サスケを必ず連れ戻す。ちゃんと…話す』
シカマルは「やれやれ」と肩をすくめて笑った。その表情は、ほんの少しだけ安心しているように見えた。
門へ向かう道を早足で進みながら、胸の奥のざわつきはまだ完全には消えていなかった。それでも、さっきシカマルに叱られたおかげで、足はちゃんと前に出ている。ふと、隣を歩く彼の横顔を見て、気づけば口が開いていた。
『……ねぇ、シカマルってさ。やっぱり、いいやつだよね』
その言葉に、彼の足がほんの一瞬止まる。わずかに肩が跳ね、すぐに何事もなかったように歩き出した。
シカマル「……は? なんだよ、急に」
ぶっきらぼうな声。けれど横顔を見ると、耳の先がわずかに赤い。思わず、くすっと笑ってしまった。
『いや、本当に。ちゃんと叱ってくれて、ちゃんと支えてくれて……さっき、すごく救われたから。ありがとう』
彼は視線を前に向けたまま、手をポケットに突っ込み、低く呟いた。
シカマル「……お前に、暗い顔は似合わねーよ」
照れを隠すみたいな言い方。けれど、その言葉は不思議なくらいまっすぐで、胸の奥がじんわりと温かくなる。
『はは……ほんとだね。シカマルが仲間で……ううん、友達でよかった』
そう言った瞬間、ふと視線を感じて横を見る。彼は眉間にわずかに皺を寄せ、何か言いたげにこちらを見ていた。
『……なに?』
首を傾げると、シカマルは小さく息を吐いた。
シカマル「……お前って、なんかずるいよな」
『え、なにが?』
本気で分からず聞き返す。
けれど、答える代わりに彼は視線を逸らした。
シカマル「……なんでもねーよ」
それだけ言って、歩幅を少しだけ速める。
取り残された私は、思わず小さく呟いた。
『……ずるい?』
変なことを言った覚えはない。それなのに胸に残ったのは、理由の分からない引っかかりだけだった。その意味に気づかないまま、私は慌てて彼の背中を追いかけた。
