綱手捜索編
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クソッ。
やっと薬の効果が切れてきて、ここからが本番だって時に。よりにもよって、こんな場面で出てくるか、あのじゃじゃ馬め。大蛇丸一人を相手取るだけでも厄介だというのに、あいつまで止めるとなると流石に骨が折れる。小さく舌打ちを漏らし、荒れかけた呼吸を無理やり整える。
マンダ、カツユ、ガマブンタ。三体の巨大な口寄せが揃い、戦いは佳境へと入ったはずだった。しかし、視線の先に立つ〝それ〟がすべてを狂わせる。赤く染まった瞳。その周囲には、霧みたいに揺らめくチャクラが漂っていた。それが徐々に形を持ち始め、鳥の姿が少女の背後でゆっくりと浮かび上がっていく。
あいつら一族に伝わる守神。大きさは、せいぜい肩に乗る程度。その点だけは正直ほっとした。もし、あれがガマブン太たちと同じ規模だったら、そう想像しただけで背筋が冷えた。だが、油断はできん。小さいからといって、脅威でないとは限らない。むしろ嫌な予感しかしない。
距離を取った先では、カブトが警戒するようにこちらを窺っている。あやつも流石に、何かを感じ取ったんじゃろう。
ジライヤ「たく……やってくれたのう、カブト」
オロチマル「ほんとよ、あなた。生け捕りにしろとは言ったけど、暴走させろなんて言ってないわ」
カブト「ずいぶん、嫌われてしまったようですね」
肩を竦めながら笑うカブトに、わしは小さく舌打ちした。軽口を叩けるのは、あいつら一族の本当の厄介さを知らんからだ。あの力は、制御を誤れば味方も敵も区別せん。一度、完全に目を覚ましたら、止めるのは三忍でも容易じゃない。
ジライヤ「シズネ‼︎動けるならナルトたちを連れて、今すぐ離れろ‼︎」
腹の底から叫んだ。その、瞬間だった。
『モデル、アルテミス』
名前の声が、戦場に低く響き渡る。淡く揺らめくそれは、一気に彼女の身体へ絡みついていく。チャクラは収束し、圧縮され、ゆっくりと形を変えていく。そして次の瞬間、彼女の手の中へ現れたのは、巨大な弓。
ジライヤ「綱手!来るぞ!気をつけろ‼︎」
ツナデ「言われなくても分かってる!」
応じる声は強気だが、その視線は鋭く警戒に満ちていた。そこからは、まさに嵐だった。大蛇丸の攻撃を捌きながら、 名前か放つチャクラの矢を避け続ける。息を吐く暇すらない。しかも厄介なのは、あれがただの遠距離攻撃ではないことだ。カブトとの戦闘の影響か、矢にはチャクラのメスと同質の性質が混じっていて、当たれば内部から破壊される。
ジライヤ「……本当に、手のかかる一族じゃの〜」
苦々しく呟きながら、飛来する矢を紙一重で避ける。三忍が揃っていてなお、気を抜けば一瞬で命取りになる。嵐の中心にいるのは大蛇丸だけじゃない。暴走する名前の力もまた、戦場そのものを喰らおうとしていた。
ジライヤ「…ゼェ…ゼェ…綱手、まだいけるか?」
どうにか大蛇丸を退かすことには成功したが、戦いは終わっちゃいない。視線の先には、まだもう一人残っている。本当に後始末までさせられるとはの。この借りは大きいぞ、カブト。はたして、満身創痍のわしたちで止められるのか。そんな弱気が一瞬だけ脳裏を掠めたその時だった。
ツナデ「当たり前だ!」
綱手が吐き捨てるように叫ぶ。
強く踏み出した足が大地を揺らした。
ツナデ「私は木ノ葉の五代目火影だぞ‼︎里のガキ一人の暴走も止められずして、火影を名乗れるか‼︎」
その背中に迷いは一片もなかった。恐れも、躊躇もない。あるのは覚悟だけ。そう言って綱手は一歩前へ出る。
ツナデ「それに……久しいな。昔、修行をつけてもらったことを思い出すよ。なぁ、イザナミ‼︎」
その名を聞いた瞬間、胸が跳ねた。綱手は 名前ではなく、かつて出会った女の名で彼女を呼んだ。横目で見る綱手の口角はわずかに上がっている。
昔、猿飛班四人で修行をつけてもらった、あの女。容姿だけなら完璧。黙っていれば神秘的で、近寄り難いほど美人なんじゃが、口を開けば全部台無しになる。そして、戦いになれば恐ろしく強い。敵に回した瞬間、終わりを覚悟するしかないほどに。
同じ一族のせいか、名前の存在は時折、あのイザナミを思い出させる。しかし、今は昔を懐かしんどる場合じゃない。目の前の暴走を止めねば、本当に死人が出る。
その時だった。
『イザ……ナ……ミ……っ』
名前が、突然、両手で頭を抱えた。
『イザナ……ミ……イ……ザナ……ミ……』
呼吸が乱れ、声が掠れる。まるで、何かが内側から名前を呼び返しているみたいだった。
ジライヤ「どうした⁉︎ 何が起きとる!」
返事はない。
『……イザナミ……』
ゆらり、と上半身を起こす。その動きは、さっきまでの荒々しさとは違っていた。妙に、落ち着いている。こちらを見た、その瞳が青く、冷たく光った。
『ずいぶん老けた……いや。いい男と、いい女になったな』
