風影奪還の章
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ナルト「綺麗だ」
キメ顔でこちらを見つめてくるナルト。どことなく雰囲気だけは寄せているつもりなのだろうけれど、肝心なところがまるで似ていない。その必死さがおかしくて、私は思わず吹き出した。
『ふふっ、やめてよナルト。それに全然似てないよ』
ナルト「えー? じゃあこうか?」
一度咳払いをすると、得意げに胸を張った。
ナルト「…… 名前、綺麗だってばよ!」
サクラ「それナルトじゃない」
間髪入れずに飛んできたツッコミに、ナルトはむっと頬を膨らませる。
ナルト「なんでだってばよ!」
カカシ「もうやめてくれ、お前ら」
呆れたような声が響き、緊迫した空気が少しだけ落ち着いた。久しぶりの再会。本当ならもっと話したいことはたくさんあったけれど、今はそんな時間はない。我愛羅が暁に連れ去られたことを知り、私も急遽任務へ同行することになった。懐かしさに浸る暇もないまま、私たちは敵のアジトへ向かう。
そして、この事件の発端は、敵のアジトを発見し、そこへ向かう道中のこと。我愛羅を救いたい一心で、ナルトはずっと気を張り詰めている。その熱が入りすぎているのを見かねて、カカシ先生が軽く声をかけたのが始まりだった。
不貞腐れたナルトは話の流れを無視して、砂隠れでの出来事を蒸し返し始める。カカシ先生には悪いけれど、少しでも場が和むならと、私も話に乗ることにした。
ナルト「あんときのカカシ先生てば、絶対本気だったってばよ! 名前が綺麗になったから言ったんだって!」
『残念。カカシ先生のそれは、得意な口説き文句だよ』
ナルト「えーっ⁉︎ オレは本気だと思うんだけどな〜!」
サクラ「それよりさ…本当に綺麗になりすぎじゃない?びっくりしたんだけど! ねぇ、何したの? どうしたらそうなるの⁉︎」
『あはは……本当に、特に何もしてないよ』
頭の先からつま先までじろじろと見られて、私は照れ隠しに笑ったけれど、サクラはまるで納得していない様子で腕を組む。
サクラ「絶対何かあるでしょ……」
ナルト「オレもそう思う! ぜってー怪しいってばよ!」
『そんな目で見られても……』
二人揃って疑いの目を向けてくる。困って肩をすくめると、ますます怪しいと言いたげな視線が返ってきた。大人になったとはいえ、こういうところは二人とも全然変わっていない。その変わらなさがどこか懐かしくて、思わず頬が緩む。
サクラ「そうだ! この任務が終わったら、名前は木ノ葉に戻るの?」
『んー……そうだね。その予定だよ』
サクラ「よかったぁ!名前が戻ってきてくれるなら安心ね! こんな綺麗な子が隣にいたら、他の女性も近寄りにくいし」
その言葉に私は思わず苦笑した。どうやらカカシ先生は相変わらずらしい。話を聞く限り、私がいなかった三年間はなかなかひどかったそうだ。まぁ、それは私がいなくなる前からなんだけど。と、心の中でだけそう呟き口には出さなかった。
それに、あの素顔を一度でも見てしまったら、きっとサクラだって分かるはずだ。どうしてあんなにも、女性たちが惹かれてしまうのか。あれは反則だと思う。破壊力がありすぎる。
そんなことを考えながら、私は少しだけ速度を落とした。前を行くナルトたちから距離を取り、小さくなったカカシ先生の隣へ並ぶ。気配に気づいたのか、彼は横目でちらりとこちらを見て、わざとらしく不貞腐れたような声を出す。
カカシ「……なんだよ」
その言い方があまりにも子どもっぽくて、私は思わず吹き出した。
『相変わらずですね、カカシ先生。そろそろいい歳なんですから、もう少しちゃんとしたらどうですか?』
カカシ「はいはい、自粛しますよ」
心のこもっていない返事。それから彼は肩をすくめ、ぼやくように続けた。
カカシ「まったく…久しぶりに会ったと思ったら、いきなり説教されるとはね」
『それは変わらない先生が悪いんじゃないですか?』
カカシ「厳しいなぁ」
『当然です』
そんな他愛もないやり取りを交わしていると、まるで昔に戻ったみたいで、胸の奥がじんわりと温かくなる。けれど、どこか少しだけ違った。近いようで遠い。それが三年という時間なのか、それとも別のものなのかは分からない。そんな曖昧な違和感を抱いていると、カカシ先生がふと思い出したように口を開いた。
カカシ「そういや、ナルトたちと離れたあと、何してたの?」
『はぐれた後か……』
私は小さく呟き、視線を前へ向けたまま記憶を辿る。あの日からの出来事を。一人で旅をしていた時間を。そして、あの人と過ごした日々を。
