綱手捜索編
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この街に辿り着き、無事に綱手さんと会うことはできた。だが、安堵する間もなく知らされる事実に、胸の奥が冷えていく。大蛇丸が、綱手さんと接触していた。その名を聞いた瞬間、反射的に浮かんだ顔があった。できることなら、二度と関わりたくない男。そう願ったところで、現実は容赦がない。
視線を上げると、そこには、人懐っこい笑顔を貼り付け、軽く手を振る男の姿があった。吐き気がした。
カブト「やあ、 名前ちゃん。また会えたね。もしかして、運命だったりするのかな」
『……黙って』
低く落とした声は、感情を押し殺したものだった。それでも、胸の奥から滲み出る嫌悪だけは、どうしても隠しきれなかった。
ジライヤ「……顔見知りかの?」
『大嫌いな人です』
即答だった。その返事を聞いた自来也さんは、場違いなほど軽い口笛を吹く。
ジライヤ「振られたのう、おまえさん」
ナルト「カブトさん⁉︎ なんでこんなところに⁉︎てか、なんで綱手のばあちゃんを!」
『ナルトは知らなかったかもしれないけど…彼、大蛇丸の部下で、最低な男だよ』
カブト「酷い言われようだね。僕は君と会えて、素直に嬉しいんだけどな」
そう言いながら、指先で眼鏡の位置を直す。その仕草ひとつひとつが、妙に計算されているようで、背筋がざわつく。舌なめずりするような視線がこちらをなぞり、無意識に腕をさすった。それでも目は逸らさず、再び睨み返す。カブトは、その反応すら楽しむように、口角を上げた。
オロチマル「カブト…綱手と、その子は生け捕りにしなさい。彼女の一族の力……研究すれば、役立つわ」
カブト「言われなくても。彼女は生け捕りにしますよ。僕のお気に入りなんでね」
背筋を撫でるような声に、嫌な予感が確信へと変わる。胸の奥が、じわりと冷えた。手裏剣を構えようとした、その瞬間。ナルトが先陣を切って飛び出すが、その動きはあっさりと受け流される。
すぐに自来也さんから指示が飛ぶ。私とナルトは、綱手さんの護衛。「大蛇丸は、わしに任せろ」そう言い切る自来也さんだったが、彼自身も薬の影響でチャクラが練れず、動きは明らかに鈍い。本来の力を出せていないことは、見ていてはっきり分かった。
私はシズネさんに、動けなくなった綱手さんを託され、指示されるまま少し距離を取った場所へ退く。歯を食いしばりながら、混乱に包まれた戦場を見つめ続けていた。嫌な予感が、背中を這い上がる。
カブト「お待たせ。ずいぶん待たせちゃったね」
その声に、反射的に視線を向けた。
『……っ、シズネさんを……』
地面に倒れ伏すシズネさん。そのすぐそばには、身動きの取れないナルトの姿もあった。その光景を目にした瞬間、胸の奥で何かが煮え立つ。じわじわと熱を帯び、理性を溶かしていく感覚。
……まずい。
この怒りは、よくない。
これ以上昂れば、“もう一人の私”が出てきてしまう。分かっている。分かっているのに、止められない。深く息を吸い、ゆっくりと吐く。無理やり感情を押し込み、必死に均衡を保つ。けれど、それが長くもたないことくらい、自分が一番よく分かっていた。
カブト「さて……今日は、君がどれだけ耐えられるか。少し、実験してみようか」
柔らかな笑みを浮かべたまま、彼はゆっくりと手を上げる。指先に集まるチャクラは淡く光り、医療忍術特有の静かな圧を帯びていた。
カブト「安心して。僕は医療忍者でもあるんだ。死なない程度の“加減”くらい、ちゃんと心得てるよ」
医療忍者と、本気で刃を交えるのは初めてだった。けれど、シズネさんとの戦いを、私ははっきりと見ている。あれは、確実に殺すための刃だ。触れられた瞬間、体の内側から壊される。だから接触は、絶対に避けなければならない。
遠距離で大技を放てば、私自身に隙が生まれる。だからこそ、反応される前に叩き込む。選ぶべき道は、最初から一つしかなかった。今の自分に、それができるのか。一瞬、迷いが胸をよぎる。
けれど、立ち止まる余裕なんてどこにもなかった。私は静かに息を吸い、意識を深く沈める。
力を引き出す。
カブト「……やっぱり美しいね、君は。そのままの状態で、ホルマリン漬けにしたいくらいだ」
『……本当に。あなたは、どうかしてる』
吐き捨てるように言い切り、地を強く蹴った。一瞬で距離を詰め、左から踏み込む。迷いはない。これ以上、言葉を交わす必要もなかった。
カブト「そう何度も、同じ手に引っかかるほど……僕はバカじゃないよ」
『っ――⁉︎』
視線が絡んだ、その瞬間。背筋を撫でるような、嫌な予感が走った。遅い。気づいた時には、もう距離はなかった。カブトの手が、迷いなく胸元へ伸びてくる。
『……っ、危な……かった……』
辛うじて声を絞り出す。
カブト「おや?おかしいな……呼吸困難になるはずなんだけど」
『さあ……なんで……でしょうね』
苦しくないわけじゃない。胸の奥が締め付けられ、息が浅くなる。けれど、間一髪だった。反射的に胸元へチャクラを集中させ、薄い膜を張った。完全には防げないけれど、それで致命傷は避けられた。視界が揺れ、呼吸が乱れる。
カブト「本当に面白い。まったく効いていないわけじゃなさそうだ。さて……どこまで耐えられるかな」
手裏剣が放たれ、戦闘は一気に本格化した。全身に薄くチャクラを巡らせ、鎧のように纏う。けれど、すべての衝撃を防げるわけじゃない。一撃、また一撃と、確実に体力が削られていく。動きが、鈍る。呼吸が乱れ、視界の端が滲んだ。そのとき______
〝面白そうだね。もう、変わってもいい?〟
『……っ⁉︎』
久しく聞いていなかった、あの陽気な声。それが聞こえたということは、自分の身体も、精神も、限界に近づいている証拠だった。
カブト「その鎧も……もう限界みたいだね。ほら、動けないだろう?」
言葉通りだった。指一本、思うように動かせない。全身に巡らせていたはずのチャクラが、重く、鈍く、私の意思を裏切る。ただ、その場に立ち尽くすことしかできなかった。
カブトが、ゆっくりと距離を詰めてくる。足音がやけに大きく響き、逃げ場のない現実を突きつける。もう、触れられるほどの距離。睨みつけるように視線を向けるが、それすら逆効果だった。
カブト「……最高にそそられる目だよ、 名前ちゃん。もう実験は終わりだ。この戦いが終わったら、アジトで続きをしよう」
『……誰が……ついて……いくもんか……』
カブト「強がりだけは一丁前だね。ナルトくんの影響かな?でも……そんな顔は見たくない」
彼の手が、私の頬を掴み、無理やり顔を上げさせた。
カブト「僕が見たいのはね……君の顔が、壊れていく瞬間だよ」
『……やめ……』
喉から掠れた声が漏れる。それを聞いて、彼は満足そうに口角を吊り上げた。不気味な微笑み。次の瞬間、口元に滲んだ血を、彼は舌先で拭い取り、無造作に下唇をなぞる。
ぞわり、と。背骨を伝って、嫌悪と寒気が一気に駆け抜けた。まるで、世界の温度だけが切り取られたように、急激に冷え込む。そのときだった。
〝大丈夫。あとは、私に任せて〟
胸の奥に、懐かしくも危うい声が響く。
〝安心して。乗っ取ったりはしないよ〟
〝……あの敵を、殺してあげるだけ〟
その声に呼応するように、私の中で何かが軋み、切り替わる。
そして――
ジライヤ・オロチマル・ツナデ「口寄せの術」
重なる声。大地が震え、空気が一変する。それに呼応するように、私は小さく息を吸い。
『……口寄せの術』
そう、確かに口にした。
