木の葉崩し編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
サスケ「ったく……泳げねぇくせに、なんで迷いもなく飛び込むんだよ。死ぬところだったじゃねぇか!」
『アハハ、まさか滝壺があんなに危険な場所だったとは…』
サスケ「もう黙れ」
ぴしゃりと遮られて言葉が止まる。私は岩場に背を預けたまま小さく息を吐いた。反論なんてできない。正論すぎるし、それに体が思うように動かない。さっき目が覚めたばかりで、指先にうまく力が入らない。水を吸った服がやけに重くて、呼吸もまだ浅い。
視界の端で水滴がぽたりと落ちる。ほんとに危なかった。サスケが来なかったら、多分。そこまで考えてふと顔を上げる。目の前にいるのは、少し不機嫌そうに眉を寄せたままのサスケ。
『サスケ、ごめん。それと……ありがとう』
サスケ「謝るなら、そのバカな頭を治してからにしろ」
いつもより棘のある言い方に、思わず言葉が詰まる。気のせいじゃない。それに、私が目を覚ましてから一度もこっちを見てくれない。怒ってるんだと思う。
『……ごめん。けど、額当てって忍の証でしょ。それを勝手に賭けに使って……必ず返さなきゃ、って思って。体が勝手に動いちゃった』
言いながら、説得力なんてないと自分でも分かる。でも、それ以外に言いようがなかった。
サスケ「フン。馬鹿なりの責任感ってやつかよ。…けどな、死んだら何も残らねぇだろ」
『でも……体が勝手に動くんだよ』
サスケ「……ナルトかよ」
『ナルトに失礼だよ』
思わず苦笑がこぼれる。
それから、少しだけ言葉を探して続けた。
『……私ね、今までずっと一人だったから……全部が、大切に思えるようになったの。何一つ失いたくなくて……だから、考えるより先に動いちゃうんだと思う』
自分でもうまく説明できてるか分からない。でも、これが一番近い気がした。まだ木の葉に来て数ヶ月。それでも、ここはもう、私にとって大切な場所になりつつある。人の温かさを、初めて知った場所だから。
だから、守りたいって思う。
サスケは小さく息を吸い、立ち上がると私の正面に立った。逃げ場を塞ぐみたいに距離を詰めて、両頬へそっと手を添える。触れられた瞬間、心臓が大きく跳ねた。こんなに近くで、こんなにはっきりと彼の顔を見るのは初めてかもしれない。真っ直ぐな視線に射抜かれて息を呑む。
その一瞬、ゴッ‼︎‼︎
『いったぁぁぁぁぁ‼︎』
額に鈍い音と衝撃が走る。視界がぐらりと揺れて思わず頭を押さえた。
サスケ「馬鹿野郎‼︎弱いくせに何言ってんだ!弱かったら、守りたいもんも守れねぇだろ‼︎」
怒鳴り声が降ってくるけど、その声はどこか震えていた。怒りだけじゃない、焦りと恐れ。
『……サスケ』
名前を呼ぶと、少しだけ間が空く。その響きは、私に向けられているというより、自分自身を叱りつけているみたいだった。私は知っている。サスケが時折見せるあの深い闇を。理由の全部は分からないけど、彼が抱えているものの重さは、なんとなく伝わってくる。
どうしようもない孤独と強さへの執着。私は安心させるように笑うと、サスケは一瞬だけ目を伏せて、小さく、何か かを飲み込むみたいに呟いた。
サスケ「…………守るよ」
『えっ?なんか言った?』
サスケ「お前はナルトよりウスラトンカチだって言ったんだよ」
『ウスラトン……え、どういう……って、ちょ!待ってよ‼︎ 置いてかないで‼︎』
くるりと背を向けて歩き出すサスケに、慌てて声を上げる。こんな濡れたままで置いていかれたら、さすがに風邪をひく。それだけは絶対に避けたい。よろけながら立ち上がって追いかけるけど、足がもつれてつまづく。あ、と思った瞬間。
グイッ。
サスケ「フン。びびったか、バーカ」
衝撃は来なかった。代わりに体がふわりと浮く。気づいた時には抱え上げられていて、触れているところからじんわりと温かさが広がっていく。
サスケ「………俺は強くなる。俺の野望のためにも」
低く落とされた声。いつもの軽口とは違う響きに、少しだけ息を飲む。
『……私も強くなるよ』
自然と言葉が出た。みんなを守れるくらいの力がほしい。サスケを、その闇から解放できるように。だから、私は強くなる。ふと視線が合う。その一瞬、サスケの口元がわずかに揺れて鼻で小さく笑った。
サスケ「これで組手も鬼ごっこも、俺が強いって証明されたな」
『えっ⁉︎』
その言葉で、はっとする。そうだ、勝負してたんだ。さっきまで頭からすっかり抜けていたことに気づいて、慌てて口を開く。
『……今日のは数に入れない‼︎』
サスケ「てめぇ、ふざけんなよ‼︎」
即座に返ってくる怒鳴り声に、思わず笑いそうになる。サスケはなんだかんだで優しい。そういうところを、ちゃんと知ってるから。きっとこの勝負も、最後にはうやむやになるんだろうな、なんて思いながら。滝の音に混じって、二人の声が遠くへ溶けていった。
