出会い編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『カカシ先生』
少し恥ずかしそうに、彼女は小さな声で俺の名を呼んだ。その控えめな響きに、一瞬だけ意識が引き寄せられて、可愛らしい、なんて感情が浮かんでしまったことを、今でもはっきりと覚えている。らしくないな、とそんな自嘲が胸の奥をかすめた。
ナルトたちと初めて顔を合わせた時から感じていた、人付き合いの不器用さ。どこか一歩引いた距離の取り方に、これまでの環境がそのまま表れているようだった。人里離れた場所で育ったのなら、無理もない。だからこそ、これから先のことを考えれば、少しずつでも人との距離感に慣れさせておいた方がいいだろう。
そう思っていた。あくまで任務の一環として、保護と監視、その延長線上で。それなのに、まさかこの日の自分を思い返して。彼女が誰とでも自然に笑っている姿に、ほんの少し胸がざわつく日が来るなんて。この時の俺はまだ、想像もしていなかった。
『カカシ先生、全部捕まえちゃいましょう』
カカシ「えっ」
馴染むのに時間はかからなさそうだな、そう安堵したのも束の間だった。不意にかけられたその一言に、一瞬、意味が分からず思考が止まる。だが、その真意はすぐに明かされた。
『ここから見ると、迷い猫や犬は十頭くらい。他の二班が動いてるから、残り七頭は放置された子たち。距離も近いし……捕まえられるよ』
淡々と告げられた内容に思わず視線を向ける。澄んだ青い瞳が大きく開かれ、まるで獲物の位置を正確に捉えるかのように、一点を射抜いていた。どうしてそこまで分かったのか、問いかけるよりも早く、彼女は言葉を重ねる。
『カカシ先生が出たら意味ないんだよね。相手、動物だし。いいでしょ?』
小さく首を傾げ、こちらを見上げてくるその表情には、一切の迷いがなかった。次の瞬間、彼女は躊躇なく倒れ込むように前へと跳び出し、そのまま木の上から地面へと飛び降りた。
カカシ「ちょ……まじですか」
反射的に手を伸ばしたが、掴めたのは空気だけだった。思わず舌打ちしそうになるが、その焦りはすぐに消える。名前の動きは、落下ではなかった。枝から枝へ風のように軽やかに駆け抜けていくその姿に、思わず目を細める。
ナルトたちも最初は呆気に取られていたが、すぐにその意図を理解したらしい。散らばるように動き出し、逃げ場を塞ぐ。結果、第七班は七頭の迷い猫と犬を無事に捕獲した。任務は時間内に終了し、評価も上々。普段あまり褒められないせいか、ナルトもサクラも、そしてサスケでさえ、ほんのわずかに誇らしげな表情を浮かべていた。
ナルト「名前ってば、すげーってばよ! なんで場所わかったんだ?」
『森で暮らしてたから……多分、普通の人より目がいい。それに、気配もわかるから』
興奮したナルトが次々と遠くのものを指差すたびに、名前は迷いなく、その位置や数を正確に言い当てていく。その様子に、ナルトは目を輝かせたままぐっと身を乗り出した。
ナルト「名前、お前の目すげーってばよ! 忍になれよ! 余裕だってばよ!」
『私が忍? 忍術もできるか分からないし、戦えるかも……』
サスケ「技術は後だ。お前の感知は、この班にはない強みだ。ナルトと合わせれば、一人として計算できる。忍になってもいい」
ナルト「サスケー!! それどういう意味だってばよ!」
サスケ「そのまんまだ、ウスラトンカチ」
始まった口論を横目に、俺は小さく息をつきながら、名前の肩にそっと手を置いた。
カカシ「今日ずっと見てたけど、お前の感知力と情報処理は本当にすごい。戦闘や忍術はこれからでもいい。身のこなしは問題ないし、基礎を学べば……かなりのところまでいけると思うよ」
その瞬間、彼女の横顔に浮かぶ瞳がわずかに揺れ、きらりと光を宿した。迷いと不安と、それ以上に確かな意志がそこにあった。ああ、これは忍を目指す目だ。そんな確信が、静かに胸の奥へと落ちていく。
そして翌日、火影様へ報告を行い正式な了承を得た。名前は、わずか一週間でチャクラの基礎を習得し、影分身二体の生成に成功。こうして正式に木の葉の下忍となった。これは、異例と言っていい速度だった。
カカシ「……ま、いいか」
ひとり小さく呟いて、視線を外す。才能、という言葉で片付けるにはどこか引っかかる。運が良かった。気になる存在は自分の班にいる。それなら、目を離さなければいいだけの話だ。
