木の葉崩し編
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敵の気配がじわりと近づく。影を伸ばすにも、まだ距離が足りねぇ。焦りをのみ込んだ瞬間、ふいに耳の奥で“あいつの声”が蘇った。
『シカマルは頭脳派だよね』
……今かよ。なんでこんな時に思い出すんだ、まったく。けど、不思議とその一言で戦場の緊張が少しだけ抜けた。
シカマル「……ったく、縁起でもねぇ時に思い出すなよ」
そう呟いた直後だった。鋭い風切り音が空気を裂く。白い影が視界を横切り、一直線に敵陣へ飛び込んだ。腰まで流れる白銀の髪が、光を反射して揺れる。……誰だ?俺の知ってる誰とも違う背中。一瞬、新手の増援かと身構えた。だが——横目に映った“青い瞳”で、全て理解した。
『シカマル‼︎ 大丈夫⁉︎』
シカマル「お、お前か⁉︎その髪…てか、なんでここに!」
彼女の髪は肩までのはずだった。けど今は腰まで伸び、まるで数年分成長したみてぇに大人びて見える。それより目を引くのは——裂けた服、深い傷、荒い息。こんな状態で戦場に来れるわけがねぇだろ。
『ごめん、遅くなって。会場で足止めされちゃってさ』
明るく言うけど……笑顔の端がかすかに震えてる。痛みをごまかしてるのが、一目で分かった。
シカマル「……そんな状態でよく来たな」
『体が勝手に動いちゃうんだよね。でも、来てよかったでしょ?—それじゃあ、私が認める頭脳でよろしくね!』
軽い調子で言いやがって。こんな場面でそんな言葉もらったら……やるしかねーだろ。敵が再び動いた瞬間、俺は息を整えて叫ぶ。
シカマル「合わせろ!」
呼吸は合う。戦いのリズムも、まるで何度も組んできた相棒みたいに噛み合う。けど——問題はそこじゃねぇ。相手のスピードが異常だった。しかも彼女の動きは、傷のせいで明らかに鈍ってきている。肩で息をして、足元がふらつくのが分かった。そして——ふらり、と身体が傾いた。
シカマル「っ……おい!」
反射的に抱き寄せる。腕に収まった身体が、あまりにも軽くて、背筋がぞくりと冷えた。こんな状態で戦ってたのかよ。
『ごめ……ありがと…』
謝るな。無茶しすぎなんだよ。そう言いたかったが、敵の影が迫り、言葉を吐く暇すらなかった。……詰んだ。
アスマ「お前たち、よくやった!!」
一瞬の風。次の瞬間、アスマ先生の蹴りが敵を吹き飛ばし、重く安心する煙草の匂いが漂った。張りつめていた力が緩み、その場に尻餅をつく。腕の中で、彼女がゆっくり顔を上げた。
『……ねぇ、シカマル。髪……伸びてる?』
シカマル「ようやく気づいたのかよ」
緊張が解けたのか、彼女は自分の髪で遊びながら、日常みたいなテンポで話し始めた。
『うん……なんか、違和感』
シカマル「……いや、その……似合ってるって」
言ってから、自分で「あ、やべぇ」と思った。こんな状況で何言ってんだ俺は。案の定、彼女の青い瞳がぱちりと見開かれる。
『……そっか。じゃあ、切るのはやめとくね』
その答えが胸に引っかかる。“ああ、俺の一言で残すのか” と気づいた途端、戦場の中だってのに、ほんの一瞬だけ胸があたたかくなる。喜びなんて、大げさかもしれねぇ。でも——悪くない。いや、むしろ……ちょっと嬉しい。彼女の笑顔がいつもの調子に戻っていくのを見て、胸の痛みと安堵と、言葉にしづらい感情がごちゃまぜになった。
アスマ「んー……そいつ、カカシんとこの子だよな?」
先生の問いに、俺が返そうとしたその瞬間。彼女がふっと前へ出て、振り返らずに言った。
『シカマル、ありがと。ほんとの私は後で会いにいくからね』
言った瞬間、空気がふわりと揺れ——ボンッ。白煙が弾け、目の前の彼女が消えた。影分身——。「……は?」と間抜けな声が自然と出る。残された空気が、やけに静かだ。隣でアスマ先生が煙草を指で弾きながら、苦笑する。
アスマ「……カカシ班ってのは、毎度驚かせてくれるな」
言葉がすぐには出てこなかった。
腕を見る。さっきまで支えていた温もりが、嘘みたいに消え失せている。軽くなったはずの感覚が、逆にじんわり重くのしかかる。ほんとの彼女は、どこにいる?なんであんな傷だらけで、髪まで伸びた姿になってた?疑問は次々と浮かぶのに、どれも答えが出ない。
ただ——胸の奥だけが、妙にざわついていた。
シカマル「……ったく。心配させんなよ、あいつ……」
思っていたよりも弱く、頼りない声が漏れた。
自分でも驚くくらい、力の抜けた声だった。
