木の葉崩し編
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カブトに押さえつけられた彼女の姿が視界に入った瞬間、胸の奥がギリッ……と嫌な音を立てた。“まずい” と判断するより先に、足が勝手に前へ出ていた。だが──間に合わない。あの男は素早く、冷静で、必要とあれば平気で残酷な手を使う。下手に術を放てば、巻き添えにする。……だから、ほんの一瞬だけ手が止まってしまった。
その一瞬が、最悪の光景を生む。
彼女が何か言い返そうと口を開いた時、カブトが耳元に顔を寄せる。
カブト「怒らせると、もっと血を流すことになるよ……」
彼女の体がびくりと震えた。次の瞬間、あいつの舌が——彼女の傷口に触れた。ゾクリ、と背中を氷でなぞられたような感覚が走る。視界の端で、何かが“切れる”音がした気がした。
………………やめろ
自分でも驚くほど鋭く、冷たい声が漏れた。その声音が引き金になったかのように、彼女の中の力が一気に爆ぜ、拘束を跳ね返す。カブトが驚き、のけぞるように距離をとった。その一瞬で、俺は目の前の敵を切り伏せ、彼女の横へ躍り込む。息が荒いのか怒っているのか分からない表情。怒りと悔しさを噛み殺したようなその顔が、どうしても胸に刺さった。
カブト「また会おう、名前ちゃん」
姿を消した背中に一発くらい叩き込んでやりたかったが、もう遅い。気配ごと、空に溶けていた。彼女はしばらくの間、その消えた方向を睨みつけていた。悔しさと、恐怖と、何か別の感情が混ざった目で。
ふと屋根の上に目を向けると、火影様を囲っていた結界が解けている。嫌な予感しかしない。結界の解除と同時に敵が引き上げたらしく、周囲は嘘みたいに静けさを取り戻しつつあった。「まずは彼女を休ませよう」そう声をかけようと一歩近づいた、その瞬間──
ボン、と軽い音を立てて彼女は消えた。
カカシ「……は?」
そこに立っていたのは影分身だった。本物は、はるか先へ走っている。いつ入れ替わったのか、本気で気づけなかった自分に、思わず苦笑すら浮かんだ。その時、隣からやたらテンションの高い声が飛んでくる。
ガイ「お前の部下は実に優秀だな‼︎カカシよ‼︎……まあ、俺の部下の次にだがな‼︎」
カカシ「……本当に、怖いくらい成長しやがって」
ガイ「ふふん!どうしたカカシ!いつもより眉間に皺が深いぞ!? 心ここにあらずという顔だ!」
カカシ「……別に。そんな顔、してない」
ガイ「しているとも!長年のライバルであるこの俺が間違うものか!あれは“弟子の無茶に心を乱す顔”だ‼︎」
カカシ「……お前、たまに鋭いよな」
ガイ「フッ……弟子が傷つけば心配になる!守りたくなる!そして追いかけたくなるものだ、カカシ‼︎」
カカシ「……追いかけるのは、ダメだろ」
ガイ「うむ。その通りだ!だが今のお前は絶対に追う!実に危険だ!だからこそこのマイト・ガイが止めるのだ‼︎」
カカシ「……お前が止めるんじゃ、もっと危ない気がするんだけどな」
ガイ「ははは‼︎ 何を言う!……だがな、カカシ」
ガイは突然、真剣な目でこちらを見た。
ガイ「下忍といえど忍だ。行く背中を見送るのも……俺たちの役目だろう」
カカシ「……ガイにそんなこと言われる日が来るとはな」
ガイ「失敬な!俺はいつだって名言の宝庫だぞ!」
カカシ「……まあいい。わかったよ。俺たちはこっちを守る番だ」
ガイ「そうとも!お前がざわつく気持ちもわかるが……」
ガイは肩をぽんと叩き、穏やかな声で続けた。
ガイ「あの子は、お前が思っているよりずっと強い」
カカシ「……ああ。わかってる」
追うな、と自分に言い聞かせる。だが、胸の奥のざわつきはまったく収まらない。今、彼女が向かっているのは——“助けたい”と言った砂の子のもとだ。
__『私は彼を助けたい』__
あの言葉が胸に引っかかる。また無茶をするかもしれない。また誰かのために、自分を犠牲にするかもしれない。……いや、する。あの子は、そういう子だ。
カカシ「……っ」
静かに息を整え、空を仰ぐ。
カカシ「……頼むから、無事でいてくれよ」
その祈りのような声は、風に消えるほど小さかった。
