中忍選抜試験編 後編
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カカシ「ちょうどいいところに。今日は任務に付き合って」
第三試験に向けて特訓を頼もうと、隣人の扉を叩こうとした、その瞬間だった。扉は勝手に開き、いつもの気だるげな表情のまま、彼はそう言った。
今回の任務は、小さな商隊の護衛。「今のお前の状態を確認するのに、ちょうどいい」と、カカシ先生は言う。
カカシ「フォローはするから、自由に動け」
二人きりの任務は、いつぶりだろう。胸の奥が、少しだけ緊張で強張る。それに……今の自分は、調子がとても悪い。この任務――不安しかなかった。
その不安は、現実になった_____
焚き火の前で、膝を抱えて俯く。また、“囁き”に気を取られ、足を引っ張ってしまった。もう少しカカシ先生が遅れていたら、死んでいたかもしれない。
『……弱いな、私……』
カカシ「珍しいな。お前が、そんな顔するなんて」
顔を上げると、彼は焚き火の明かりに照らされながら、木に寄りかかっていた。揺れる炎に、銀の髪がふわりと光る。
『第二試験のことが……どうしても頭に残ってて。理性を失って暴れたら……敵だけじゃなく、仲間まで傷つけるんじゃないかって思うと…体が、動かないんです』
カカシ「お前の中で何が起きてるのか……正直なところ、俺にも全部は分からない」
そう言って、彼は少しだけ目を細めた。いつもの気の抜けた調子より、ほんの少しだけ真剣だ。
カカシ「でもな。たぶんそれ、自分の命に関わる場面で出てきてるんじゃないかと思うんだよ。……心当たり、あるだろ?」
思い返す。
大蛇丸に地面へ叩きつけられた時。
我愛羅に潰されかけた時。
カブトに、腕を折られた時。
確かに――きっかけは、それだ。それを引き金に、戦闘に入るたび、あの囁きは次第に酷くなっていった。
カカシ「まず大前提な。瀕死にならないこと。……まあ、忍やってりゃ無茶は避けられないけどさ」
軽く肩をすくめる。
冗談めいているのに、言葉はやけに重い。
カカシ「だから今のお前に必要なのは、あの“囁き”に振り回されないためのトレーニングだ。体じゃなくて、心のほうな」
『……精神の、トレーニング……』
カカシ「ああ。帰ったらすぐ始めるぞ。心配すんな。お前なら、ちゃんと制御できるようになる。……俺が、面倒見るからさ」
その言葉が、不思議と胸に残った。そう言って、彼はいつもより柔らかい笑顔で、私の頭をわしゃわしゃと撫でた。振り払おうと思ったのに――今日は、その手がやけに温かい。
思わず顔を上げた、その瞬間。焚き火の光に照らされた横顔に、息を呑む。マスクが外れていた。
『……っ』
ずっと隠されていた口元。初めて見る、素の横顔。月明かりに浮かぶその輪郭に、言葉を失った。
いつも一緒に食事をしているはずなのに、一度も見たことがなかった。どうやって食べているのか、気になってはいたけれど――まさか、こんな形で見ることになるなんて。
カカシ「ん? ……ああ、しまった。……そんなに見られると、照れるんだけど」
視線に気づいたらしい。
少し照れたように頬をかき、マスクを戻す。
『女たらしのカカシ先生が、なんでモテるのか……ずっと不思議だったんですけど。今日、分かりました。それ、凶器ですね』
カカシ「ん?え?俺、褒められてる? それとも、貶されてる?」
『どっちもです。でも……不用意に晒さないほうがいいですよ』
本気で、そう思った。こんな素顔を見せたら、隣人の玄関に女性が列を作りかねない。――今、相手している女性たちで、十分だろうに。焚き火が小さくなっていたので、薪をくべる。その横で、彼がぼそっと呟いた。
カカシ「……そんなに、見せてないんだけどな……」
素顔を見せなくても、十分モテている――という意味だろう。そう思った私は、返事をせず、ただ火の揺れを見つめた。
まさか――付き合いのある女性たちの、誰ひとりとして。
彼の“素顔”を、知らないなんて。
そんなこと、誰が想像できただろうか。
