綱手捜索編
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サスケ「俺は、あいつを殺すためだけに、生きてきたんだ」
吐き捨てるように言った彼の瞳は、これまで一度も見たことがないほど、深い憎悪に染まっていた。踏み込んではいけない領域だと、本能がはっきり告げてくる。
結局、私はサスケを止めることができなかった。だからせめて、一人では行かせないように、私も一緒に行くことを条件に、ナルトたちの居場所を教えた。あの時はそれが最善だと思ったけれど、私はこの選択を後悔することになる。彼ら兄弟を、あの場で会わせるべきじゃなかった。
『やめて……‼︎』
分身のイタチに両腕を掴まれ、身動きひとつ取れないまま、私は叫ぶことしかできなかった。背後では、サスケが容赦なく叩き伏せられている。鈍い衝撃音が胸の奥まで響いた。
あの時、確かに感じたあの優しさ。それが嘘だったかのような残酷な光景だった。そんな状況でも自来也さんは動かず、ただ静かにその光景を見据えていた。わかってる、これはサスケの戦いだ。自来也さんはその意思を汲んで、邪魔をしないためにあえて動かない。
頭では理解できたけれど、無理だった。大切な人が傷つけられているのを、ただ見ているなんて、私にはできない。私がやるしかない。そう覚悟を決め、意識を深く沈める。体の奥にある力へ触れようとしたその瞬間だった。
ジライヤ「 名前 やめるんじゃ‼︎ 」
『んぐっ……‼︎』
イタチ「黙っていろ」
自来也さんの制止の声が飛ぶけれど、それが届くより早くイタチが動いた。一瞬だった。迷いなく私の身体を反転させ、そのまま背後から拘束される。あまりにも正確な動きに、まるで最初から私の力を見抜いていたみたいだった。その直後。
サスケ「うああああ‼︎‼︎」
凄まじい叫びが空気を裂く。反射的にサスケへ視線を向けた瞬間、頭の中へ無理やり映像が流れ込んできた。血に染まったうちはの家紋。次々と倒れていく人々。幼いサスケの前で無惨に散っていく家族。そして、その地獄の中心に立っていたのは、冷たく光る写輪眼を持つ彼だった。
『……っ、う……おえっ……‼︎』
込み上げる吐き気に抗えず、私はその場に崩れ落ちた。カカシ先生の時と似ていた。サスケが見せられている幻術の一部が、そのまま私にも流れ込んできている。幻術がここまで精神を抉るものだなんて知らなかった。意識を無理やり引き裂かれるような感覚。身体は鉛を詰め込まれたみたいに重く、指先ひとつまともに動かせない。
ジライヤ「名前‼︎ 大丈夫か⁉︎ ナルトもその場から動くな!」
鋭い声が響かなと同時に、地面が、いや、この建物そのものが歪むように景色を変えていく。壁が軋み空間が捻れる。何が起きているのか理解しようとしても、もう頭が追いつかない。視界は揺れ、意識は霞み、私は重力に逆らえないまま横へ倒れ込んだ。
その混乱の中で、イタチたちは迷いなくその場を離れていく。黒い背中が、ゆっくり遠ざかっていくのが見えた。追いかけたいのに身体は動かず、声すら出ない。私はただ、その背中を見送ることしかできなかった。
あなたと、話したいことがあるのに。
胸の奥で零れたその言葉は、結局届かないまま、静かに消えていった。
チュン……チュンチュン──。
小鳥のさえずりに導かれるように、私はゆっくりと目を開ける。視界に映ったのは見覚えのある森だった。幼い頃に暮らしていたあの場所。
確かに、さっきまでの出来事を覚えている。全部はっきり覚えているはずなのに、目の前に広がる景色はあまりにも鮮明だった。空気の温度も草を撫でる風も、遠くで揺れる葉音さえ本物にしか思えない。むしろ、ついさっきまで味わっていた出来事のほうが、悪い夢だったのではないかと錯覚してしまうほどだった。
「見つけた」
低く、穏やかな声が森に落ちる。その声に反応するように、私はゆっくり振り返った。
『……あなたは』
イタチ「ハハ、もう忘れちゃったの?うちはイタチだよ」
その笑みを見た瞬間、胸の奥がひくりと震えた。懐かしのにどこかおかしい。安心するような感覚と、言いようのない違和感が同時に押し寄せてくる。
『お兄ちゃん‼︎今日は何教えてくれるの?』
勝手に口が動いた。自分の意思じゃない。体も自然に彼のほうへ駆け寄っていく。視界に映った小さな手、短い腕に低い目線。今、私は子供の体なのだと理解した。
『ずっと待ってたんだよ‼︎』
『見て、こんなこともできるようになったの』
『次はいつ来てくれるの?』
『私は、お兄ちゃんのこと大好き』
『将来、私をお嫁さんにしてね』
「『約束』」
思い出した。私はイタチのことを知っていた。幼い頃、確かに出会って同じ時間を過ごしていた。それなのに、どうしてあんな大切な過去を忘れていたのだろう。
お兄ちゃん、いや、イタチ。あの頃のあなたは誰よりも優しくて、温かくて。私の世界に、確かに笑顔をくれた人だったのに。
