綱手捜索編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
久しぶりに会ったあなたは、昔と違ってどこか悲しげな瞳をしていた。その目に宿る影が気になって、胸の奥が、きゅっと締めつけられる。一体、なにがあったの。記憶の奥から、懐かしい声が蘇る。
〝私、お兄ちゃんのこと大好き!優しいし、物知りだし……お兄ちゃんみたいに強くなりたい〟
無邪気に笑いながら、そう言ったあの日。
少し照れたように返ってきた声。
〝名前なら、すぐ追いつけるよ〟
〝本当に!? やったー! 嬉しいな〟
弾む声。
屈託のない笑顔。
あの頃は、確かに、そこに笑顔があった。
〝……名前〟
名前を呼ぶその声だけが今も耳に残っている。
ガバッ‼︎
『ハッ…ハッ……ハッ』
誰かに呼ばれた気がして、反射的に上半身を起こした。けれど、部屋には誰もいない。胸の奥が妙にざわついている。さっきまで、すぐそばに“気配”があった。そんな確信だけが残っていた。少し開いた窓から風が吹き込み、揺れたカーテンの隙間から黒い羽がひらりと落ちた。…カラスの羽。
『……おにいちゃん』
拾い上げた瞬間、自然とその言葉が漏れた。意味はわからない。でも、何かを忘れている気がしてならなかった。思い出せそうで、手が届かなくて、そのもどかしさに胸が締めつけられる。
その時________
ジライヤ「おー。あいつの言う通り、しっかり成長しとるのー」
『自来也さん』
ジライヤ「ああ、元気しとるか?お前に持ってきたもんがある」
そう言って彼が見せたのは、明らかに一人じゃ食べきれない量の食料。ざっと見た限り十人前はある。「これを食えばすぐ回復するぞ」と自信満々に言うので、半信半疑ながら箸をつけた。
『あいつの言うとおりって…どういう意味ですか?』
ジライヤ「容姿が変わってるだろ? あれは力を10%使えるようになった証拠だ。お前の一族はな、十二歳で一度成長が止まるらしい。力を扱えるようになった時点で、本来の年齢に体が追いつくように成長するんだと」
まるで「常識だろ」みたいにさらっと言われたが、正直、背筋が寒くなる話だった。もし自来也さんに出会わなかったら――私は十二歳の姿のまま止まっていたのだろうか。そう思うと、ぞっとする。
ジライヤ「それとな。カカシにも伝えたが、お前はこれからしばらく俺が面倒を見ることになった。詳しいことは旅の途中で話してやる。……それ食って、一眠りしたら北の歓楽街に来い。そこでナルトと待っとる」
そう言うが早いか、自来也さんは用があると姿を消してしまった。聞きたいことは山ほどあったのに、声をかける暇すらなかった。自来也さんの言った通り、土産の食料を平らげて三十分ほど眠ると、体はすっかり軽くなっていた。自分の回復力に驚きながらも身支度を整え、面倒を避けるために窓から外へ飛び出す。
門へ向かう途中、里の復旧作業が思うように進んでいないのが一目で分かった。崩れた建物、積まれた瓦礫、忙しなく行き交う忍たち。里の中も、こんなに酷い有様だったなんて。あの戦いが残した爪痕の深さを、今さらになって突きつけられた気がした。
そんな時だった。空気が、びり、と震える。明らかに異質な気配が、周囲を押し潰すように広がった。思わず足を止め、視線を向ける。少し先に立っていたのは、黒い羽織を纏った男2人に、木ノ葉の忍たちが身構えている。張りつめた沈黙。その場の空気は、どう見ても穏やかじゃない。
そして、その中にカカシ先生の姿を見つけた瞬間だった。乱れたチャクラが、鋭く肌を刺す。状況を考えるよりも早く、体が反応していた。
―――――
―――
――
『ここは……?』
真っ暗な空間。たしか私は、膝をついたカカシ先生の肩に触れたはずだった。名前を呼んでみるが、返事はない。静寂だけが、重く耳に残る。じっとしていても埒が明かない。私は目を閉じ、感知に意識を集中させた。
微かな気配。間違いない。
それは、真下から感じ取れた。
拳にチャクラを集中させ、床へと叩きつけた。鈍く硬い音が響き、足元に亀裂が走る。その隙間から、赤い光が滲むように漏れ出した。迷いはない。もう一度、力を込めて拳を振り下ろすと、床は音を立てて砕け、穴が開いた。私はそのまま、躊躇なく飛び降りる。視界が開けた瞬間、目に飛び込んできた光景に息が詰まった。
杭に縛り付けられ、刀で身体を貫かれているカカシ先生。その前に立つのは、感情の読めない無表情の男。喉の奥が、焼けつくように熱くなる。
『カカシに触るなぁぁぁぁぁあ‼︎‼︎』
叫んだ瞬間、私の体から青白いチャクラが爆ぜ、この世界に波紋のように広がった。気を失いそうなほど弱々しい瞳が私を捉えた。彼に触れようと手を伸ばす。そのとき、私は“赤い瞳”の気配に気づかなかった。それは慈しむように優しい眼差しだった。けれど、その真意を理解できるほど、あの時の私に余裕はなかった。
『⁉︎』
気づけば、私は現実の世界に戻っていた。
カカシ「うっ……」
『カカシ先生‼︎』
膝から崩れ落ちた彼を慌てて抱き止める。でも、大人の体を受け止めきれず、私はそのまま水面に膝をついた。彼の体は酷く冷たく、肩が細かく震えていた。相手がどれほどの手練れなのか、一瞬で理解できた。
紅「カカシ‼︎どうしたのよ! まだ目を閉じていなきゃいけないの⁉︎」
アスマ「何があった‼︎」
カカシ「ま……だ……だ……」
幻術の影響か、彼のチャクラは波のように揺れ、今にも途切れそうだった。水に浮いているのがやっとで、意識も朦朧としている。それなのに、カカシ先生は震える手で、私から離れようと肩に力を入れた。
カカシ「助かった…ありがとう。だが…ここは危険だ。すぐ逃げろ…。お前の相手じゃない…」
『…いや…無理…。私も忍だよ。こんな状況で、私だけ逃げるなんてできないよ』
カカシ「バカ言うな…これは命令だ…お前は下がれ…」
『⁉︎そんな体で…動いちゃだめ…!』
その会話を切り裂くように、低い声が響いた。
キサメ「じゃじゃ馬娘の登場ですねぇ。お嬢さん、悪いことは言わない。ここは君の出しゃばるところじゃありませんよ。……しかしイタチさん、妙ですね。今の幻術は……解いたんですか? それともあの娘に解かれたんですか」
胸の奥で、何かが静かに煮え立つ。それは怒りとも恐怖とも違う、もっと形の分からない熱だった。
――『許さない』――
その言葉を放った瞬間、世界が凍りついたように静まり返った。鳥のさえずりも、風の揺らぎも、何ひとつ届かない。まるで自分だけが取り残されたような感覚に、背筋がひやりとする。
『…どうなってるの……あなた、なにをしたの』
ゆっくりと視線を向けると、イタチと呼ばれた男は淡々と、しかしどこか苦しげな面差しでこちらを見つめていた。
イタチ「少し……お前と話したかった」
『……私のことを知ってるの?』
「ああ」と短く返される。
記憶を探っても、この人と会った覚えはない。なのに、彼の声はまるで昔から知っているように胸に染み込んでくる。怒りなのか、懐かしさなのか分からない感情が胸をかき乱し、気持ちが悪くなる。
『…あなたは……誰……?』
イタチ「…やはり忘れているか。昔は分からなかったが、今なら分かる。お前の中にいる“二つの存在”が原因だろう」
『何を…言って……っ‼︎』
言い終える前に、視界がふっと揺れた。
フワッ……
気づけば、イタチが目の前に立っていた。次の瞬間、静かに腕を伸ばされ、私はそっと抱き寄せられる。さっきまでの冷徹な気配は、嘘みたいに消えていた。息が詰まりそうになるほど、優しい抱擁。
_______ 名前、会えてよかった。
耳元で囁かれる低い声が、胸の奥に染み込んでいく。懐かしい匂い。懐かしい声。懐かしい温もり。思考より先に、身体が理解していた。
私は、この人を知っている。
理由なんて分からない。それでも、腕の中で確信だけが静かに広がっていった。男がゆっくりと身を離す。咄嗟に、私はその袖を掴んでいた。
『……イタチ……』
ガイ「木の葉旋風‼︎‼︎‼︎」
激しい風切り音とともに、緑の影が私たちの間を一閃した。割って入ったのはガイ先生。その勢いのまま、私は“彼”から一気に引き離される。間髪入れず、ガイ先生は鬼鮫へと攻撃を繰り出した。衝撃で足元が揺らぎ、思わず瞳を閉じる。
次に目を開いたとき。さっきまで、確かにそこにあった“彼ら”の気配は、跡形もなく消えていた。残されたのは、胸の奥に張り付くような、言いようのないざわめきだけ。
その後、カカシ先生は意識を戻さないまま部屋に運ばれ、私は事情聴取のため同行することになった。しかし、彼と二人きりで交わした言葉は、誰にも言えないままだった。
上忍たちの会話から、あの人がサスケの兄〝うちは イタチ〟だと知った。胸の奥に、名もない違和感が沈んでいく。そして、それは最悪のタイミングだったのだろう。事実を知った直後、サスケが現れた。兄の名を聞いた瞬間、彼の顔色が変わる。何かを確かめるような一瞬の沈黙のあと、振り返ることもなく走り去っていった。
『私、行きます!』
アスマ「……頼んだぞ。サスケを止めるだけでいい。深追いはするな」
アスマ先生の声は厳しく、そこには明確な“命令”の重さがあった。私はまっすぐ頷いた。
『……わかりました』
カカシ先生のことだって心配でたまらない。でも、今の私にはどうすることもできない。だったら、今の私にしかできないこと”をやるしかない。
ふと、自分の手に意識が向いた。あの瞬間に触れた感触が、まだ微かに残っている。私は静かに拳を握りしめた。
もう一度、あなたに会いたい。
その想いだけが、胸の奥で確かに燃えていた。
