綱手捜索編
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看護師「えへへ、毎日カカシさんのお顔が見られて嬉しいです。今日も仕事、頑張れそう」
――君に会いに来てるわけじゃないんだけどな。
胸の内でそう呟きながらも、表情は崩さない。「いつもありがとう」と柔らかく笑ってみせると、彼女はそれだけで満足したように頬を赤く染めた。
最初は、どこで会ったのか思い出せなかった。けれど会話を重ねるうちに、記憶が繋がる。アンコたち上忍だけで飲んだ、あの忘年会の夜。隣に座っていた女性の一人。一夜限りで、名前も曖昧なまま、記憶の端に引っかかっている程度の相手。
看護師「あ、あのっ…よければ、今度ランチでも……一緒にどうですか?」
やっぱり。予想通りの言葉に、胸の温度がすっと冷える。つまらない。面倒だ。感情が動かないまま、答えだけが先に決まる。
カカシ「ごめんね。里の復旧で手が離せなくてさ。しばらく時間が取れそうもないんだ。またの機会にね」
角が立たないように、丁寧に距離を置く。彼女は少し寂しげに俯いたが、それ以上は踏み込んでこなかった。それでいい。これ以上、余計な声をかけられないように、踵を返す。向かう先は一つ。
本来の目的――『彼女』の病室。
ガラガラ……
返事はない。わかっていた。それでもどこかで期待してしまう自分に、苦笑する。あの事件で、名前は死んでいてもおかしくないほどの重傷で運ばれてきた。命こそ助かったものの、数日経った今も意識は戻らない。
カカシ「……どうやら、みんなも来てたみたいだな」
机の上には見舞いの品々。その中に見舞いの品としては珍しいものを見つけた。
カカシ「苦無って……スパルタだな。早く起きて修行でもしろってか。そんだけ気に入ってるんだろうな」
サスケが毎日ここに来ているというのは、看護師から聞いて知っている。ただ来て、窓に腰掛け、何も言わず彼女を見たり外を眺めたり──三十分ほどで帰っていくらしい。
カカシ「青春かねぇ……。な? みんな心配してる。早く起きて、元気なところ見せてやれよ。それに、里の復旧だって人が足りてないんだ。手を貸してくれよ……」
いつものように隣へ腰を下ろし、昨日の見舞いの後に起きたことから今日までの出来事を、ひとつひとつ話して聞かせる。返事はない。それでも、言葉は自然と続いた。ふと、ベッドへ視線を落とす。眠る彼女は、最後に見た時とは随分違っていた。髪は伸び、輪郭は少しだけ柔らかく、大人びている。
カカシ「……それにな。お前の飯も、また食べたいな〜」
軽く笑ってみせる。
カカシ「ここ数ヶ月、寝つきが良かったのは……多分、お前の料理のおかげだと思ってる。味もだけどさ、あれは……落ち着いた」
思い返せば、あの数ヶ月は意外と悪くなかった。
久しぶりに一人の夜を過ごしそう思った。
カカシ「それに、お前との話は他と違って面白かったしな」
言い終えて、小さく息を吐く。
カカシ「つまり――退屈なの。俺」
本音だった。
君がいないと、世界が少しだけ静かすぎる。
その時──
『カカシ先生は……自分のことばかりですね』
かすれた声。確かに、聞こえた。一拍。鼓動が遅れて跳ねる。
カカシ「…………いつから、起きてたの?」
彼女がこちらを見たその瞬間、胸の奥が確かに跳ねる。見覚えのある青い瞳。前と同じはずなのに、向けられる視線はどこか大人びていて、逃げ場がない。忍として、感情を表に出さないのは基本だ。平常心。いつも通り。そう、分かってる。なのに、言葉が喉で引っかかる。成長した姿に驚いたのか、それとも――ただ見惚れていたのか。自分でも判別がつかない。
『……さっきの“飯も食べたいなー”あたり』
カカシ「つまり、ほぼ最初からね。起きるならもっと前からにしてよ。けっこういい話してたんだよ?俺、そんな自分勝手なやつじゃないんだけどなぁ」
『……そういうことにしておきます』
小さく笑う彼女の声は、まだ少し眠りを引きずっていて柔らかい。目を覚ましたばかりだというのに、言葉の応酬は相変わらずだ。
『あの子……我愛羅はどうなりました?』
カカシ「自分の心配しなよ。名前もかなりの重症だったんだよ。……でも、あの子は無事に自分の里へ帰った。事件の発端は大蛇丸だって判明して、砂は木ノ葉に全面降伏を宣言した。うちも受け入れたから、あの子がこれからどうこうなることはないよ」
伝えると、小さな息が漏れ、「よかった」と微笑んだ。その顔を見て、胸の内でため息をつく。……危なっかしいな。名前は、誰に否定されようと関係なく“救うべき人”を選ぶ。今回の我愛羅もそうだ。彼は普通じゃなかった。それでも彼女は迷いなく飛び込み、救ってしまった。これからもきっと同じように、命を張って誰かを救おうとする。たとえ相手が、どうしようもない悪党だったとしても。
カカシ「まったく……手のかかるお嬢さんだね」
『悪口ですか』
カカシ「そうだよ。危なっかしくて、目を離せない。
心配されないくらい強くなりなさい。……で、強くなるまでは周りに頼るってことも覚えなさい」
しばしの沈黙のあと──
『……カカシ先生。私、いっぱい学んだよ。…絶対に強くなりたい。みんなを守れるくらい。……カカシ先生のことも、守れるくらい強くなるね』
その言葉に、思わず目を細める。
人を守りたいと願う心は、忍を何よりも強くする。まさか自分まで、その“守る対象”に入っているとは思っていなかったけれど……悪くない。
カカシ「……ククッ。お前は本当に面白いな」
そう言い、軽く頭をわしゃわしゃと撫でると、彼女は照れたように視線をそらすだけだった。伸びた髪が揺れて、前よりもずっと女の子らしい。その仕草がふと可愛いと思えた。この感情は多分今までと違う。
きっとこの時からだろう。彼女を一人の“女性”として認識したのは。でも、教え子であり、十も離れた子に、そんな感情を抱くはずがない──そう思い込んでいた俺は、この先しばらく悩まされることになるなんて、まだ思いもしなかった。
カカシ「俺がお前に追い抜かれるその時までは──ちゃんと守ってやるよ」
静かな病室に、その言葉だけが優しく落ちた。
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ジライヤ「カカシ。ナルトと名前は、しばらくわしが預かる。ナルトの見張り役としてお前を指名した判断は正しいが……お前のレベルでも手が回らん事態になるかもしれんでな」
カカシ「……何の話です?」
ジライヤ「まだ詳しいことは掴みきれてないが、“暁”とかいう連中が術やら尾獣やら……色々と集めておる。その一つに、ナルトの中の九尾が含まれる可能性がある」
カカシ「……それで俺の手が回らなくなる理由は?」
ジライヤ「メンツだ。ほとんどが手配書に名を連ねる、S級犯罪者ばかり。そして……その中には、あのイタチもいる」
カカシ「……っ」
思わず息を呑む。イタチほどの実力者が所属する組織──危険度は計り知れない。しかし、それ以上に気になることがあった。なぜ、名前がそこに含まれるのか。自来也は……彼女の何を知っている?
カカシ「……名前は。彼女にも尾獣が? それとも……彼女について、何か知っているんですか」
ジライヤ「……あの子のことは、話しておかねばならんな」
いつになく重い声だった。
ジライヤ「彼女の中に尾獣はいない。だが……尾獣と同等、いや、それ以上の力を持っている。もともと、あまり知られていない一族の生き残りでな……暁にも現時点ではノーマークだろうが、それも時間の問題じゃろう」
言葉のひとつひとつが重い。
ジライヤ「ナルトも名前も、いずれ背中を気をつけて生きていかねばならん。それに……彼女の修行は特殊だ」
ざっくりすぎるのに、とんでもない内容ばかりだ。頭が追いつかず、思わず問い詰めるような口調になる。
カカシ「……その一族について。自来也さんの知る限り、全部聞かせてもらえますか」
自来也は一度だけ深く頷き、静かに語り始めた――
カカシ「成長は早いわ、独特な雰囲気を漂わせる時があると思えば……そういうことだったんですね。とんでもない一族の生き残りとは、恐れ多い話です」
ジライヤ「ハッハッハ‼︎ だが心強いぞ。わしも何度も助けられたからなぁ。それにな、その一族は美男美女ぞろいでの……名前も、とびきりの女性に育つぞ」
懐かしむような顔でムフムフ笑っているその姿に、“あぁ、この人は無類の女好きだったな” と改めて思い出す。
カカシ「まあ、確かに……」
ふと、病室で眠っていた彼女の顔を思い出す。整った顔立ち。伸びた髪。自来也の言う通り、美しい女性に成長しそうだ。…だが、その先は否定しておく。
ジライヤ「おっ‼︎ お前さんもわかるか‼︎」
カカシ「……自来也さん。俺たち、今とても重要な話をしてましたよね。それに、教え子にそんな感情を抱いたりしませんよ」
ジライヤ「ガハハハ! わしも“教え子ではなかった”が、似たようなもんじゃ。あいつらは人を引き寄せる魅力を持っとる。直感だが…お前さんも、わしと同じになる気がするの〜」
カカシ「……何を根拠にですか」
ジライヤ「ん?直感だって言っておろう。強いて言うなら…わしらは“人を見る目があるから”じゃの〜」
これ以上まともに話を続けるのは無理だと判断し、「はは……」と愛想笑いだけ返す。
すると自来也は満足げに頷き──
ジライヤ「まあ、いずれ分かるわい」
そう言って、背中をバシバシ叩いてきた。
_________余計なことまで思い出しちまったが。
確か、あの組織の名前は……
カカシ「“暁”……だったか」
黒地に赤い雲。あの外套をまとい、ウチハイタチと干柿鬼鮫は、まるで獲物を見つけた獣のように目の色を変えて襲いかかってきた。
月読を食らったせいで、今の俺は水面に“立つ”だけで精一杯。チャクラコントロールを維持するだけで神経が削られる。
そんな俺を横で支える名前も、肩で息をしながら、今にも崩れそうな足取り。──本来ならまだ入院しているはずの彼女が、なぜここにいるのか。
そこを考えている余裕はない。
状況は最悪で、苛立ちだけが募る。
……くそっ。
