綱手捜索編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『おにぃーちゃーーん、見てよ! こんなこともできるようになったんだよ!』
そう言いながら、弟と同じくらいの歳の少女は、木の枝を苦無のように投げ、見事に的へ当ててみせた。あまりの正確さに、思わず驚きの声が出そうになる。女の子は「やったー!」と万歳して飛び跳ねたかと思うと、そのまま勢いよく俺の懐に飛び込んできた。仕方なくよしよしと頭を撫でてやると、嬉しそうに目を細める。
この子と初めて会ったのは三ヶ月前。修行で山奥へ向かう途中、まるで落ち葉のように——いや、本当に空から降ってきたのかと思うほど突然、崖の上から舞い降りてきたのが最初だった。すぐに少女の関係者を探したが、周辺には誰一人としていなかった。関係者を見つけるため、その日は日が暮れるまで周辺をくまなく捜索した。けれど、誰にも会えなかった。
ただその間、少女は俺の背中にしがみつきながら、ずっと楽しそうに笑って話しかけてきた。その笑顔が妙に印象に残っている。日が落ち始め、仕方なく家へ連れて帰ろうと声をかけた時だった。
『……だめ。そっちには行けないの』
その一言で、空気が変わった。たった数秒前まで子どもらしく無邪気に笑っていたはずの少女が、急に大人のような落ち着いた口調になる。
「けど、君をここに1人置いていくわけにはいかないよ。僕の街に行こう。君の親もいるかもしれないし、きっと皆が助けてくれる」
『ありがとう。お兄さんは優しいね。けどダメなの。私はここで待ってるの。だから——またここに来て。そして、また私にいろんなことを教えて』
そう言って、少女はふっと笑った。
「あっ! 待って……どこに——」
呼び止めるより速く、少女は森の中へ身を翻し、音もなく消えていった。慌てて追いかけたが、その姿は影ひとつ残っていなかった。幻だったのだろうか——。頬をつねると、痛みだけがしっかりと残った。
それからは。どうしても気になる日が続いた。少女に会いたい──そう思いながらも任務が続き、あの森へ向かうことができない日が数週間続いた。初めて会ってから一ヶ月が過ぎた頃。もういないだろうと、半ば諦めながらも、胸に残る期待を捨てきれず、息を切らし森へ向かった。
……いた。
まるで待っていたかのように、少女は森の入り口でこちらを見ていた。俺を見つけると、ぱあっと顔を輝かせ、勢いよく懐に飛び込んでくる。その瞬間、胸の中が温かくなり、思わず「ハハッ」と笑ってしまった。俺はしっかりと彼女を抱きしめ返した。それから、俺たちは一週間に一度会うようになった。
驚いたことは二つある。
一つは、少女の驚くほどの成長スピード。
そしてもう一つは──年齢。
「え、同い年?」
『うん! 10歳‼︎』
嘘だ。この背丈で俺と同い年?的に向けて枝を投げ、ワイワイはしゃぐ姿は、どう見ても弟と同じ年頃にしか見えない。子どもが背伸びをして年齢を偽るのはよくあることだし、俺に合わせたのだろう…そう思うことにした。だが、それ以上に気になることがあった。彼女の中には、何か〝いる〟。それを初めて垣間見たのは三回目に会った時だ。
「やっと見つけた……」
かくれんぼをしていた時、少女はいつのまにか綺麗な湖の上に立っていた。小さな影が、静かに空を見上げている。数秒後、少女はふっと動き出した。その動きは舞うようで、風と溶けあうようで、彼女の体からは青白いチャクラのような光が微かに揺れていた。風が吹き、草がざわめき、湖の水面が波打つ。まるで自然すべてが彼女の呼吸に合わせていた。
……綺麗だ。
本気でそう思った。声をかけることすら忘れ、ただ魅入ってしまうほどに。そして、青白く輝く瞳がゆっくりと俺を捉えた。
『見つかっちゃった』
そう言った少女は、いつもの幼い笑顔を見せた。
何度か会えば分かる。チャクラの流れも、表情の変化も、声の調子も。少女の中には、説明のつかない“もう一人”が確かに存在している。だがその時の俺は、深追いする気にはなれなかった。焦らなくても、これから少しずつ分かっていくだろうと思ったのだ。
……けれど。少女と会えたのは、このあとほんの数回だけだった。それから──少女はふいに姿を消し、二度と現れることはなかった。胸の奥に残ったのは、温かさと、名残惜しさと、そして理由の分からない“喪失感”だけだった。
『カカシに触るなーーー‼︎‼︎』
鋭い叫びが、空気を裂いた。
反射的に振り向いた先に立っていたのは──
……ああ、こんなところにいたのか。
かつて森の中で無邪気に笑っていた少女の面影は、もうない。背は伸び、輪郭は大人びて、纏う気配までもが変わっていた。子どもではない。それどころか、驚くほど――強くなっている。
向けられる敵意は、はっきりと俺に向いていた。躊躇のない視線。守ると決めた者だけが持つ、覚悟の光。なのに、その瞳があまりにも澄んでいて。俺は、目を逸らすことができなかった。
成長したその姿が、胸の奥を強く打つ。
