木の葉崩し編
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『ナルトありがとう!これで……彼に届く‼︎』
ナルト「気をつけろってばよ‼︎」
ガアラ「くるなぁぁぁぁぁぁああ‼︎」
ナルトの頭突きが守鶴に亀裂を走らせた。巨大な砂の体が軋み、悲鳴みたいな音を上げて崩れ始める。その隙を逃さず、揺れる砂の上を踏み越えて一直線に距離を詰める。
視界に入るのは、私が近づくことを必死に拒絶している彼。その瞬間、胸の奥で何かが切れた。あれだけ私のことを襲っておいて。あれだけ傷つけておいて。いまさら逃げるなんて許さないよ。
私は、自分の中に眠っていた〝もう一つの力〟を限界まで解き放った。青白い光が体の芯から噴き上がり、全身へと広がっていく。瞳はいつもより深い青へと色を変え、唇の隙間から覗いた牙が光を受けてかすかにきらめく。
『……もう待たない。あなたが助けを求めるのを、じっと待つなんて……もうできない!絶対、逃さないよ』
その瞬間、砂が荒れ狂うように襲いかかってきた。まるで〝彼に近づけまいと〟守鶴が最後の牙を剥くみたいに。けれど、その砂は私に触れる直前でぴたりと止まった。あの時と同じ。第二試験で感じた、あの拒絶の感覚。一気に距離を詰める。迷わず腕を伸ばし、倒れている我愛羅の体を逃がさないように強く抱きしめた。
『捕まえた』
耳元で静かに告げる。逃がさない。しがみつくように抱き寄せると、彼の中へ、私の光がゆっくりと染み込んでいくのが分かった。背中へ、胸へ、そして、長い長い孤独で固まってしまった、その奥へ。
ガアラ「くる……な」
『……大丈夫』
小さく息を落とす。周囲の砂が力を失って、静かな音を立てて崩れ落ちる。もう、私を拒む砂はどこにもなかった。
ガアラ「……うっ……グス……グス……」
どこを見ても光がなかった。音も色もない、ただ冷たい闇だけがどこまでも広がっている。足音さえ吸い込まれていくような静寂の中で、私はゆっくりと歩いた。
『やっと……見つけた』
ここに辿り着くまで本当に遠かった。やっと見つけた彼の心の中心。そこにいたのは、想像していたよりもずっと幼い我愛羅だった。五歳か、それより幼いかもしれない。暗闇の中で膝を抱え、小さな背中を震わせながら泣いている。
誰にも触れられず、誰にも寄り添われず、時間だけが止まったみたいに。心だけがこの日からずっと置き去りにされたまま。
『……そんなとこにいたんだ』
そっと声をかける。驚かせないように、ゆっくり一歩、また一歩と距離を縮めていく。
ガアラ「……グス……お姉さん……だれ……?」
『私は名前。キミをこの世界から連れ出しに来たよ。外の君はすごく頑固で、話を聞いてくれないから……直接、会いにきたの』
できるだけ柔らかく、ゆっくりと言葉を置く。小さな我愛羅は涙の跡を残したまま、じっと私を見上げていた。その目に浮かんでいるのは、不安とほんのわずかな期待。
『……でも、変だね。誰かここへきた痕跡がある』
ガアラ「違う!あいつは……あいつは僕を愛してなんかいなかった!命令で僕に優しくして……最後には僕を殺そうとしたんだ‼︎」
幼い声。それなのに、その叫びは鋭く深く胸に突き刺さる。この子はまだこんなに小さいのに、どれだけ残酷なものを背負わされてきたんだろう。
『……そっか。でもね、それでもここへ来れたってことは……その人の〝どこか〟には、本物があったのかもしれないよ』
ガアラ「嘘だ‼︎そんなの信じない!僕は誰も信じないぞ‼︎」
『うん……今の君には、そう思うのが当然だよね。でも…』
私はゆっくりしゃがみ込んで、小さな彼と目線を合わせた。逃げ場を塞ぐためじゃなく、ちゃんと向き合うために。
『私ね、無理矢理でもキミの心をこじ開けに来たの。もう、逃げても駄目。寄り添おうとしてる人たちから目を逸らし続けたら……キミはずっと、このままだよ』
ガアラ「僕には無理だ。……誰も愛せないし、誰も僕を愛してはくれない」
やっと本音が聞けた。
『大丈夫、私がキミを助ける。今度こそ…ここから抜け出せるように。いや、引きずり出す‼︎』
強引に引き上げる。小さな体がぐらりと揺れて、驚いたように瞳が見開かれた。その表情があまりにも幼くて、思わず息が緩みそうになる。
『大丈夫。私がついてる』
握った手に少しだけ力を込める。もう離さない。
もう二度と、この暗闇に置き去りにしないために。
『……この世界、暗すぎるよ。こんなの、考えが全部マイナスになるに決まってる』
小さく息を吐いて印を結ぶ。次の瞬間、私を中心に真っ暗だった世界がほどけていく。淡い光が広がり、闇を押しのけるように景色が塗り替わる。気づけばそこは砂漠だった。金色の砂が風に流れ、陽の光を受けてきらめく。遠くには、揺らぐように街の影が見えた。
『ふぅ……本当はね、私の故郷みたいな森にしようと思ったんだけど……これが我愛羅の見る景色なんだね。すごく、綺麗だよ』
ガアラ「……ここは……俺の里だ」
その声に、はっと振り向く。そこにいたのは、もう幼い彼じゃなかった。現在の彼。けれど、その瞳だけはほんの少しだけ柔らいでいて。さっきまでの拒絶とは違う、揺らぎがそこにあった。私は、まだ繋いだままの手に視線を落とす。
ガアラ「……なぜ、お前はここまで俺のために動ける?他人のためにここまでする理由が……俺には分からない」
『直感。君は悪い人じゃない……そう思ったからかな』
我愛羅「……不思議なやつだ。お前は言ったな。
ここに来られるのは、俺を大切に思う者だけだと。……お前は……俺を大切だと思うのか」
『全部理解したわけじゃないし、許せないことだってあるよ。でも……助けたいって思えるくらいには、大切』
ガアラ「……そうか」
『私、木の葉に来てね。いろんな人からたくさんのことを教わったの。今度は私たちが……少しずつ学んでいけばいいんだよ。今日は、キミの一歩。』
そう言って、繋いだ手をゆっくり持ち上げる。その仕草に彼は視線を落とした。重なる手を確かめるみたいに、じっと見つめる。そして、ほんのわずかに口元が弧を描いた。それは確かに、前に進もうとする形だっだ。
