中忍選抜試験編 後編
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「だりーーー……」
なんだかんだで、第3試験まで進んでしまった。毎日の修行も正直めんどくさい。なのに今日は輪をかけてついてない日だった。修行を終えて家に帰れば、母ちゃんに買い出しを頼まれる。
ほんと人使いが荒い、そう思いながら天を仰ぐ。空はどんよりと曇っていて、気分まで重くなるようだった。体のだるさに引っ張られるように、ため息が漏れる。その時だった。妙に張り切った声が、どこからか聞こえてきた。
『そう!兵糧丸!それの作り方を知りたいの。図書館にも行ったんだけど、なんかしっくりこなくて……。それで、秋道一族はそういうのに詳しいって聞いたから』
チョウジは目を瞬かせたまま、言葉に詰まっている。どうやら、会話についていけていないらしい。女と話すのに慣れていないせいか、返事をするタイミングすら掴めていないようだった。まあ、相手がサクラやイノなら、こんなふうにはならないんだろうけどな。
そんなチョウジの様子など気にも留めず、名前は楽しそうに話し続けている。その姿に自然と視線が向いた。ナルトから「面白いやつが仲間になった」と聞いていた。最初は特に興味もなかったけれど、何度か顔を合わせるうちに、あいつの言っていた意味が少しずつ分かってきた。
世間知らずで、どこか抜けているところもあるけど、裏表のない性格は悪くない。俺みたいに、女と話すのが面倒なタイプでも、妙に気を遣わず話せる相手だった。言葉に詰まっているチョウジに助け舟を出すべきか。そう考えた、その時だった。不意に三人の忍が姿を現した。
忍1「おい、見ろよ。秋道一族の出来損ない、ただのデブがいるぞ」
忍2「一丁前に女と一緒にいるじゃねーか。おい、お前、よく見ると綺麗な顔してるな。そんなデブとじゃなくて、俺らと飯行こうぜ」
俺が声をかけるより先に、アカデミー時代からチョウジに絡んでいた連中が現れた。相変わらず、くだらないやつらだ。チョウジの表情がわずかに曇る。
シカマル「おい――」
『余計なお世話』
俺の声を遮るように、名前が言った。
忍1「は?」
『余計なお世話だって言ったの。一緒にいる相手は私が決めるし。それに、どう考えても……あなた達より、チョウジの方が優しくて、強い忍だよ』
その言葉に、俺が褒められたわけでもないのに、自然と口角が上がった。ちゃんとあいつはチョウジのことを見ている。外見や噂じゃなく中身を。それがなんとなく嬉しかった。
忍1「なっ!てめぇ、下手に出てればいい気になりやがって!こいよ、先輩に盾突くとどうなるか思い知らせてやる」
『相手にするだけ無駄。チョウジ、行こ…離してくれる?』
そう言って離れようとした瞬間、ひとりが強引に腕を掴んだ。反射的に買い物袋からリンゴを取り出し、そいつの顔へ向かって投げつけた。
忍2「そんな強気なのも今のうちだぞ、来いっ…ドカッ!痛って⁉︎誰だ⁉︎」
シカマル「相変わらずっすね、先輩。そいつにちょっかいかけるのやめといたほうがいいすよ。なんていったって、あのウチハ一族と同じ班。それに上司はハタケカカシさんです」
軽く言ったつもりだったけれど、その名前を出した瞬間、相手の顔色がわずかに変わる。
忍2「なっ……」
忍3「お、おい、もう行こうぜ」
忍1「てめー、覚えてろよ」
捨て台詞を吐きながら、連中は足早に去っていく。その背中を見送りながら、俺は小さく息を吐いた。
シカマル「そんなんだから、いつまで経っても成長できないんすよ」
チョウジ「ありがとう、シカマル」
『シカマル、助けてくれてありがとう。これ、りんご……ダメだよ、食べ物で攻撃したら』
シカマル「ちょうどいいもんがなかったんだよ。それに、お前なら落とさずキャッチするって分かってたしな。……で、珍しい組み合わせだな。何してたんだ?」
それをきっかけに、二人はここにいた理由を話してくれた。次の試験で必要になる兵糧丸。その作り方を知るために、まず秋道一族の家を訪ねたらしいけれど、チョウジの親は任務で不在だった。
急ぎらしく、このまま引き返すのも面倒だ。だから俺は、自分の家へ案内することにした。秘薬そのものはなくても、付き合いの長い親父なら知識くらいはあるはずだ。
それに。以前、親父がなぜか名前のことを気にしている様子を見せていた。理由はよく分からないけれど、ちょうどいい機会かもしれない。
