飛段•角都章
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昨日の自分を、これほどまでに恨んだ日は、この先もそう多くはないだろう。穴があったら入りたい、まさにそんな気持ちだ。私にできたことは、ただひたすら謝ることだけだった。
それは、無事に退院し、休暇をもらっていた時のこと。中忍試験でお世話になったアンコさんに声を掛けられた。「知り合いも増えるし、いい機会だから」と誘われたのは、上忍たちが集まる食事会。知り合いが少ない私にとっては願ってもない機会だったし、上忍の方たちと交流を深められたらいい、そんな軽い気持ちで参加を決めた。まさか、それが飲み会だとは思ってもいなかった。
席へ案内されると、隣に座っていたのは、さっきまでそこにいなかったはずのカカシ先生だった。珍しい、そう思う間もなく、周りの上忍たちが口々に笑う。
「お前が大勢の飲み会に来るなんて珍しいな」
「明日は雨じゃないか?」
好き勝手にからかわれている姿を見るのも新鮮だ。やっぱり珍しいことなんだと、不思議に思って首を傾げていると、先生は肩をすくめるように笑った。
カカシ「ただ、楽しく飲んでほしいだけだよ」
その一言を聞いた瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなった。きっと、サスケとの一件を気にかけてくれているのだろう。私が無理をしていないか、落ち込んだままじゃないか。それを確かめるために、わざわざ来てくれたのかもしれない。そう思うだけで、自然と頬が緩んだ。
だから私は大丈夫だと伝えたかった。言葉にしなくても伝わるように、私はちゃんと前を向けているから、少しだけ安心してほしかった。まさか、その気持ちが空回りして、自分がお酒に潰れてしまうなんて。この時の私は、まだ知る由もなかった。
「……おい……起きろ」
誰かに呼ばれている気がした。重たい瞼をゆっくりと持ち上げるけれど、視界はぼやけたままで、何ひとつはっきりとは見えない。自分が何をしていたのか、どうしてここにいるのか、頭はうまく働かず、ただ身体だけがふわふわと浮いているようだった。
背中に感じる柔らかな感触に、ぼんやりと家のソファーだと理解する。ぐいっと上半身を起こされると、誰かが目の前にしゃがみ込んだ。腕を支えられる感触が妙に安心する。
『……』
考えるより先に手が動いていた。無意識にその人の頬へ触れ、指先で輪郭をなぞる。あたたかい。
そのまま、そっと首へ腕を回し唇を押し当てた。布越しに伝わるその人の熱が心地いい。サスケに強引に触れられたからだろうか。そのせいで、この安心できる温もりに縋りたかったのかもしれない。酔いで曖昧になった意識は、その行動を止めることができなかった。
「っ……勘弁してくれ」
『……お願い』
何をお願いしたかったのか、自分でも分からなかった。ただ、離したくなかった。離れたくなかった。その一心で、私は必死に彼へ縋りつく。何度か拒まれた気がするけれど、最後には受け入れてくれた。触れられるたびに伝わる温もりは、ひどく穏やかで、不思議なくらい安心できた。
私はもう大丈夫だと思っていた。サスケのことはちゃんと乗り越え、前を向けていると信じていたけれど、それは思い込みだったのかもしれない。心の奥底には、まだ癒えきっていない傷が残っていた。この温もりに触れたからこそ、そのことを初めて思い知らされる。
それでも、その傷ごと包み込まれていくような感覚があった。理由なんて分からない。ただ、不思議とこの人になら委ねてもいいと、そう思ってしまった。
