中忍選抜試験編 後編
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カカシ「絶対に、だめだ」
間髪入れずに返ってきた一言に、思わず言葉が詰まる。
『なんでですか。絶対いい修行方法だと思うんですけど』
自分では、かなり真剣に考えた案のつもりだった。けれどカカシ先生は呆れたように眉を寄せる。
ここ最近、精神面の修行はどうにも行き詰まり気味だ。それに、明日からはサスケの特訓も本格的に始まる。いつまでも私に付きっきりというわけにもいかない。だから、自分で何とかしようと思っただけなのに。
カカシ「“あのサディストに拷問してもらう”って……どうしたらその発想になるんだよ」
呆れ半分、本気半分の声。
カカシ「それに、俺に内緒で行くつもりだったろ」
『ギクッ』
カカシ「バレバレ。お前、考えてること全部顔に出るんだよ」
小さく息をつきながら、軽く額を指でつつかれる。
カカシ「精神面を鍛えたいなら、紅のところに行きなさい。……あの人の幻術は本物だ。余計な遠回りしなくて済むし、何より無茶しないで済む」
『……はい』
渋々返事はしたものの、胸の奥で重いため息が落ちた。紅先生は嫌いじゃないけれど、正直少し苦手だ。一人で行くのは、かなりきつい。
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サクラ「ほんっと最低! 教え子の悩みを真剣に聞かないなんて……あれ、絶対モテないわ!」
『アハハ、でも……多分、モテてると思うよ?』
〝あの素顔だし〟と、うっかり口に出しそうになって、慌ててお茶を飲み込む。
サクラ「えーー!? あのデリカシーなし、変なツンツン頭で、顔の半分隠してる遅刻魔の先生が!? どこにモテる要素があるのよ!」
『さ、さあ……? 女の人と一緒にいること、多いし』
サクラ「そっか。名前はカカシ先生と同じアパートだもんね。まさか……好きな人の前だと、意外とちゃんとするタイプとか?」
『んー……どうだろ……』
少し考えてみる。好きかどうかなんて、判断しようがなかった。そもそも、会う女性は毎回違うし、誰に対してもあの調子だ。いや、むしろ、ちゃんとしてるところなんて見たことないかもしれない。そんなことをぼんやり考えていると。
サクラ「それより修行どうするの? 第三試験まで、あんまり時間ないよ?」
団子を頬張りながら、サクラが首を傾げる。何気ない調子なのに核心を突いてくる。そうだ。今は、こんなことを考えている場合じゃない。
修行相手が見つからず、相談しているうちに、気づけば団子屋に流れ着いていた。けれど、のんびりしていられる時間はもうほとんど残っていない。このままじゃ何も変わらず、焦りがじわりと胸の奥に広がる。
『ほんとに困ってるんだ。どうしよ……』
ナルト「サクラちゃーーーん!!」
遠くから、やたらテンションの高い声が飛んできた。反射的に顔を上げると、視界の先でナルトが全力でこちらへ駆けてくる。その後ろには、見覚えしかない妙に存在感のある大きな影。一瞬遅れて誰なのか理解した。
『自来也さん!!』
ジライヤ「むっ! お前さん、名前か!」
長い白髪に〝油〟と書かれた鉢金、歌舞伎役者みたいな隈取。久しぶりなのに、まったく変わらない姿に、思わず笑みがこぼれる。
ナルト「なんだよ名前、エロ仙人知ってんのか?」
『うん。私のおじさんと仲良かったみたいで、木の葉に来るたび寄ってくれてたの。外の話もいっぱい教えてくれたし、クナイの投げ方とか護身も少し……』
懐かしい記憶が次々と浮かんでくる。お土産をもらったり、くだらない話で笑ったり。本当に親戚のおじさんみたいな存在だった。
ナルト「へぇ〜……」
感心したような声とは裏腹に、その目はどこか疑っているようで、じっとこちらを見てくる。絶対、全部は信じてない顔だ。
ナルト「っていうか、こんなことしてる場合じゃないってばよ! サクラちゃん、ちょーっと話したいことがあるんだってばよ!」
サクラ「なによ、ここで言いなさいよ」
ナルト「こ、ここじゃちょっと……!」
耳まで真っ赤にして、もじもじと視線を泳がせるナルト。ああ、なるほど。一瞬で察して、小さく笑みがこぼれた。
『私、自来也さんと話してるから。ゆっくりどうぞ』
ナルト「……っ!」
ぴたりと固まるナルト。その隣でサクラは、ぱちぱちと瞬きを繰り返している。その様子に気づかないふりをして、私はそっと席を立った。背中越しに慌てたようなナルトの気配が伝わってくる。あとは任せよう。
ジライヤ「久しいのう。ちっと背ぇ伸びたか?」
『一年ぶりですから』
ジライヤ「……で、あいつはどうしとる」
少しだけ声の調子が落ちた。
『……半年くらい前に〝急用だ〟って家を出て、それきりです。長くても一か月で帰ってきてたんですけど……今回は、ちょっと』
ジライヤ「……なるほどな」
一瞬、彼の表情に影が差した。けれど、次の瞬間にはいつもの調子に戻り、大きな手でわしゃわしゃと頭を撫でられる。
ジライヤ「心配すんな! あいつは昔っからああいう男だ。気ままで勝手で……でも、しぶとい。どっかで元気にやっとるわ」
『大丈夫です、そこは心配してませんよ』
ジライヤ「薄情なやつだなー」
からかうように笑ったあと、ふと私の額当てに目を向けた。
ジライヤ「しかしお前……額当てなんぞ付けおって。忍になったんか。よく、あの過保護な男が許したのぉ」
『許したというか…木の葉に来てから決まったことなので、おじさんは知りません』
ジライヤ「なるほどな……これも〝縁〟かの。名前。お前も、わしと修行せんか? ナルトの修行も行き詰まっとるし、一緒に見てやるわい」
迷う理由は、ひとつもなかった。胸の奥にあった不安が、一気に道を見つけたみたいにほどけていく。
『……はい! お願いします!』
即答した私に、自来也さんは満足そうに笑った。
