サスケ奪還編
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シカマル「大真面目だ、バカ」
即座に返された言葉に、思わず息を詰めた。シカマルは壁にもたれたまま、面倒くさそうに頭を掻く。
シカマル「まず一つ。お前は大蛇丸に狙われてる。サスケを連れ戻すはずが、お前まで連れてかれたら……元も子もねぇだろ」
淡々としているのに、重い現実を突きつける声だった。
シカマル「二つ目。サクラが言ってただろ。お前、サスケに好かれてるって」
『……それが、どう繋がるの?』
素直に問い返すと、シカマルは「はぁ……」と大きく息を吐いた。まるで呆れているみたいだ。
シカマル「……お前、本当に分かんねぇのか?……男はな。好きな女の言葉なら、どんな状況でも耳を貸すもんなんだよ」
その瞬間だった。私以外の全員が小さく頷いたのは。思わず視線を巡らせる。ネジは静かに目を閉じ、キバは「まあな」とでも言いたげに鼻を鳴らし、チョウジまで真顔で頷いている。どうやら、男という生き物は本当にそういうものらしい。
『…まぁ、みんなが言うなら……わかった』
そう答えはしたものの、現状が好転するわけじゃない。私も試しに術をぶつけてみたけれど、この土壁は想像以上に分厚かった。これ以上、無理に力押しを続ければ削られるのはこちらの方だ。焦って動けば余計に状況は悪くなる。だったら、今の私にできることをやるしかない。私は小さく息を吸い込み、みんなを見渡した。
『……みんな、少し近づいて』
キバ「は?なんでだよ」
ナルト「ちんたらしてる場合じゃないってばよ‼︎」
『いいから、来て』
きっぱり言い切ると、それ以上の反論は返ってこなかった。全員が私を囲むように集まるのを確認して、私は静かに息を吸い込み意識を一点へ集中させた。体の奥深くから、ゆっくりチャクラを引き上げていく。それを今度は外へ。薄く、広く、丁寧に。
膜。
そんな言葉が一番近かった。私たちを包み込むように広がる、薄く大きなチャクラの層。綱手様を探す旅の途中で身につけた術。放出したチャクラを維持し続けながら、同時に精密な制御を行う、極めて神経を使う術。まだ未完成で、ここまで大きな範囲を覆うには負担も大きい。ましてや、動きながら維持するなんて、今の私にはほぼ不可能に近かった。だからこそ、閉じ込められたこの状況だから使えた術。
私は目を閉じたまま、さらに集中を深めていく。仲間たちのチャクラが外へ流れ出ないよう、一人一人を丁寧に包み込む。薄い膜の内側で、チャクラの流れが静かに安定していくのが分かった。
ネジ「……これは」
白眼を開いたネジが、小さく息を呑む気配がした。私は術を維持したままゆっくり呼吸を整えるけれど、じわじわと削られていく感覚は誤魔化せない。それでも術を解くつもりはなかった。
ネジ「……お前、自分を犠牲にしているのか」
ナルト「どういう意味だってばよ⁉︎」
ネジは静かに視線を巡らせ、状況を言葉にする。
ネジ「名前は今、俺たちの周囲にチャクラを張り巡らせている。俺たちのチャクラが、この壁に吸われないようにな」
ナルト「それってば……すげーじゃねーか!」
ネジ「バカを言うな、ナルト。その間も…名前のチャクラは、確実に削られている」
シカマル「おい!さっき言ったこと、分かってるよな!?自分を守れって言っただろ。今すぐやめろ!!」
張り詰めた声が、狭い空間へ響くけれど、私は術を維持したまま小さく首を横に振った。
『…ごめん、今……すごく、集中してる……から。でも……だい、丈夫だよ』
無理やり口角を上げる。たぶん、全然大丈夫そうな顔はできていないけど、それでも笑おうとした。
『だって……みんなが、守ってくれるんでしょ?』
一瞬、空気が変わった。全員の視線がはっきりとこちらへ向く。私は、守られるだけじゃない。守るために、ここにいる。みんなが私を守ってくれるなら、私もみんなを守る。それだけだ。
私がサスケのもとへ向かうなら、みんなはその道を切り開くために敵と戦う。なら、今の私にできることは一つしかない。これから控える戦いのために、仲間たちの力を少しでも温存させること。私はそっと視線を横へ向けた。隣に立つ、ひとつの背中。頭を掻きながら難しそうな顔をしている、隊長の姿。
私が持ちこたえる間に、この人は必ず考える。焦りも、不利な状況も全部飲み込んで、その中から勝ち筋を見つけ出す。それが奈良シカマルという忍だ。だから私は、小さく笑った。
『……シカマル。もし心配なら、勝ち筋を早く見つけてくれてもいいよ』
シカマル「なっ……」
一瞬だけ言葉を詰まらせ、それから盛大にため息を吐く。
シカマル「……ったく。本当にお前は……」
呆れた声だけれど、その顔にはもう焦りだけじゃない色が戻っていた。シカマルはゆっくり両手をを構えて、いつものように思考へ潜っていく。その姿を見た瞬間、胸の奥に静かな安心感が広がった。もう大丈夫、あとは時間の問題。
だから、この役目も決して無意味なんかじゃない。私は術を維持したまま静かに目を閉じる。信じてる。この場で一番頼りになる頭脳を。
シカマルの判断を。
