綱手捜索編
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『ずいぶん老けた……いや。いい男と、いい女になったな』
知っている。その口調、間の取り方。低く、どこか楽しげな声色。若い頃、半ば無理矢理修行をつけてもらい。任務では何度も命を助けられ、そして惚れた女の声だった。驚く間もなく、隣で綱手が鋭く声を張り上げた。
ツナデ「お前……イザナミなのか⁉︎どうして、そんなガキの中にいる‼︎」
『積もる話は……山ほどあるだろうが……』
イザナミは苦しげに息を吐く。その体、いや、名前の体が小さく震えていた。まるで別の存在が無理やり器を使っているせいで、身体そのものが悲鳴を上げているようだった。それでも、視線だけは逸らさない。
『じらいや…この子は、まだ未熟だ。教えたこと……ちゃんと、教えてやれ』
その瞳は真っ直ぐわしを見ていた。頼んだぞ、と言葉にせずともそう伝えてくる目だった。
『……また、な』
ジライヤ「待て‼︎」
思わず、声が荒れた。
ジライヤ「聞きたいことが山ほどある‼︎俺たちは……お前の最期を見ていない‼︎どこかで、生きてたんだろう⁉︎お前ほどの女が……簡単に死ぬはずがない‼︎」
分かっていた。今さら答えが返ってこないことくらい。それでも、半分は諦めながらどこかで生きていてほしいと願い続けていた女だった。忘れられるはずがなかった。だが、イザナミは何も答えず、ただ昔と変わらない微笑みだけを残して、そのまま静かに崩れ落ちた。伸ばしかけた手は最後まで届かなかった。
ジライヤ「……っ」
ぐったりとしているがまだ温かい。それだけで、張り詰めていたものが少しだけ緩んだ。
ジライヤ「綱手‼︎ 容態をっ⁉︎」
ツナデ「分かってる‼︎……っ重症だが…命に別状はない」
その一言に、胸の奥へ溜まり続けていた息をようやく吐き出した。
ツナデ「……お前、まだ探してたのか」
ジライヤ「……一応な」
誤魔化すように視線を逸らした。
すると綱手は呆れたように鼻を鳴らす。
ツナデ「………デレデレに惚れてたもんな」
ジライヤ「うっさいっての‼︎」
思わず声を荒げるか、その後に続くはずだった否定の言葉は結局出てこなかった。
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全員が無事に回復し、綱手も五代目火影になることを承諾した。あとは木ノ葉へ帰るだけ。街を出る前に昼食を済ませ、張り詰めていた空気もようやく和らぎ始めていた。久しぶりに穏やかな時間だった、その矢先。
ナルト「綱手のばーちゃんってさ、だらしないし、全然頼りなくね?」
『…………』
反射的に額を押さえた。今、この瞬間で世界一いらない一言だった。案の定、綱手のこめかみに青筋が浮かぶ。次の瞬間には怒号が飛び、止めに入る暇もなく店の表へ出て勝負が始まる。ここへ来る時にも見た景色だ。
ひとしきり暴れたあと、綱手はふっと表情を緩める。
ツナデ「いい男になりなよ」
ナルト「おう‼︎」
綱手はそう言って、ナルトの額に軽く口付けを落とした。そのまま、今度はわしの隣に立つ名前を指差し、唐突に声を張り上げる。
ツナデ「イザナミ‼︎私は立派な火影になってみせるからな‼︎」
あまりにも唐突で、当の本人はきょとんとした顔で首を傾げた。完全に話についていけていないが、綱手は満足そうに笑うだけだった。その姿を見ながら小さく息を吐く。
『イザナミ…?綱手さん、誰に何を言ってるの?』
ジライヤ「さあなぁ。…まあ、あいつなりの決意表明ってやつじゃろ」
記憶のない彼女は、「ふーん」と素っ気なく呟き、軽く首を傾けただけだった。元々、面影はあると思っていた。だが、ここへ来て、その横顔はどうしても、あの女と重なって見えるようになっていた。
ジライヤ「……わしも、頑張るからな」
思わず零れた言葉だった。彼女は一瞬きょとんと目を丸くしたあと、くすりと笑う。
『自来也さんも、変なの』
その笑顔を見た瞬間、胸の奥が静かに熱を帯びた。
あいつの想いも。この子の未来も。
今度こそ。
今度こそ、わしは見失わん。
そう、心の奥で固く誓った。
