綱手捜索編
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『……約束』
ジライヤ「む、起きたか、名前」
『ん……自来也さん? 私……』
重たい瞼を開けると、視界がゆらゆらと揺れていた。ぼやけた景色が少しずつ輪郭を持ち始め、そこでようやく、自分が誰かに背負われているのだと気づく。どうやら私は、あの後気を失ってしまったらしい。
ジライヤ「まったく、無茶しおって」
『……ごめんなさい』
ぼんやりした頭のまま返事をすると、自来也さんが小さく肩を揺らして笑った。その振動が背中越しに伝わってくる。すると、私の声に反応したのか、少し前を歩いていたナルトが勢いよく振り返った。
ナルト「おっ!起きたか名前‼︎お前、急に倒れるからびっくりしたってばよ!」
いつもの調子で騒ぐ声に、思わず小さく笑ってしまう。なんだろう、その声を聞いてようやく現実へ戻ってきた気がした。
自来也さんから聞かされた状況は、想像していた以上に深刻だった。敵の二人には逃げられ、サスケは強力な術を受けたまま意識が戻らず、病院へ運ばれたという。あの時、自分にもっと力があれば違ったのだろうか、そんな考えが一瞬よぎったけれど今さら後悔しても遅い。
そして私たちは今、綱手という女性を探す旅の途中らしい。木ノ葉三忍の一人にして、最高峰の医療忍者。カカシ先生やサスケを助けるため、自来也さんは彼女を探しているのだという。まあ、他にも理由があるみたいだったけれど。そこを聞いても、自来也さんは「子どもは気にせんでええ」とはぐらかすだけで、詳しくは教えてくれなかった。
ただ、問題はそこだけじゃなかった。どうやらこの旅そのものが、私たちの修行も兼ねているらしい。そもそも私は体力を戻すのが最優先とのことだ。
『自来也さん……』
ジライヤ「なんじゃ、起きてたのか。もう少し寝とってもええんじゃぞ。あの術に干渉して、意識が残っとるだけでも奇跡みたいなもんじゃ」
焚き火の火がぱちりと音を立てる。夜風は少し冷たくて、眠っているナルトの寝息だけが静かに響いていた。
『私、あの人のこと知ってた。昔はすごくいい人だったよ』
ジライヤ「そーじゃの。人は、いつどこでどう変わるか分からん。お前が出会った後に、何かあったかもしれん」
『私……あの人のこと、好きだった。うちはの“最後”を知っても、どうしても嫌いになれない。犯罪者に対して、こんなふうに思うの……やめた方がいいのかな』
記憶と現実が、胸の中でぐちゃぐちゃに絡まり合っていた。それでも私は信じてしまう。あの人は本当は、悪い人じゃないって。長い沈黙のあと、自来也さんが小さく息を吐いた。
ジライヤ「……難儀な道じゃのう。じゃが、お前たち一族の直感は侮れん」
『……え?』
ジライヤ「お前がそう思うなら、それは間違いじゃないのかもしれんぞ」
その一言に胸の痛みが少しだけ和らぐ。否定されなかっただけで救われた気がした。また会いたい。今度は、ちゃんと話したい。何があったのか、彼の口から聞きたい。その願いだけが、胸の奥で静かに燃え続けていた。
___1年後
『……来てくれたんだ』
イタチ「お前が呼んだんだろ」
『……そうだね』
静かな声が夜風に溶ける。振り返った先にいた彼は、記憶の中と何も変わらない瞳でこちらを見つめていた。冷たい月明かりの下。その目だけが、あの頃みたいに優しい。
イタチ「……随分、背が伸びたな」
『言ったじゃん、私はあなたと同い年だって』
イタチ「確かに言っていたな」
小さく笑うとイタチは僅かに目を細めた。その表情が懐かしくて胸が痛くなる。彼はゆっくり、一歩ずつ距離を詰めてくる。あの頃と違って、逃げる理由なんてもうなかった。そっと頬へ触れた指先は驚くほど温かい。その熱が肌から胸の奥へ静かに染み込んでいく。
イタチ「……大人になったな。綺麗だ」
その一言だけで視界が滲んだ。忘れたはずの想いも、閉じ込められていた記憶も、全部溢れそうになる。彼の腕が静かに肩を抱き寄せた。昔と違って強引じゃないのに、どうしても逃げられない。違う。離れたくなかった。額が触れそうなほど近づいた距離で、イタチが小さく目を伏せる。
『会いたかった……ずっと。あの時、忘れてて……ごめんね』
「いや。あの時は、それでよかった。…今こうしてお前と会えている。それが何より嬉しい」
その声の深さに胸の奥がじんわりと熱を帯びる。優しく細められた瞳を見た瞬間、堪えきれなくなって、彼へそっと触れるように口付けを落とした。イタチは驚いたように僅かに目を見開き、それから静かに笑う。
イタチ「……本当に、お前は変わらないな」
『だって、ずっと会いたかったんだもん』
触れられるたび、背へ回された腕の温もりがじわりと胸へ染み込んでいく。離れていた時間が長かったからこそ、こうして隣にいるだけで涙が出そうになる。
一緒にいられた時間は、あまりにも短かった。それでも、離れていた時間を埋めるように、失くしてしまった日々を取り戻すように、私たちは互いの名前を何度も呼び合った。
『イタチ……』
イタチ「ああ」
