中忍選抜試験編 前編
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カカシ「無茶はするなよ」
……奴らに「お気に入り」だと揶揄されるのも、仕方ないのかもしれない。自分でも認めざるを得ない。俺は名前に対して、少し甘いところがある。
『火遁・蒼火球の術!!!』
名前の口から放たれた、青く巨大な炎が会場の半分近くを覆った。一瞬、熱気にひるむ。だがすぐに我に返る。――これほどの規模の術。相当なチャクラが必要だ。その成長ぶりに、思わず息を呑む。元々呑み込みの早い子だとは思っていたが……まさか、ここまでとは。俺は試合から目を離せずにいた。
アスマ「おいおい、あれ本当にお前の“お気に入り”の子か?」
カカシ「……だから、それやめてくれ。名前だ。まあ、お前の任務見学に来てた子ではあるけどな」
アスマ「マジかよ……見違えるってレベルじゃねぇ。もはや別人だな」
名前の戦闘スタイルは、普段ならサポート型だ。情報収集能力と野生の勘を活かし、的確な判断で全体をまとめるタイプ。だが――今は違う。一連の動きに、無駄がない。まるで、最初から“攻撃型”として組み立てられたかのようだ。
まさか、一人で戦わせると、ここまでの動きを見せるとは……。もしかすると、今この予選を戦っている中で、名前が一番中忍に近いのかもしれない。……けど。
アスマ「成長ぶりには驚いたが……カブトが押し返してきてるな」
カカシ「そうだな」
ナルト「何言ってんだってばよ! まだわかんねーじゃねーか‼︎」
アスマ「確かに強くなったが、経験の差が出てる」
サクラ「経験の差? でも、今は名前が押してるように見えるけど」
カカシ「確かに強くなった。カブトにも引けは取らない……けど、場数が違う。お前らも分かるだろ? 波の国での経験だ」
ナルト・サクラ「…………」
カカシ「そういうことだ。あいつは、まだ一度も“あれ”を経験していない。それが、ここに出てる」
動きは悪くない。だが、一撃一撃に“重み”が足りない。それは、実戦経験の差と――知り合い相手だからこそ出てしまう、彼女の優しさのせいだろう。
カブトは上から押さえつけるように動きを封じ、名前が身をよじるたび、掴んだ腕をさらに締め上げていく。痛みに顔を歪めても、彼女は決して「降参」とは言わない。審判も動かない。試合として成立していると判断したのだろう。
『っ……あ”ぁぁ……』
……その、かすれた声に。俺の指先が、わずかに反応した。胸の奥がざわつく。嫌な予感が、はっきりと形を持ち始める。ここからじゃ、二人の会話は聞こえない。だが――カブトの口元が、わずかに吊り上がるのが見えた。
次の瞬間――ボキッ。
『あ”ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ‼︎‼︎‼︎』
会場全体が、悲鳴に震えた。
サクラ「カ、カブトさん⁉︎ いくらなんでもやりすぎじゃ――」
カカシ「……あれで済んだだけ、マシだよ」
聞いたことのない叫び声に、身体が前へ出かける。必死に、それを押し留めた。今動けば、試験そのものを壊す。……だが、指先は止まらなかった。カブトが彼女から離れ、審判に声をかける。審判が動いた――迎えに行ける。そう思って、壁から背を離した瞬間。
ナルト「待てってばよ!!!」
ナルトの叫びが、空気を切り裂いた。
ナルト「名前‼︎ 行けってばよ!! お前の力は、こんなもんじゃねーだろ!!」
視線の先で、折れた腕を押さえながら、名前がゆっくりと立ち上がる。足元はふらつき、立っているだけで限界だ。
――もう、やめろ。
喉まで出かけた言葉を、噛み殺す。
それを言う資格は……俺にはない。
カブト「往生際が悪いな。これ以上は手加減できないよ? ……殺す気で行くけど、それでも降参する気はないのかい」
『………………』
カブト「返事は……なし、か」
その瞬間、カブトの姿が消える。次に見えた時には、名前の背後にいた。……反応しない。
痛みか、意識が飛びかけているのか。身体が、微動だにしない。
ナルト「やめろぉぉ!!」
サクラ「いやっ……!」
手すりを握る手に、力が入る。
――その時だった。
本当に、一瞬。
ドガッ‼︎
カブト「ごふっ⁉︎」
名前は伏せるように身体を倒し、そのまま下からカブトの顎を蹴り上げた。空中で血が飛ぶ。次の瞬間、彼女の姿が消え――カブトの正面へ回り込み、踵落としが叩きつけられる。
ズドンッ‼︎
地面が割れ、カブトの身体が沈む。さらに、迷いなく彼の両腕を踏みつけ、完全に動きを封じる。折れていない左手で、クナイを握る。会場の空気が、凍りついた。
ガイ「素晴らしい体捌きだ……! あの娘、なかなかやるではないか!」
アスマ「おいおい……最初、手ぇ抜いてたのか? お前も演技が上手いな、カカシ」
カカシ「……いや……」
違う。
これは――
俺たちの知っている名前じゃない。
振り下ろされようとするクナイ。
その瞬間――
カカシ「名前……もういい。終わりだよ」
クナイは、カブトの首すれすれで止まった。
カブト「……ゴフッ……降参、だ……」
かすれた声。予選は、名前の勝利で幕を下ろし、会場は歓声とざわめきに包まれた。名前は、ふらふらと階段へ向かう。医療班が駆け寄った、その瞬間――膝が、すとんと落ちた。
カカシ「っと……」
倒れ込む前に、後ろから抱き留める。
カカシ「よく頑張ったな。……悪い、この子は俺が運ぶ。名前、少し動くぞ」
顔を上げることなく、視線だけが俺を捉えた。支えた腕に伝わる重みが、彼女の限界を物語っている。
カカシ「……大丈夫。任せろ」
印を結び、次の瞬間。
二人の姿は、会場から消えた_____
医療忍「大丈夫です。しばらく眠れば回復します」
カカシ「どーも」
静かな医務室で、寝顔を見つめた。普段の穏やかな表情とは違う、疲れ切った顔。…あんな無茶、する子じゃないんだけどな。椅子に腰を下ろし、折れた腕が少しでも楽になるよう、そっと位置を直す。
カカシ「おやすみ。……よく頑張った」
守らないと、すぐ壊れそうだ。本気でそう思ってしまった自分に、ひとつ息を吐く。
……ほんと、俺は甘いな。
