綱手捜索編
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病院の屋上。
吹き抜ける風が静かに髪を揺らす。人気がないことを確認してから、自来也様はゆっくりと口を開いた。
ジライヤ「カカシ。ナルトと名前は、しばらくわしが預かる。ナルトの見張り役としてお前を指名した判断は正しいが……お前のレベルでも手が回らん事態になるかもしれんでな」
カカシ「……何の話です?」
ジライヤ「まだ詳しいことは掴みきれてないが、〝暁〟とかいう連中が術やら尾獣やら……色々と集めておる。その一つに、ナルトの中の九尾が含まれる可能性がある」
カカシ「……それで俺の手が回らなくなる理由は?」
ジライヤ「メンツだ。ほとんどが手配書に名を連ねる、S級犯罪者ばかり。そして……その中には、あのイタチもいる」
カカシ「……っ」
思わず息を呑んだ。イタチほどの実力者が所属している組織。危険度など想像するまでもない。だが、胸に引っかかったのはそこじゃなかった。
カカシ「……どうして、『名前』まで?」
ナルトはわかる。九尾を抱えている以上、狙われる理由がある。けれど彼女は違う。返答の代わりに、自来也様は静かに目を細めた。その反応だけで十分だった。
カカシ「……名前は。彼女にも尾獣が? それとも別の何か…彼女について、何を知っているんですか」
ジライヤ「……あの子のことは、話しておかねばならんな」
いつになく重い声だった。
ジライヤ「彼女の中に尾獣はいない。だが……尾獣と同等、いや、それ以上の力を持っている。もともと、表にはほとんど出てこない一族の生き残りでな。……暁にも現時点ではノーマークだろうが、それも時間の問題じゃろう」
言葉のひとつひとつが重い。
ジライヤ「ナルトも名前も、いずれ背中を気をつけて生きていかねばならん。それに……彼女の修行は特殊だ」
淡々とした口調のはずなのに、その内容だけが異様だった。尾獣以上の力。狙われる可能性。普通には生きられない。情報が多すぎる。なのに肝心な部分だけが、霧の中みたいにぼやけている。
カカシ「……その一族について。自来也様の知る限り、全部聞かせてもらえますか」
しばらく黙ったまま、吹き抜ける風に目を細めた。そして、一度だけ深く頷く。これから聞く話が決して軽いものではないとわかった。
ジライヤ「まず、あの一族はな――」
静かな屋上で、自来也様はゆっくりと語り始めた。まるで、長い間封じられていた秘密を解くみたいに。
カカシ「成長は早いわ、時々妙に独特な雰囲気を漂わせる時があるわ……そういうことだったんですね。恐れ多い一族だ」
聞かされた話を頭の中で整理しながら、小さく息を吐く。冗談めかした口調ではあったが、半分は本音だった。今まで見てきた不可解な部分が、ようやく一本の線で繋がっていく。
ジライヤ「ハッハッハッ‼︎ だが、心強いぞ。わしも何度も助けられたからのぉ。それにな、その一族は昔から美男美女揃いでな……名前も、とびきりの女になるぞ」
カカシ「……」
ムフムフと笑う姿を見て思わず目を細めた。あぁ、この人、無類の女好きだったな。妙なところでしみじみ思い出す。
ジライヤ「なんじゃ、その目は。事実じゃぞ?」
カカシ「まあ、確かに……」
ふと、病室で眠っていた彼女の姿が脳裏を過る。整った顔立ち。伸びた髪。柔らかくなった輪郭。自来也様の言う通り、この先きっと綺麗な女性になるのだろう。そこまでは認める。だが、その先は別だ。
ジライヤ「おっ‼︎ お前さんもわかるか‼︎」
カカシ「……自来也様。俺たち、今かなり重要な話してましたよねそれに、教え子にそんな感情抱いたりしませんよ」
即答だった。呆れたように返しながら小さく肩を竦める。少なくとも、自分ではそのつもりだ。
ジライヤ「ガハハハ! わしも教え子ではなかったが、似たようなもんじゃ。あいつらは、人を引き寄せる魅力を持っとる。直感じゃが……お前さんも、わしと同じになる気がするのぉ〜」
カカシ「……何を根拠にですか」
半眼で睨むように返すと、自来也は悪びれもなく笑った。
ジライヤ「ん? 直感だって言っとるじゃろう。強いて言うなら……わしらは人を見る目があるから、かのぉ」
カカシ「……」
返す言葉が見つからない。まともに相手をしていたら話が進まない。そう判断して「はは……」と適当に愛想笑いだけ返す。すると、自来也は満足げに何度も頷き。
ジライヤ「まあ、いずれ分かるわい」
そう言って、背中をバシバシと叩いてきた。
カカシ「痛っ……だから何なんですか、その自信」
苦笑混じりに返しながらも、胸の奥には妙な引っかかりが残る。同じになる、そんなはずない。そう思うのに、病室で向けられた笑顔がどうしても頭から離れなかった。
________
カカシ「ハハッ」
アスマ「なに呑気に笑ってんだよ、カカシ!もう目ぇ開けて平気なのかよ!」
場違いな笑いだった自覚はある。必要なことだけでよかったのに、余計なところまで思い出してしまって、つい笑いが漏れた。
確か、あの組織の名は。
カカシ「“暁”……だったか」
黒地に赤い雲の外套。それをまとった うちはイタチと干柿鬼鮫は、獲物を見つけた獣みたいな目で襲いかかってきた。月読を食らった影響は想像以上に深刻だ。今の俺は水面に立つだけで精一杯。チャクラコントロールを維持するだけで神経が削られていく。
その隣で俺を支えている名前も、肩で荒く息をしていた。今にも膝をつきそうなほど足取りは不安定で、本来ならまだ病室で寝ているはずの状態だ。なんでここにいる。そう思っても考える余裕なんてなかった。
状況は最悪だ。次から次へと厄介事ばかり増えていく。苛立ちは、自分に向いているのか、それとも別の何かに向いているのかもうわからない。
……くそっ。
