木の葉崩し編
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『ハッ……ハッ……っ⁉︎ ……カブトさん』
荒く息を吐いた次の瞬間、再び背後を取られる。体勢を崩されたまま地面へ押し倒され、受け身を取る暇もなかった。首筋に触れる冷たい感触。視界に映ったカブトさんは、まるで楽しんでいるかのように口元を緩めていた。
カブト「君はいつもボロボロだ。どうだい、そろそろ大人しく着いてくる気にならない?楽になれるよ」
『まだ成長途中なので。けど……そのボロボロの私を甘く見たから、前は負けたんですよ? また同じ目に遭うかもしれませんけど、大丈夫ですか?』
カブト「ククッ。君は本当に、僕を怒らせるのが上手だ」
低く落とされた声が耳元を掠める。笑っているはずなのに、その声音には欠片も温度がなかった。
カブト「そんなふうに煽るとさ……これ以上、血を流すことになるよ?」
囁きが終わるより早く。
露出した傷口に、ぬるりとした感触が走った。
『っ――⁉︎』
理解するより先に背筋が粟立つ。何をされたのか気づいた瞬間、ぞわりと嫌悪が込み上げ、息が詰まった。反射的にチャクラが弾け、焦げた匂いが鼻を掠めた。押さえつけられていた身体が解放され、私は素早く距離を取った。心臓が嫌なほど早く脈打ち、肌に残る感触が消えてくれない。
カブト「……おっと。危ない危ない」
一歩引いた彼は、焼けた口元へ指先を添える。まるで興味深い実験結果でも眺めるように、細められた目が静かにこちらを見ていた。
カブト「口が焼かれるところだったよ。……君、本当に油断ならない」
『火傷じゃ済まさないくらい、燃やしてやろうか』
カブト「怖い、怖い」
気にも留めていない様子で、彼の手に淡い光が宿る。即座に施された医療忍術によって、焦げた痕跡は数秒で綺麗に消えていった。
私は袖で乱暴に傷口を拭う。肌に残る不快感を振り払うように鋭く睨みつけたけれど、カブトはその視線さえ愉しむように受け止める。口元をわずかに歪め、ゆっくりと笑った。
カブト「まだコントロールが甘い。感情の起伏で出力が跳ね上がるのも分かった。……それに、体を纏うチャクラに火の性質変化。サスケ君との修行の影響かな? 未知数だらけだけど、今日の収穫としては上出来だよ」
淡々と分析を口にしながら、カブトはふと遠くへ視線を向ける。
カブト「っと、あちらが終わったみたいだ。また会おう、名前ちゃん」
その言葉と同時に空気がわずかに揺らぐ。次の瞬間には、そこにいたはずの姿は跡形もなく消えていた。
『私は絶対嫌‼︎』
吐き捨てるように叫ぶ。返事が返ることはなく、残された静けさだけが妙に耳に残った。
カカシ「名前‼︎大丈夫か‼︎」
『……あの人に、二度と会いたくない‼︎』
カカシ「……っ。詳しい話は後で聞くよ。火影様の結界も解けたし、敵も撤退した。俺はあっちへ行くから、あとは任せろ。お前は休んでろ。もう限界だろ?」
『本当に……最後の力をあの人に使っちゃって。もっと手伝いたかったけど、もうチャクラが……お願いします』
次の刹那。
――ボンッ。
彼の前にいた私は影分身。本体はすでに動き出している。あの混戦の中、敵の数が減る瞬間を見計らって分身を残し、私は先にナルト達の元へ走り出していた。
『ハァ…ハァ……本当、信じられない‼︎でも終わった……これで、やっと本気で追える』
乱れた呼吸を無理やり整えながら、私は足を止めない。疲労で体は重いけれど、追わなければならない理由があった。意識を一点へ収束させる。遠くに感じる禍々しいチャクラの気配。その方角へ迷いなく駆け出した。
そのとき、私の両目に黒い紋様が静かに浮かび上がる。
