中忍選抜試験編 後編
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シカマル「本当に食っていかないのか?うちは歓迎してんだけど。特に親父が…」
無事、家にいた親父から兵糧丸の作り方を教えてもらった。親父と名前の会話も意外と弾み、気づけば日は暮れかけている。まあ、ほとんど親父が一方的に話していただけだけど。それでも、親父はずいぶん気に入ったらしい。気づけば夜飯まで誘っていた。
『申し訳ないよー。兵糧丸の作り方も教えてもらったうえに、そのまま貰っちゃったし……それに夜ご飯までは……』
少し困ったように笑って、肩をすくめる。
『また今度!また今度、ご馳走になるって伝えといてもらえるかな』
シカマル「わかったよ。今度は頼むぜ。どやされんの、俺だから」
そう返すと、名前はふっと柔らかく笑った。その表情につられるように自然と頬が緩む。軽く手を振り、帰ろうと背を向けるけれど、数歩進んだところで足が止まった。気づけば、俺は彼女を呼び止めていた。
シカマル「……あ、えっと……チョウジのこと、ありがとな。それに、悪かったな。あの時、もう少し早く声かけてればよかったんだけどよ」
咄嗟に呼び止めてしまったせいで、探るように言葉を繋げる。言い慣れない言葉は、妙に口の中で引っかかった。名前は少し目を丸くしたあと、ふっと表情を和らげる。
『……私は、本当のことを言っただけだよ。彼は誰よりも優しくて、強い忍。今はその優しさが前に出てるだけだと思う。いつかメリハリがついたら、最強の忍になれるよ』
そう言って微笑んだあと、不意に彼女の視線がこちらへ向く。
『……それに、シカマルもだよ』
シカマル「俺?」
思わず聞き返した。
予想していなかった言葉に、間の抜けた声が漏れる。
『そうだよ。シカマルは、戦わなくても場を収めてた。何が最善かを考える力があるよね。頭脳派だよ。……私なんて、どうやって気絶させようか考えてたし』
冗談めかして笑う姿に思わず肩の力が抜けた。〝頭脳派〟そんなふうに言われたのは初めてだった。くすぐったくて、なんだか落ち着かない。結局、誤魔化すみたいに頭を掻くことしかできなかった。
シカマル「気絶って……おっかねーやつだな。今回みたいに弱い相手ならいいけど、俺らより強ぇ忍なんていくらでもいるんだぞ。気をつけろよ」
『そんなの関係ないよ。私は友達を傷つけるやつは絶対に許さないから』
真っ直ぐな瞳に、一瞬言葉を忘れる。本当に、どんな相手にも立ち向かいそうな眼だ。危なっかしい。
『それに…その時はシカマルが持ち前の頭脳で助けてくれるでしょ?』
不意に向けられた笑顔に思考が止まる。
シカマル「……ハハ。ほんっとお前は面白いやつだな」
思わず、笑いが漏れた。
俺なんかを当てにするなんて、普通なら考えない。
シカマル「俺を頼るなんてよ……まぁ、めんどくせーけど、仕方ねーな。わかったよ。お前が困ったときは、お前が信用する俺の頭、使ってやるよ」
『⁉︎……頼りにしてるよ!楽しみだなぁ。まずは試験を乗り越えようね』
シカマル「おう」
短く返す。それだけで十分だった。手を振りながら離れていく背中をしばらく見送る。あんな約束しちまったしな。少しは頑張るか。そう思いながら、軽く伸びをしたその時だった。
チョウジ「惚れたでしょ」
シカク「惚れたな」
シカマル「ぬおっ!?おめーらいつからいた!?」
驚いて振り返ると、柱の影からひょっこり顔を出す二人。いつの間にいたんだ、と眉をひそめる。
チョウジ「“チョウジのありがとな”あたり」
シカマル「最初からじゃねーか!!」
シカク「いい子だぞ、あの子。よく見てるしな。……逃すんじゃねーぞ。絶対、美人になって強くなるタイプだ」
シカマル「何言ってんだよ親父は!?たく、めんどくせー!」
照れ隠しみたいに頭を掻き、わざとらしく顔をしかめるけれど、胸の奥が妙に落ち着かなかった。今は照れと混乱で聞き流した。
でも、親父の言葉を思い出すのは、もう少し先の話。
あいつが本当に、強くて美しくなった頃のことだ。
