『………あなたは今からサスケとでしょ?私とあなたの試合は決勝だよ。そんな殺気立てて、何かよう?』

背後に殺気混じりの気配を感じ、その人物に声をかけると彼はゆっくりと姿を現した。

ｶﾞｱﾗ「………」
『⁉︎』

突然砂が私を襲った。まさかこんなところで仕掛けられると思っていなかった私は、簡単に捕まり壁に縫い付けられる。

『いっ…っ用があるなら口で言って!』

ｶﾞｱﾗ「……………」

我愛羅は何も言わずゆっくりと近づいてくる。

ホルスターから起爆札を取り出そうと少しずつ手を動かしたが、気づかれ右手に砂がまとわりつく。その時砂から微かに香った血の匂い_____


『あなた、また人を殺したの』

ｶﾞｱﾗ「ああ」

『⁉︎っ…どうして!どうして、あなたは簡単に人を殺すの!人の命をなんだと思ってるの‼︎』

ｶﾞｱﾗ「俺が生きている証だ」

『証…?』

「俺は6歳の頃からこれまでの6年間、実の父親に幾度となく暗殺されかけた。そこで俺はなんの為に生きているのか考えたが答えは見つからなかったがこう結論付けた。他者を殺すことで自分は生きているのだと思えばいいと。俺は生きている証として他者を殺す…。

だがお前の存在が俺を狂わせる。

不思議な感覚だ…初めてお前を見た時苛つきを覚え、お前が飼ってる化け物に喜びを覚え、その後妙に心が落ち着いた。

それからだ、人を殺す時お前の顔が浮かぶ…………………お前は一体何者だ」


『貴方もしかして…カハッ⁉︎……く、るし……』

突然彼は頭を押さえ情緒が乱れたように話していた。不思議と彼が助けを求めているように感じ、声をかけようしたとき、彼が顔を上げ瞳が重なる。そのとても冷たい瞳にゾワッと鳥肌がたつ。

彼が拳を握ると砂が私の体を締め上げた。今さっき試合で力を使った反動で次に、あの力を使えるのはあと15分後……。無理に使おうとすればもう1人の私に乗っ取られてしまう恐れがあった。


ｶﾞｱﾗ「お前は、俺のなんなんだ」

悲しそうな声でそう言った。
顔を掴まれ彼の顔がゆっくりと近づいてくる。


『っ⁉︎』



〝…………………〟
『えっ……』












『はっ!はっ!はっ!』

身体の痛みに顔を歪め、左目尻の黒斑が消える。
一瞬だけ、無理矢理力をひきだし砂の拘束から抜け出す。しかし、立っているだけで、もう体は動きそうにない。私は現状を乗り切る策を必死で考えた。

ｶﾞｱﾗ「まだ力が残っていたか。だが今ので最後の力のようだな」

『はっ、はっ、…それはどうかな』

ｶﾞｱﾗ「強がりはよせ、立っているのもやっとなんだろう。俺がお前に抱く感情がわからない…だからもう考えるのはやめた。いつものように俺の障害となるものは殺す」

我愛羅が手をあげると瓢箪から出てきた砂が私を襲い、もうだめだとそう思ったとき誰かが私を包み込んだ。



ｶｶｼ「ほんとに手のかかる教え子だ」

『か、かし先生…』

ｶｶｼ「もう大丈夫だよ。で、どうゆー状況かなこれ？」

怒っている。

口調から感じ取れないが、カカシ先生が我愛羅を見つめる瞳や雰囲気からは殺気の混じった怒りを感じた。こんなに怒っている彼を見たのは初めてかもしれない。

ｶﾞｱﾗ「ズキッ⁉︎……くっ、貴様も守るのか……まあいい、あいつも殺して、、次にお前も殺してやる」

ｶｶｼ「この状況見てはい、どうぞって行かせると思ってるの?」

ｶﾞｱﾗ「好きにすればいい。こんな試験、俺にはどうでもいいことだ」

『…カカシ先生、私は大丈夫だから。私から喧嘩をふっかけたの』

ｶｶｼ「あのねそんな嘘……わかったよ。君、我愛羅君だっけ?今回は見逃すけど次はないと思ってね」

ｶﾞｱﾗ「……」


我愛羅は何も言わずに階段を降りていった。カカシ先生が来てくれて助かった、もし誰も来なかったらと考えると私に何かできたのだろうか。

『ありがとうございます………あの、降ろしてください』

助けてくれた彼にに礼を言ったあと、お姫様抱っこをされているため降ろして欲しいとお願いしたのだが「ん？」とにっこり笑って私を見た。

私の中で危険信号が鳴る。この笑顔は危険だと。

ｶｶｼ「降ろして立てるの?歩けるの?さっきはなんで嘘ついたの?俺が間に合わなかったらどうなると思ってたの?」

『⁉︎』

怒涛の質問。笑顔ではあるが全く真逆の圧を感じる。

『あ、えっと………サスケはあいつを意識して修行してたから私の些細な問題でサスケの楽しみを奪いたくなかった。だから…ごめんなさい』

ｶｶｼ「………些細なって…全然些細なことじゃないんだけどねー。ま、お前の気持ちはわかったよ。…けど、頼むから自分の身体を大切にしてくれ」


私の身体を労ってか、彼の手に少しだけ力が込められた気がした。

〝嬉しい〟

教え子だからだろうけど、彼がこんなにも心配してくれるのがシンプルに嬉しかった。

『…ごめんなさい。それとお願いが…あいつとサスケの試合が見たいから…観客席に行きたいなーって思ってたり』

ｶｶｼ「……ほんとにお前は」

呆れられた顔で見られた。
それに一瞬、我愛羅にヤられそうになったときに聞こえた声が気になっていた。こんなことをされても、私は彼のことが嫌いになれなかった。





ｶｶｼ「はい、これお土産」

『なにこれ………栗羊羹?』

ｶｶｼ「お前好きでしょ」

『……….好きです』

ｶｶｼ「…その間はなに?もしかしてそんなだった?」

『普通ですね。一回しか食べたことありません』

ｶｶｼ「えっ、そうなの?」

そう言って困った顔をするものだから私はありがたく受け取ることにした。どこから私は栗羊羹が好きだと聞いたのだろう。