そのままの君で
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シャイニング事務所所属のアイドル、二階堂静です。
わたしには今、眠れないほどの悩みがあります。
それは…親友と縁が切れたことです。
そのままの君で
大切な親友のはずだった。
幼い頃から実家が近所で、お互いがお互いのことをわかっていると思ってた。
働き始めて離れてしまった今でも、連絡を取り合えば悩みを打ち明けあったり、他愛もない話をしたり…心は繋がってるって、そう思ってた。
なのに別れは突然だった。
ここ数年、何度か性格の不一致が原因で喧嘩をすることが多くなっていたけど、ついに向こうに限界が来てしまったのかもしれない。
それに気がついたのは一ヶ月ほど前のこと。わたしは彼女から何も知らされることがなく、なんの前触れもなく全ての連絡手段をシャットアウトされていた。
ついこの前まで、お互い休みを合わせて旅行に行ったばかりだったのに。楽しかったはずなのに。
「どうしてなんだろう…」
「……………」
目の前にいる聖川くんは真剣にわたしの話を聞いてくれている。
学生時代から交流のあった聖川くんとは、最近お付き合いを始めた、いわゆる彼氏というやつで。
わたしが話したいことがあると言うと、彼は忙しい合間を縫って個室の料亭を予約してくれた。
こんなこと、付き合い始めた彼氏に言うことでもないかもしれないけど、メンタルの弱いわたしは、そのことが気になって仕事中もボーッと過ごしてしまうことが多くなり、この前の収録でもディレクターさんに注意を受けたばかりだった。
「…そうか。それは難儀なことだな」
「…うん…本当に突然のことだったから…わたし、何かしちゃったのかな…」
「なにか、そうさせてしまうようなことは過去になかったか?」
彼は優しく、わたしに語りかける。
「…ここ数年、性格の不一致が原因で喧嘩が多かったって話したよね…?聖川くんも気がついてるかもしれないけど、わたしって人にものをハッキリと言えない性格で…それに比べてその子はとってもハッキリした子なの。それでわたしはその子から何度も何度も、言いたいことハッキリ言わないと伝わらないよって言われてきて…もちろんその度に直そうとしたんだけど…やっぱり直らなくて、また言われての繰り返しで…」
「…そうか…」
「わたしがハッキリ言わないから…向こうも疲れちゃったのかもしれない…」
わたしが一通り話終わると、聖川くんは温かいお茶をわたしに注いでくれた。
自分の湯のみにも茶を注ぐと、それを一口飲んで彼は言った。
「…二階堂、お前は何も悪くない」
「え…?」
「お前は本当に優しい女性だ。…長所と短所は紙一重というが、ハッキリと物が言えぬのもお前が友人思いで心優しいからだ。性格を無理に相手に合わせることはない。それではお前が辛いだけだ」
聖川くんは優しい笑みを讃えて言った。
「俺はそのままの二階堂が好きだ。お前が変わる必要はない」
「聖川くん…」
ここ数ヶ月、重たかった心がスっと軽くなった。
そのままのわたしが好きだと言ってくれる人がいたんだ。
向かいに座っていた聖川くんは立ち上がり、わたしの隣へと腰を下ろした。
そしてわたしの手を優しく握ってくれた。
「…お前のその優しさを好きだと言ってくれる者はたくさんいる。そういう人を大切にすればいい」
わたしはそれが嬉しくて、ついに抱えていた苦しみが涙になって溢れた。
そんなわたしの傍で、聖川くんはずっと手を握ってくれていた。
聖川くんの手は、わたしの寂しさを包み込むような温かさだった。
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あれから数ヶ月。
わたしとかつての友人が連絡を取り合うことはなくなってしまったけれど、今はもうそれを気にすることはなくなった。
周りを見れば、わたしを大切に思ってくれる人達はたくさんいた。
人間、出会いもあれば別れもある。
でも、聖川くんのあの言葉はわたしを救ってくれた。
わたしは、わたしを思ってくれる人を大切にしていこう。
聖川くん、そのままのわたしを好きだと言ってくれてありがとう。
わたしもそのままの貴方が大好きです。
(END)
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