あなたのことが
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「どうも。お世話になってやす」
「…あのねえ…」
翌週の月曜、早速彼は書類の束を持って現れた。
結局その週も二回、さらにその翌週は三回と、絶え間なく彼は警察庁にやって来ては、俺のモンになれと迫ってくる。
わたしの日々の残業や疲労はほぼほぼこの子に責任があると言っても過言ではない。加えて年上の女をおちょくってくるのだ。
この子さえきちんと職務を全うしてくれれば、こんなことにはなっていない。
「楓さん、いい加減俺のモンになる覚悟はできやしたか?」
我慢の限界が来てしまったのかもしれない。
「…沖田くん。貴方がこの先何度わたしを口説こうが知ったこっちゃない。でもわたしは貴方とお付き合いする気は一切ないわ。それにこの書類も迷惑なの。そのせいでこっちは残業続きもいいとこよ。嫌がらせならいい加減にしてちょうだい。ここは子どもの遊び場じゃないの。わたしは江戸を守る警察組織の一員として本気で働いてる。貴方の遊びに付き合ってる暇はないの。だから…もう来ないで」
いつものうるさい彼はどこへやら、黙ってわたしの言うことを聞いていた。すると彼は少し間を空けて
「わかりやした。楓さん、今まで迷惑かけてすんませんでした」
そう言いながら、わたしに頭を下げてきた。
わたしはそれを一瞥し、警察庁のオフィスに入った。
エレベーターのボタンを押し、チラリと後ろを振り返ると、沖田くんはじっとこちらを見つめていたが、気が付かないふりをして到着したエレベーターへと乗り込んだ。
「(沖田くん、なんかいつもと違ったわね。さすがにちょっと言いすぎたかしら…)」
一瞬そのようなことを思ったが、この年齢になって徹夜での残業はしんどいものであった。
それにいい年した大人が十も下の男に恋愛絡みのことでからかわれているのも癪に障る。
これでよかったのよ。
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