片思い
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どうしてあなたは、こんなにも優しいの?
優しくしないで
期待してしまうから
片思い
わたしは生まれつき全盲だった。母の胎内にいる時に、母が病にかかった影響だと聞いた。
そんな境遇からか、聴覚と嗅覚に関しては人一倍敏感になっていった。
寺子屋に通っていた頃から、わたしのことを気味悪がる子はたくさんいた。わたしの耳はそんな小さな悪口も拾ってしまうから、自然とわたしは人と距離を置くようになっていった。
そんな幼少期を過ごしたせいか、大人になった今も親しい友人は一人もいない。
両親にも先立たれ、今は年の離れた弟と二人で暮らしている。
弟とは十以上も離れているため、今は弟を養うので精一杯だ。
生まれつき全盲なので、人に助けてもらわなくてもある程度のことはできる。それが唯一の救いだった。
「い、いらっしゃいませ…」
「楓ちゃ〜ん、もっと大きな声で!!ハイ!」
「い、いらっしゃいませッ!」
「そうそう、よくできました。その調子で頼むよ〜」
元々貧乏だった我が家は、両親が遺してくれた遺産が少なかったため、それだけで生活していくのは困難を極めた。結果、わたしは手っ取り早くお金を稼ぐために、水商売を始めることにした。
しかし目の見えない引っ込み思案な女など、どの店も雇ってくれるはずはなく。やっとの思いで働き始めたのが、このスナックすまいるだった。
「はあ…頑張らなくちゃ…」
「あら、楓さんてばこんなところにいたのね」
「お妙ちゃん…」
声をかけてきてくれたのは、このすまいるのナンバーワンキャバ嬢のお妙ちゃん。一度顔を触らせてもらったことがあるけど、かなりの別嬪さんであることは間違いない。
わたしより年下なのに面倒見がよくてしっかりしていて…とある常連のお客さんには当たりが強いけれど、芯のしっかりした女性。
「今日はまたあの忌々しいゴリラが来るみたいなの…それでね、今日は少し大所帯だから楓さんにヘルプに入ってもらいたくって」
「そうなの…?わたしなんかで大丈夫かしら…」
「大丈夫よ!ヘルプって言ってもお話してもらうだけだし、あなたのことを見てとやかく言うような人達ではないから、安心して?」
お妙ちゃんはわたしを安心させるように肩に手を置いてそう言ってくれた。
「うん、わかった。わたしでよかったらお手伝いさせてもらうね」
わたしはもうすぐ見えるというその方達を迎えるために、お妙ちゃんとテーブルについた。
「お妙ちゃん、今日お見えになるのっていつもの近藤様?」
「ええ、まあそうなんだけどね?珍しく幹部も連れてくるって連絡が入ったのよ」
真選組の幹部か…近藤様のことはお妙ちゃんづてに名前しか知らない。それに真選組ってあまりいい噂を聞かないし…少し怖いかも…
「そんなに縮こまらなくて大丈夫よ。何かあったらわたしがぶっ飛ばすから」
「は、ははは…」
お妙ちゃんなら本気でやりかねないな…
そうこうしている間に店内が少しざわざわとしてきた。どうやら真選組の方達がお見えになったようだ。
「お妙さーーん!お待たせしましたアアアア!!!!!ぶべらッ」
そんな叫び声と同時に鈍い音がした。ガッシャンとグラスや瓶が割れる音もした。どうやらいつものお妙ちゃんと近藤様のやり取りが始まったようだった。
お妙ちゃん、わたしの存在忘れてるよねコレ…
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