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恋はきらめき、繋がるは 恋慕


その夜のことを思い出す。

…髪を…触らせるなと言われた夜。


・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥


「あ、んっ」
乱れたからだが飛影の腹の上で、頼りなく揺れた。

ガシ、と掴まれた蔵馬の肢体は、飛影の上で、汗にまみれていた。


「あっ…」
下半身の中心を撫でると、蔵馬は甘い声を響かせた。

震えるのは腰だけではなく、腕も同じだった。


「こんなの…いやっ」
見えない。

…蔵馬は黒い目隠しをされて、飛影の腹の上にいた。


飛影の腹を跨ぎ、蔵馬の腰が艶めいていた。

額から流れた汗が、目隠しに染みていた。
さんざん飛影にいじられた襞は、グチュ、と言う指の感触を、
あっさりと飲み込んでいく。

はあはあと、熱い息を吐くと、蔵馬はねだるように
飛影を見下ろした。

救いを求めるような瞳。
それでも、飛影は甘い言葉を吐かなかった。


「ああっ…あ、ついよ」


前が見えなくなり、跨っている飛影の腹で、蔵馬は
求めるように飛影を見た。
それは、懇願のようだった。


「もっとだ」

「あっ、あんっ…」
激しく掻き回すような飛影の指先。

さっきまで蔵馬の口を掻き回していた指先は、今は
その襞を、掻き分けて、ぬめる奥へと、這っていく。

高ぶったまま、熱を打ち付けるように飛影は、指先を
こねていた。

「あっ…はっ…」
こんな飛影は初めてで。

いつもは、もっとゆっくりと撫でてくれるのに。

漸く会えたと思ったのに。


飛影は激しかった。
黒い目隠し、うっすらとでも飛影が見えれば、
少しは安心できるのに。


今は手を繋いで愛撫をしてくれることもない。

寂しさと飛影についていけない迷いが蔵馬を取り囲む。


「あっ……!やっ!」


中を割り込み、半分しか濡れていない襞が、違和感を訴えた。

ぐいぐいと、飛影の指は入ってきた。

目隠しの下で、蔵馬は飛影の瞳を探した。

確かに下に見えるはずなのに、確かに飛影は自分を見ている
はずなのに。
だって視線は感じる。

「髪…」
「あっ…な…にっ…」
それでも、飛影の熱に逆らえはしない。
蔵馬のからだは確かに、飛影の全てを求めていた。

ジクジク、下半身から湧いてくる甘い欲。
胸の突起が、物欲しげに立ち上がっていく。


「髪…なんのことっ…! 」
悲鳴のようなので声が上がった。

膨らんでいた蔵馬の先端を、飛影の片手が塞いでいた。


ドクンと弾けるような高まりを見せていた
それは、熱を逆流させていった。


「あ、あ! 」
身体中を駆ける衝動に、蔵馬はただ涙を流していた。

下半身から、外へ向かう苦しさがとどまることを
知らず蔵馬の頭の中まで意識を奪っていく。
濁流にのまれる感覚。

押さえられた先端が、膨らんだまま苦しく唸っていた。
「や…あ……ぁ……」

もう、全てを手放したかった。

飛影の苛立ちを探るよりも、そこから蔵馬を支配する
ものから解放されたくて。


身体は火照っているのに、指先が冷たくなっていく。


「わからないのか」
苛立ちは愛しさを上回り、蔵馬の先端を塞いだ
手に力を入れた。


「…おしえてっ…あっ…」

苦しさも、こんなもどかしさも、飛影だけが教えた。

「傷んでいた、髪」
ハッと、蔵馬は口を噤んだ。

髪の先が…傷んでいる。


肩にかかるその先が。飛影は何に苛立っているのか…。



解ったのだ。隙を見せるなと、何度も言われた言葉が蘇る。

いつも触れる唇と同じ熱さの言葉だったのに。

「あっ……」
燃えるような瞳が、蔵馬のからだを射ぬいていく。

長い睫毛が僅かに揺れた。


何度も、蔵馬は頷いた。

「わかったか」
「あっ……ん!」
先端を解放すると、蔵馬の腰が、倒れていた。


解放された欲は飛影の腹を濡らし、蔵馬は仰向けに倒れていた。



「触れさせない…」
縋るように伸ばされた手を取り、飛影のからだが重なった。




飛影は、見ていた。人間として暮らす蔵馬が、そう簡単に、周りの人間を拒絶できないことを知っていた。

だけど、理解は…出来ない。
見るだけでむくむく湧き上がる、怒りに似た衝動。

取引先のやつに、肩や髪を触られても、そう簡単には
突っぱねることが出来ない蔵馬を見て苛立ちと怒りが混ざり合う。

飛影の言葉の意味を繰り返す蔵馬の中に…頭に駆け巡る記憶が…。


武術会の途中にも、身体に触れさせるなと言われた。鴉戦の前。




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