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Blue energy -being hidden- 嘆きの風



「おい。乗り換えだぞ」
「ん~~…」
ぼんやりと、蔵馬は目を開けた。


ここで乗り換えだ。
海辺の街はとうに去っていて。隙間なく並ぶ、都会のビルが見えていた。

乗り換えをした電車で、あといくつかで蔵馬の
マンションのある街だ。




もう、都会の街に行った人たちで混み合う時間だ。

紺色の空の下、二人はゆっくりと歩いていた。
繁華街はとうに過ぎていて、蔵馬の家のある街は、
今は遊び疲れた若者がノロノロと歩いているだけだった。


駅前から自動販売機しかない道を、二人並んで歩いていく。
海辺で力を使い果たしていたのか、蔵馬の瞳が
落ちそうになっている。


ぎゅっと、イルカのぬいぐるみを脇に抱きしめて
蔵馬はあくびを堪えているようだった。




もう風も冷たい中、首の下で、貝殻のネックレスが、
カシャンと音を立てた。


あ…
飛影が作ってくれたんだ、と、それが不思議な温もりだった。
首元から暖かくなるような感覚。


夜の風の冷たさなど、消えてしまったように、
身体が熱くなっていく。


ぎゅっと、蔵馬は飛影のシャツを掴んだ。



「どうした…」
ふと見た蔵馬が俯いていたので、飛影は思わず問いかけた。

イルカのぬいぐるみを片手で強く抱いて、
蔵馬は立ち止まった。

そのときだった。


「飛影様!」
通行人の小さな足音しか聞こえない待ちの中、
荒い息が、聞こえた。



ハッと蔵馬が身を固くしたのが分かる。

ピリピリとした蔵馬の空気。


この感じを、飛影は知っている。


「飛影様!」
もう一度声がした。


百足の使いの者だ。

何かが起きていたのだ。魔界で。

イルカのぬいぐるみを、蔵馬が、汗が滲むほど
強く握りしめた。




「お戻りください!今子供の人間が一気に穴から落ちてきて!」
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