夢幻 震える夜を溶かしてよ
蔵馬は飛影を見て、そして
「…!」
勢いよく唇を重ねた。
「んっ」
伺うようにして、自ら舌を重ねてみせる。
じっと飛影を見詰めて、おどおどと舌を口内に入れて…
「んうっ」
絡ませようと必死になった。
が、
「っ!」
飛影の舌に届くか届かないかのところで、怯えたように
止まってしまった。
「んう…」
「いい」
蔵馬の顔を離すと、そう言ってやる。
「無理するな」
「だって…だって」
噛み締めて、続ける。
「あなたが一番って、示したくて…」
瞬間、疼きが飛影を襲った。
ああ、と。解った。今更。
飛影が来たときの怯えた表情。
疑われるのかもしれないと思ったのかも、しれない。
そんなわけ、無いのに。
衝動が飛影を襲って、
「あっ!」
きつく、飛影は肩口を吸い上げた。そして首筋に舌を動かして、
また吸い上げた。
「はっ…あっ」
「いいか、信じろ。俺が、お前を離さない」
舐め上げて胸飾りをくわえ込む。
「やっ」
「嫌じゃ、無いだろう」
こう言う時だけ、甘い声で、ずるい。
強引で、ずるいと、片隅で蔵馬は思った。
「あんっ…んふ…」
ピチョ、と音がするくらい何度も何度も二つのそれを吸う。
「あつ…」
白い指が飛影の肩に触れる。
熱い、と想った。いつもより熱い。でもなにが。
解らない、もしかしたら、自分の体かもしれないけど、
飛影の体かもしれない。
座り込んで、蔵馬はそうっと両腕を伸ばす。
「あっ」
ぎゅ、としがみついて声を出した。飛影は怪訝そうに蔵馬を
見たが、何も言わなかった。
ひえ、いだ、と、蔵馬が想った。
この腕の強さ、男としてもっともっと、内に秘める強さを、
からだが示している。
鍛えている腕は、蔵馬を世界の他の誰からも遮断するように
感じられて。
広い背中は、所々に見える傷跡さえも、魔界での強い
飛影の力を示すようで。
少し会わないだけでこんなにも、変わっている。
―蔵馬は知らない。
時折、蔵馬の顔を浮かべて、それを振り切って
鍛えていることなど。
そこまで考える余裕は、無かった。
「ふ…」
ゆっくり飛影の背中をなぞる。白い指先がなぞるたび、
飛影のからだはビクッと反応した。
蔵馬は気づいていないが、吐息は肩にくすぐったく
降り立つのだ。
「もっと、--てよ」
飛影が聞き返そうとして、蔵馬はそれ以上は直ぐに
口を瞑った。
繰り返したくは無い言葉。
もっと、俺に溺れてよ。一瞬だけ、蔵馬は鋭い瞳になっていた。
強く、飛影の肩にしがみついて飛影の胸を舐め上げる。
俺以外の世界の全てを、拒絶して欲しい。
あなたは、あなたは俺の、もっと離さないで。
もっと欲しい。俺はあなたの-。
いつでも、感じられるように今は、欲しいだけ、ください。
誰の気配からも、守って。