夢幻 震える夜を溶かしてよ
その時気づいた。
くん、と嗅いでみると、覚えの在る妖気があった。
黄泉、あの、蔵馬の昔の知り合いだ。
抱きついてきた蔵馬の、縋りつく細い指はすぐに
飛影の背に回って、しがみ ついてきた。
そうか。
そう言う、ことか。
ふ、ん。蔵馬には気づかれない角度で、飛影は嗤った。
無駄なことを。
―こいつを奪えると、そうとでも思っているのか。
おこがましいことを。
腕の中の、小動物のようなものを撫でながら、
燃える瞳を送る。
―自分以外の世界の全てに。
ふん、と、蔵馬の背に腕を回した。
小さな顔をするりと撫で、髪を撫でる。
「来い」
言ったくせに、飛影はグイ、と蔵馬の腕を引っ張っていた。
・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥
ゆっくりとシャワー室の床に蔵馬を下ろすと、
飛影は蔵馬のシャツのボタンを外し始めた。
「やっ、ちょっと…」
プチンプチンと言う音が耳に響く。怯えるような蔵馬
を宥めるように撫でると、
「大人しくしていろ」
と囁く。
びくん、と体が跳ねて、蔵馬が大人しくなった。
全部を外すと、そうっと、下を脱がしていった。
「ひ、えい…?」
成り行きと意図がわからず、ただ流されるように
飛影を見上げる。
いつの間にか、生暖かいシャワーが流れていた。
床に置かれたシャワーは、蔵馬から少し離れた
ところに流れていた。
するすると下を取り去ると、シャツを腰までおろして、
一気に蔵馬を引き寄せた。