夢幻 震える夜を溶かしてよ
ここに飛影がいることが不思議で堪らない、そんな言い方。
どうしたと、言われても、正直、返す言葉は無かった。
「来ては、いけないか」
怒りでもなく、淡々と聞いてみた。
この不安定な感じは、一体なんだ?
「そんなこと-」
無い。
だけど、余りにも不意打ちで、どんな顔をして飛影と
対峙すればいいか、わからない。
ただ、ただ--
「-っ!」
次の瞬間、飛影がよろけた。ただ、鍛えている身体は
蔵馬のふわりとした感触を吸収するように受け止めて堪えた。
前に会った時よりも逞しくなったからだが、それを受け止めた。
飛影の筋肉にふわ、と入り込んできた蔵馬は、同じ生き物には
思えなかった。
-蔵馬は、飛影に抱きついていた。
これもまた予想外の行動に、一瞬押されかけた飛影が
蔵馬を受け止めて腕に収める。
柔らかい感触が、直に飛影の腕に伝わる。唐突な行動に、
飛影はされるがままだったが、直ぐに気づいた。
-震えている。小さく震えているのは指先だけだった。
強がりの中の繊細さが、そこだけに伺えた。