2.チェリー・ブロッサム~印象的な出会い~




少しの間呆けていたが、今自分が置かれている状況を確認することに。


まず座りっぱなしだった水の中で立ち上がると、水位は膝ほどの高さまでしかなくどのように流されてきたのか不思議に思えた。


次に水面に映った自分の姿を見つめる。


そこに映るのは風呂掃除していた状態、部屋着の七分丈の黒シャツに膝までまくりあげたグレーのスウェット、素足のままの自分だった。



「姿が変わるようなファンタジー要素は存在しなかったか。」



外見が変化していないことに安心した俺は、右耳のピアスのことを思い出して耳たぶを見た。


だが、手にはピアスを握っているにもかかわらず右耳たぶには何故か赤いピアスがついたままだった。



「…え。何でついてんの、握ってるコレはピアスじゃないなら、…何?」



自分が握っている物を見るのが徐々に怖くなってくる。


そういえばピアスを掴んだ時に違和感を感じたが本当に違う物を掴んだからだったのか…?


そう考えながら恐る恐る握っていたものを見てみると、手のひらに乗っているそれは耳についているピアスと似た形の赤い石だった。


ただし赤い石は大きさがピアスの2倍ほどある。


握った時の違和感はピアスと大きさが違うことから生じたものだった。



「この石、何…?宝石?透き通ってるな…。」



キレイなその石を日に当ててみると透き通った赤、もっと言えば緋色と称されるような濃い赤色をしていた。



「でも本当何なんだコレ、俺のじゃないし、かといってロドのでもないだろうし…。


…じゃ、なくって。その前にここどこなんだってマジで。」



目先の石に気を取られていたが、今はそれより状況を把握しなければ。


石を透かした際に太陽があったということは間違いなくここは外なのだろうけど。


辺りを見渡したら(というか見渡さなくても既に)木々しか視界に映らないため、ここが自然豊かな地だということは分かった。


自分が立っているのが浅い池?泉?のような場所だということも。



「山…というよりは森っぽいかな?あー、でも方角分かんねーや、どこ行ったらいいんだろ。」



こうも木しか見当たらない場所ではどこへ向かって行けばいいのか見当もつかない。


寧ろ闇雲に動いて迷うくらいならこの場から動かない方が身のためなのだろうか。



「方位磁石なんて持ってないし、スマホも置いてきたし…。


あ、腕時計の時針と太陽の出ている向きから方角でも割り出してみるか?」



方角が分かれば探索もしやすくなるだろうと思い立ち、水から上がった俺は腕時計が動いていることを確認して太陽を見上げた。





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