1.ハンター~予期せぬ出来事~
思い出せずにモヤモヤしたままスマホをいじってると、タイミングよくロドからLINEが届く。
「んーっと、
『もう帰ってる?』
『もし余裕があればでいいんだけど』
『お風呂掃除しておいてほしいな❤』
…あーっ!!!!」
これだ!忘れてたこと!
ここ数日時間がなかったから、仕事が終わったら今日こそ掃除しよう!って昨日意気込んでたんだった俺!すっかり忘れていた。
「ロドがLINEくれて助かったー。」
でなきゃ風呂入る頃まで気付きそうになかった。
思い出させてくれた感謝の代わりに、LINEに付いていたハートマークには目を瞑ろう…。
返信にもデレ要素的に良い笑顔のスタンプを貼ることにした。
「『掃除しようと思ってたの忘れてた!』
『お陰で思い出したわ、サンキュ』
…と。スタンプは…これでいっか。」
そうして返信し終わった俺は、スマホをソファーに放って早速風呂掃除をしに浴室へと向かうのだった。
風呂場の換気扇が全開なことを確認するやいなやすぐに掃除に取りかかった。
決して長期間放置したわけではないためカビもほとんど発生していないのだが、それでもこまめに掃除するよう心掛けている。
風呂は仕事で疲れた心身を癒す場なのだからストレスなく最大限活かしたい。
「…?
あれ、いつの間にピアス落としてたんだ?」
浴槽内をため洗いしようと水を張っている時、足元に赤く光るものが見えた。
俺の両耳にはいくつもピアスホールが開いており、その中でも右耳たぶの中央には昔から赤いピアスをつけている。
だからそのピアスが気づかぬ内に落ちてしまったのだろうと思ったのだ。
「年季入ってるからかなぁ、無理もないか。」
キャッチがダメになったんだろうな、やれやれ。
俺はそう零しながら足元の赤い光に向かって手を伸ばした。
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