1.ハンター~予期せぬ出来事~
―数時間前
ジリリリリr バシ…
部屋にけたたましく鳴り響く目覚ましを寝起きで力の入らない手で止めた。
これがこの物語の主人公である俺、緋谷李人の1日の始まり。
「あー、ねみぃ…。」
のそのそと自室のベッドから抜け出しながら本日の第一声を放った。
就寝2時の起床5時ってなんなんだ、ふざけてんのか。
昨晩仕事が長引いたせいですっかり寝不足な俺は、少々頭をフラつかせながらもあらかじめ用意しておいた服に袖を通しながら時計を見た。
「ロドは…、ハァ?!あと2時間は寝てられんじゃねーか!シッ…」
おっと危ない。
在住しているアメリカの、しかも幼い頃よく行き来していたスラム街に馴染みすぎたせいか控えようとは思っているのだがついついスラングが口をついてしまいそうになる。
今回は途中で気づいたのでセーフ。
ちなみにロドというのは幼い頃から世話になっている小児科医師のホセ・ロドリゲスという俺にとって保護者のような男だ。
俺が現在アメリカに来ているのは自分の仕事の他に、彼の仕事(医師ではない方)をサポートするためだったりする。
「さてと、用意するか。」
着替え終わった俺はそう独り言ちると、部屋から出て歯磨き・洗面を済ませて台所へ向かった。
家賃の代わりに家事全般を引き受けることを条件に居候しており、毎朝ロドより早起きして朝食を作っているのである。
いつもはここまで早起きすることはないのだけれど、今日は朝早くから仕事で出かけるため5時起きするはめになってしまった。
くそぅ、仕事開始時間がもっと遅ければ…、なんてボヤきながら調理していく。
メニューは決まって日本好きなロドに合わせ和食だ。
んー、アメリカのリビングにはなんともミスマッチ…。
「よしっ、完成!」
手早くロドの分の朝食を作り盛り付け終えた。
俺は食欲が湧かないためいつものように食パン1枚という、なんとも簡素な食事をしつつ自分の仕事の準備に取り掛かった。
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