2.チェリー・ブロッサム~印象的な出会い~




そういえば、この宿付近にウェラーさんの榛色の愛馬(ノーカンティーというらしい)を停めていたが、その前に先客の青毛・白毛の馬が停まっていたな。


ということは、この宿の中には馬に乗ってきた人が2人以上いるってことだ。


一体どんな人物が中にいるんだろう。


ウェラーさんと同じ国の人なのか。


その人たちも軍服を着てるんだろうか。


そんなことを考えながら、俺はウェラーさんが開けてくれたドアを潜り抜ける。



(この小屋、外からだとちっさく見えるけど意外と奥行あるんだな。)



宿の中を見渡すと、奥にやや小柄な人影が2人分目にとまった。


部屋に近づくにつれてはっきりしてくる人影と、同時に聞こえてくる2人の声。


片方が元気な青少年らしい声、もう片方はやや高めなボーイソプラノだった。


恐らく両者とも男の子なんだろう、そう予想して部屋の入り口付近まで行くと、…足を止めた。


いや、止めたというよりは止めざるを得なかった。


なんなら止まってしまったと言った方が正しいかもしれない。



「…あの、ウェラーさん。」


「どうかされましたか?」


「あのー…、そこのベッドの上で仲睦まじくお話しされてる青少年たち(見た目観測)は一体…?」


「あぁ、あの2人お付き合いされてるんですよ。」


「え、あぁ、へぇー、最近噂の男の子カップルってやつかぁ、なるほどねー。」


「そうなりますね。」


「…いや違う、訊きたいのはそういう意味の”一体?”じゃなくて!」


「おや、違いましたか。」



ウェラーさんはなんだか胡散臭い笑顔を浮かべてややズレた回答をくれた。


違う、そうじゃない。


とかしゃべっている俺らに気づいたベッド上の2人が、じっとこちらを見ている(こんだけ堂々としゃべってたらそりゃ見られるわ)。



「えーと、どうもお邪魔してま」


「っあああぁぁ―――っっ!!!」


「っえ!何?!」ビクッ


「うわっ!いきなり耳元で叫ぶなバカユーリ!」


「どうかしましたか、陛下?」



ひとまず挨拶を、と声をかけたらいきなり黒髪学ランの(元気な声の持ち主の方)青少年が突然叫びだした。


し、心臓が止まるかと思った!どうしたんだよ青少年?!と驚いた俺の感想を代弁するように、それぞれが疑問を口にした。


だが学ラン少年は俺らを驚かせた自覚がないのか、はたまた自身が驚きすぎてこっちの声が届いていないのか、…多分後者だろう。


真っ黒な瞳を真ん丸にしてじっと俺を見たまま、叫んだ時の状態を維持して固まっていた。


ビックリしすぎて俺のこと指差しちゃってるな、本当にどうしたんだろう。


…あれ、そういえば黒髪黒瞳な学ラン青少年は、もしかして日本人?


でも彼が話したのは日本語でも、かといって英語でもなく…、ドイツ語?にしても若干違った気が…。


ソプラノ少年も黒髪くんと同じ言葉だったような…、どこか知ってる言語なんだよなー、どこで聞いたんだっけ…。



「っ、Rehiteリヒトさんですよねっ?!俳優の!!」ズイッ


「…ん?


君、俺のこと知ってんの?」



身を乗り出して、なんて勢いではなくキラキラした瞳をこちらに向けてぐいぐい迫ってきた。


わーお。



「もちろん!!!


俺Rehiteさんの大ファンなんですっ!!」


「え、そうなんだ?


ありがとう!


同性でこんな熱心なファンってあんまりいないから嬉しいよ!」



なんだか青少年の一生懸命さが可愛くて、つい頭にポンポンと軽く触れるとカチコチに固まってしまった。


ヤベ、こんな子供扱いされたら嫌だよな、なんて少々罪悪感を感じていると、突然ボーイソプラノが耳をつんざいた。





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