2.チェリー・ブロッサム~印象的な出会い~




正直聞きたいことは山ほどあるけど、詳しい話は後ですると先手を打たれてしまっているため後回しだ。


とはいえ男のことを何と呼べばいいのか。


移動しながら自己紹介しあうくらいなら許容範囲内かな。



「なぁ、アンタの名前訊いてもいい?俺は緋谷李人。」


「すみません、まだ名乗っていませんでしたね。


俺の名はウェラー卿コンラートといいます、以後お見知りおき下さい。」


「ん、よろしく。」



…アレ、この人俺より年上に見えるのにめっちゃタメ口で話しちまってたな。


寧ろ彼、ウェラーさんの方が敬語で話してるし…、とんでもなく失礼なヤツだと思われたんじゃね…?


なんて、そんな俺の焦りは露知らずウェラーさんは目的地へとまっしぐらに馬を走らせていた。










走ること数時間、日が落ちかけた頃に目的地へ辿り着いたようでウェラーさんが馬の足を止めさせた。


途中何度か休憩を入れようとしてくれていたのだが、



「急いでるならそんなに休憩入れなくても大丈夫だから、目的地まで先を急ごうぜ。」



という俺の発言に乗ってくれたお陰で彼が予定していたよりも早く目的地に辿り着くことが出来たらしい。


…とはいえもう日が落ちかけてるんだよな、本来ならいつ到着する予定だったんだ…?


ちなみにその時の発言の裏には、さっさと目的地に着いて詳しい話をしたい、というなんとも利己的な望みが込められていた。


もしかしたら気づかれていたかもしれないが。



「到着しました、今日はこの宿で我々とお休みいただくことになっています。


明日には正式な目的地へ向かいますので、手狭ですが一晩だけこの宿で我慢してください。」


「んー、休めるなら場所とか全然構わないんだけ、ですけど。」


「そうですか、何かあったら早めにおしゃってくださいね。


もう日が落ちかけていますから風邪をひいてしまう前に中へお入りください。」


「ありがと、そうさせてもら、います。」



油断するとすぐタメ口で話してしまうことに気づき、変な間を挟みながらなんとか丁寧語で返事をした。



「無理に直そうとしなくても、今まで通り話してくださって結構ですよ。


それにあなたが俺に敬意を示される必要なんてありませんから。」


「よくわかんないけど、そう…?」



ウェラーさんが言ったことが分かるような分からないような、いやあまり分からなかった。


そのため曖昧な返事をしてしまったが、敬語に直しきれない俺にとっては都合のいい言い訳になるのでその理由に乗せてもらうことにした。





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