2.チェリー・ブロッサム~印象的な出会い~




方角を(恐らくだが)確認出来たので、ずぶ濡れの服を適当に絞っていると。



ドドドドドオォォッ…ッ



「…ん?何の音だ?何か走ってきてる…?」



何かがこちらに迫ってきている気がして音のする方向を振り向いた。



「…馬?え?やっぱりファンタジー要素有りなのか?」



すると、視線を向けた先からは榛色の馬がこちらに向かって走って来ていた。


しかもその馬の上には人が乗っているように見える。



(…どうなってんだろ、もしかして俺追われたりする感じなのか?


それとも馬に乗った王子様が迎えに…、なんてことあってほしくないんだけど。)



そんなことを考えながら、俺は自分の下へ向かっている人物が何者なのか確かめるべくその場から動かず待っていた。



「わ、迫力あるな…。」



段々と迫ってくる馬に感想を述べていると、馬に乗っていた20代くらいのカーキ色の軍服(だよな…?)を着た茶髪の男が目の前まで歩いてきていた。


…軍服、だと…?


白昼堂々コスプレしてる男とのご対面…、心の底から関わりたくねぇ…!


失礼なことを考えている俺の目の前に立った男は、申し訳なさそうな顔と声で



「お迎えが遅れてしまい申し訳ありません、こちらに来てから何事もありませんでしたか?」



と英語で話しかけてきた。


ここがどこかはまだ分からないが、少なくともこの男に英語が通じることは間違いない。


アメリカ暮らしだったお陰で難なく会話できるのでその点はラッキーだ。


にしてもずいぶんイケメンな男だな、どこのお国の人だろう。


顔立ちから察するに外国人だよなぁ、背も鼻も高いし。



「うん。大丈夫、だけど。」


「そうでしたか、ご無事でいてくださり何よりです。


さ、詳しい説明は後ほどしますのでまずは俺の後ろに乗ってください。」


「あ、はい。」


「ちなみに乗馬の経験はおありですか?」


「うん、あるけど。てか楽勝。じゃなくて、ここどこ?」


「その説明もゆっくりしますから、とにかく急いでここを離れましょう。


今あなたがこの場にいらっしゃるのは大変危険ですので。」


「はぁ。」


「それと濡れたままで寒いでしょうから、これを。


髪が周りから見えないよう深く被ってくださいね。」


「?わかった。」



…いや、何が何だかさっぱり分かんねーよ!


と叫びたい心境だったけど、男の顔はそんなこと言えないくらい真剣そのものだった。


大人しく頷かざるをえない状況に、手渡された外套らしき服を着ると言われた通りフードまでしっかり被る。


そして俺が馬に乗ったのを確認するや否や、彼は早速馬をUターンさせて走り出した。


蛇足・乗る時に手引いてくれたんだけど、そもそも自分で乗れる上に乙女じゃないからか全くトキメかなかったわ…。


優しさだけはとてつもなく感じられたんだけどね。





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