揺れる花の髪飾り
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いよいよ明日が作戦決行の本番だ…!
とはいえ先輩たちと違って私は特に準備することがない。
あ。そういえば先輩、今日「自分の力で答えを見つけたい」って言ってたなぁ。明日が本番だというのに大丈夫だろうか…。
彼が何かに打ち込んでいる姿はキラキラとしていてこちらとしても楽しい。わかっている。でもやっぱり少し…
「…寂しいなぁ」
普段ならこうは思わないだろう。
しかし今スカラビア寮には雪が降っているし私の住むオンボロ寮は砂漠のように暑い。私はどちらともなくちょうどいい温度がいいのだが、ずっとスカラビア寮に住んでいる彼は別で。
気候が変わってからというもの、先輩が「寒いよりはこちらの方が慣れているからいい」と私の部屋に泊まっているのだ。とはいえカリム寮長の世話があるから行ったり来たりになっているけれど。
当然私もその度について行こうとした。でもその度に彼が
「身体を冷やしてはよくないからいい子に待っていてくれ。」
なんて頬に手を添えて優しく微笑んでくるのだ。今までの落ち着いている先輩もとても好きだがあの一件以来やたらなんというか…
甘すぎる、のだ。
行動や言動はもちろん変わったと思うがの一番変わったのはそれはもう…優しく甘い声で囁いてくる所だ。ずるい。
表情だって愛おしいですって書いてあるかの如く優しく微笑んでくる。
やることの無い私は練習終わってすぐに帰ってきたが彼が帰ってくる気配はない。
帰ってくる彼を迎えられるのはちょっと新婚みたい、なんてはしゃいでたのが恥ずかしい。
「……う〜。ジャミル先輩ぃ。」
「呼んだか?」
「ハ?!?!」
ガタ…ガタガタガタ…ドンガラガッシャーン!!!!
窓辺に寄せた椅子へ座って図書室から借りてきた本を片手に流し読んでいた…が、突然の声に転げ落ちた。背後から声をかけられてはビックリもするだろう。
「うぅ…いててて…」
声のする方へ向いたら扉近くの壁に凭れていた彼がこちらに歩いてきて手を差し出してきた。
「まったく、何してるんだ君は。驚かせてすまないね。怪我はないか?」
「はは…大丈夫です、すみません。というか戻ってたんですね」
差し出された手にグイッと引っ張ってもらって立ち上がり落とした物を拾った。
「あぁ。そっちはもう掴んだからな。心配かけたな。明日は妖精達だけではなく君も必ず楽しませてみよう。寂しくさせた詫びと言ってはアレだが、残り少ない今日の時間は君に構おうと思ってな。」
「え」
寂しがっていたのに気付いていたことにも驚いたがその腕には衣装が抱えられているのに気がついた。
「バレてたんですか。というかなぜ衣装…?」
「はは、バレてないと思ったのか?だって君、俺が試着させられていた時からあんなにキラキラさせた目で見てた上に、決まった衣装見せた時だって口閉じるのも忘れて俺に見蕩れていただろう?」
全部お見通しじゃないか。へなへなと力が抜けて思わずポスッと音を立てて椅子へ逆戻りだ。両手で顔を覆っているものの真っ赤なのがバレているだろう。
「君は粧し込んだ恋人の感想を言ってはくれないのか?」
「そんなのめちゃくちゃに、似合ってますよぉ…」
「そうかそうか。こんな上等なものを俺が着るだなんて気が重くて仕方なかったが君に似合っていると言われると気分があっという間に晴れるな。」
嬉しそうに微笑んでいる彼が眩しくてかっこよくて…しんどいつらいむりぃ……
こちとら今必死なのに更なる爆弾発言を落として行った。
「君の為に着てここで踊ってやろうか」
「……エッ?…今なんと…?」
「だから、君の為に、この衣装で、ここで踊って見せてやろうか、と言った。」
「」
願ってもない嬉しい話だがいざそうとなると心が追いついてこない。心臓持つかコレ…?なんて固まりながら百面相していたものだからあっという間に時間が経っていたことや彼が何をしているかまで気が回らなかったのだ。
「ほら。こっち向け」
意識が明後日に向いていた所を突然頬を掴まれてグイッと向けられた先には衣装に身を包み化粧を施した彼がいて。
「わぁ?!?!えっ?なんで?!?!」
「伊達に君と付き合ってないさ。君の反応で嫌かどうかくらい簡単にわかる」
「サスガデス」
「ほら。何して欲しいか言え」
えっどうしよう!?どうしy…あ。
「うっ…あの…触っても…?」
「なんだそんなことか。ほらこっちに来い。」
ベッドに座った彼が開いた自分の足を叩いているのはそこに座れということか。
「ひぇ…」
美しすぎて直視できない。おずおずと足の間に収まって衣装に手を這わす。
「手触りがいいだろ?好きに触って構わないが飾りは繊細だからやさしくな。」
「せ、先輩、か、かっこよすぎはしませんか」
「あはは。そうか?お気に召して貰えてなによりさ」
後ろに手をついたままされるがままになってくれている。
かっこよすぎる。ずるい。
「あぁ、そうだ。ちょっと待っててくれ」
「へ?」
何だろうか。…ん?マジカルペン?彼がニヤッと笑ったその瞬間キラキラとした光に包まれた。
「え?」
スッと立ち上がった先輩に手を引かれ鏡の前に連れていかれてようやく意味がわかった。
「わ…!!先輩、これ…!!」
「ああ。実はこっそりクルーウェル先生に頼んでいてな。どうだ。気に入ったか?」
鏡の前には女性用としてリメイクされ、飾りなどはアレンジが効いているお揃いの衣装を着た私と後ろに立つ彼。
「えっ!すごい、嬉しい!」
「喜んでくれるのは嬉しいがまだ終わってないぞ。ほら次はここに座って目を閉じててくれ。」
彼が鏡の前に椅子を持ってきて座るよう促してくる。
「…?はい。」
大人しく座ったら瞼に何かが触れて撫でていくような感覚。
「目を開けていいぞ」
目を開けるとそこには化粧筆とアイシャドウを手に持ち微笑んだ彼。鏡越しに目が合う。
私の瞼にはラメがキラキラと光るシルバーグレー。
「先輩!こ、これ!」
「ああ。俺と同じものだ。ほらやっぱり。似合うじゃないか。」
「ありがとうございます…!えへへ。すごい嬉しい」
「それはなによりだな。なぁかわい子ちゃん、次は君を俺によく見せてくれるか?」
「…!…はい」
どちらからともなく触れるだけのキスを一つ。彼の動きに合わせて髪飾りが音を立てて揺れた。
'20/06/12 公開
'21/03/13 再掲
とはいえ先輩たちと違って私は特に準備することがない。
あ。そういえば先輩、今日「自分の力で答えを見つけたい」って言ってたなぁ。明日が本番だというのに大丈夫だろうか…。
彼が何かに打ち込んでいる姿はキラキラとしていてこちらとしても楽しい。わかっている。でもやっぱり少し…
「…寂しいなぁ」
普段ならこうは思わないだろう。
しかし今スカラビア寮には雪が降っているし私の住むオンボロ寮は砂漠のように暑い。私はどちらともなくちょうどいい温度がいいのだが、ずっとスカラビア寮に住んでいる彼は別で。
気候が変わってからというもの、先輩が「寒いよりはこちらの方が慣れているからいい」と私の部屋に泊まっているのだ。とはいえカリム寮長の世話があるから行ったり来たりになっているけれど。
当然私もその度について行こうとした。でもその度に彼が
「身体を冷やしてはよくないからいい子に待っていてくれ。」
なんて頬に手を添えて優しく微笑んでくるのだ。今までの落ち着いている先輩もとても好きだがあの一件以来やたらなんというか…
甘すぎる、のだ。
行動や言動はもちろん変わったと思うがの一番変わったのはそれはもう…優しく甘い声で囁いてくる所だ。ずるい。
表情だって愛おしいですって書いてあるかの如く優しく微笑んでくる。
やることの無い私は練習終わってすぐに帰ってきたが彼が帰ってくる気配はない。
帰ってくる彼を迎えられるのはちょっと新婚みたい、なんてはしゃいでたのが恥ずかしい。
「……う〜。ジャミル先輩ぃ。」
「呼んだか?」
「ハ?!?!」
ガタ…ガタガタガタ…ドンガラガッシャーン!!!!
窓辺に寄せた椅子へ座って図書室から借りてきた本を片手に流し読んでいた…が、突然の声に転げ落ちた。背後から声をかけられてはビックリもするだろう。
「うぅ…いててて…」
声のする方へ向いたら扉近くの壁に凭れていた彼がこちらに歩いてきて手を差し出してきた。
「まったく、何してるんだ君は。驚かせてすまないね。怪我はないか?」
「はは…大丈夫です、すみません。というか戻ってたんですね」
差し出された手にグイッと引っ張ってもらって立ち上がり落とした物を拾った。
「あぁ。そっちはもう掴んだからな。心配かけたな。明日は妖精達だけではなく君も必ず楽しませてみよう。寂しくさせた詫びと言ってはアレだが、残り少ない今日の時間は君に構おうと思ってな。」
「え」
寂しがっていたのに気付いていたことにも驚いたがその腕には衣装が抱えられているのに気がついた。
「バレてたんですか。というかなぜ衣装…?」
「はは、バレてないと思ったのか?だって君、俺が試着させられていた時からあんなにキラキラさせた目で見てた上に、決まった衣装見せた時だって口閉じるのも忘れて俺に見蕩れていただろう?」
全部お見通しじゃないか。へなへなと力が抜けて思わずポスッと音を立てて椅子へ逆戻りだ。両手で顔を覆っているものの真っ赤なのがバレているだろう。
「君は粧し込んだ恋人の感想を言ってはくれないのか?」
「そんなのめちゃくちゃに、似合ってますよぉ…」
「そうかそうか。こんな上等なものを俺が着るだなんて気が重くて仕方なかったが君に似合っていると言われると気分があっという間に晴れるな。」
嬉しそうに微笑んでいる彼が眩しくてかっこよくて…しんどいつらいむりぃ……
こちとら今必死なのに更なる爆弾発言を落として行った。
「君の為に着てここで踊ってやろうか」
「……エッ?…今なんと…?」
「だから、君の為に、この衣装で、ここで踊って見せてやろうか、と言った。」
「」
願ってもない嬉しい話だがいざそうとなると心が追いついてこない。心臓持つかコレ…?なんて固まりながら百面相していたものだからあっという間に時間が経っていたことや彼が何をしているかまで気が回らなかったのだ。
「ほら。こっち向け」
意識が明後日に向いていた所を突然頬を掴まれてグイッと向けられた先には衣装に身を包み化粧を施した彼がいて。
「わぁ?!?!えっ?なんで?!?!」
「伊達に君と付き合ってないさ。君の反応で嫌かどうかくらい簡単にわかる」
「サスガデス」
「ほら。何して欲しいか言え」
えっどうしよう!?どうしy…あ。
「うっ…あの…触っても…?」
「なんだそんなことか。ほらこっちに来い。」
ベッドに座った彼が開いた自分の足を叩いているのはそこに座れということか。
「ひぇ…」
美しすぎて直視できない。おずおずと足の間に収まって衣装に手を這わす。
「手触りがいいだろ?好きに触って構わないが飾りは繊細だからやさしくな。」
「せ、先輩、か、かっこよすぎはしませんか」
「あはは。そうか?お気に召して貰えてなによりさ」
後ろに手をついたままされるがままになってくれている。
かっこよすぎる。ずるい。
「あぁ、そうだ。ちょっと待っててくれ」
「へ?」
何だろうか。…ん?マジカルペン?彼がニヤッと笑ったその瞬間キラキラとした光に包まれた。
「え?」
スッと立ち上がった先輩に手を引かれ鏡の前に連れていかれてようやく意味がわかった。
「わ…!!先輩、これ…!!」
「ああ。実はこっそりクルーウェル先生に頼んでいてな。どうだ。気に入ったか?」
鏡の前には女性用としてリメイクされ、飾りなどはアレンジが効いているお揃いの衣装を着た私と後ろに立つ彼。
「えっ!すごい、嬉しい!」
「喜んでくれるのは嬉しいがまだ終わってないぞ。ほら次はここに座って目を閉じててくれ。」
彼が鏡の前に椅子を持ってきて座るよう促してくる。
「…?はい。」
大人しく座ったら瞼に何かが触れて撫でていくような感覚。
「目を開けていいぞ」
目を開けるとそこには化粧筆とアイシャドウを手に持ち微笑んだ彼。鏡越しに目が合う。
私の瞼にはラメがキラキラと光るシルバーグレー。
「先輩!こ、これ!」
「ああ。俺と同じものだ。ほらやっぱり。似合うじゃないか。」
「ありがとうございます…!えへへ。すごい嬉しい」
「それはなによりだな。なぁかわい子ちゃん、次は君を俺によく見せてくれるか?」
「…!…はい」
どちらからともなく触れるだけのキスを一つ。彼の動きに合わせて髪飾りが音を立てて揺れた。
'20/06/12 公開
'21/03/13 再掲
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