「昼飯食いにいくぞ」
「わーい、待ってました!」
「お前、食に興味ないんじゃないのか」
「お腹は減る」
「そうか」

生徒達と遭遇しないように昼食時間はずらした。
事情を聞いているランチラッシュは俺達が現れると用意していた昼食を出してくれた。

「こちらはランチラッシュだ」
「こんにちは」
「話は聞いたよ!随分グルメなお嬢さんなんだって?腕が鳴るよ!」
「えっと･･･」

名前はなぜか戸惑っていた。
しかしそれ以上口を開くことはなく、席について黙々と用意されたカレーを食した。

「どうだい?」
「･･･美味しいです」
「嘘つくの下手だな」

どう見ても美味しいといった表情ではない。
ランチラッシュは落ち込むどころか「次こそは!」と息巻いている。

「ごちそうさまでした」

名前はカチャンと食べ終わった皿にスプーンを置いた。

「相澤先生、彼女は何が好きなんですか?」
「それが、料理を美味しいと思ったことはないそうで」
「う～ん･･･色々変えてみるよ!」
「すみません、よろしくお願いします」


気のせいか少し落ち込んでいるように見える名前を促し、職員室へ戻った。



********



相澤さんが授業中の間は職員室でお留守番。
ミッドナイトさんがいたら気分転換に敷地内ではあるが建物の外に連れ出してくれた。

でもそれは私のことを本気で思っているのではなくて、警戒心を解くための手段にすぎないこともまた私は理解していた。
彼女であれば私が逃げ出そうとしても眠らせられる。

どの道今は逃げるつもりはない。

放課後は相澤さんが残業を終えるのを職員室で待った。

窓から顔を覗かせ、生徒達が下校していく姿を眺めた。

「何か珍しいものでもあったか」
「ううん」

相澤さんの隣に私の椅子と机を用意してもらった。
一般職員は不思議そうな顔で私を見ていたが「一時的に保護が必要なんです」との説明で納得していた。

「よし、帰るぞ」

パソコンの電源を落として相澤さんは立ち上がった。



食堂に置いてあった夜ご飯を食べてから一緒に帰宅した。