【9章】脆弱
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廊下からザワザワと人の声が聞こえた。
閉会式が終わって皆が戻ってきたのだ。
ガチャリとドアノブが回った。
「あ!名前ちゃん!」
お茶子ちゃんが私を見つけて駆け寄ってきた。
「体調もう大丈夫なん?」
あ、そっか。
体調不良ってことになってるんだった。
「うん。お昼食べすぎちゃったのかな?」
「案外食い意地張ってんのな!」
切島くんが笑ったので私も笑って返した。
みんなに囲まれながら、あの後どういう試合展開だったのか聞いた。
「来年また頑張るよ」
表彰台に立てなかった皆も同じ気持ちだった。
「早く着替えて教室戻らないと相澤先生にどやされちゃう」
私の一言で皆慌てて荷物を持って教室へ戻っていった。
HRが終わり、皆体育祭で放出していたアドレナリンと反動による疲労とでよく分からないテンションで帰宅していった。
「名字」
「何?轟くん?」
振り向いて轟くんの方を向いた。
「あ、まだ言ってなかった。準優勝おめでとう。・・・おめでとうって言っていいのかな?」
皆優勝を目指していた。
優勝出来なかった彼に祝いの言葉を掛けたけれど、一瞬迷ってしまった。
「ああ、ありがとう。名字は大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ」
「本当か?」
轟くんの目は私の言葉を信じていないようだった。
疑うような瞳に私は少し視線を逸らしながら軽く頷いた。
「名字には、色々聞いてもらったし名字のおかげで自分の気持ちもちょっと整理できた」
「それなら良かった」
「・・・今度母さんの病院に行こうと思う」
「そっか。きっと喜ぶよ」
「恨まれてるかもしれねぇけど」
「それ、多分お母さんも思ってるよ」
「母さんが?」
「だって自分の子どもに熱湯掛けて後悔しない母親いないよ。轟くんが恨んでるからお見舞い来てくれないって思ってるかも」
「・・・そうだな。行ってくる」
「頑張って」
轟くんは私が机に添えていた指に自身の指を重ねた。
指先から体温が伝わってきた。
「・・・あったかい」
「もし、何かあったんなら話してほしい。今度は俺が助けるから」
私が轟くんを助けた自覚はないけれど。
体育祭でどうやら彼は一皮むけたらしい。
表情が以前に比べて吹っ切れていて穏やかだった。
「ありがとう」
轟くんのその気持ちだけで嬉しかった。
「じゃあ、俺はもう帰るけど名字も帰るなら・・・」
「あ、今日この後保健室にもう一度行くことになってるの」
表向きは体調不良なのでこの嘘もすんなり信じてもらえた。
嘘を吐くことに抵抗がないわけじゃない。
でも私は嘘を吐き続けなければならない。
教室を出て行く轟くんに手を振って別れを告げた。
閉会式が終わって皆が戻ってきたのだ。
ガチャリとドアノブが回った。
「あ!名前ちゃん!」
お茶子ちゃんが私を見つけて駆け寄ってきた。
「体調もう大丈夫なん?」
あ、そっか。
体調不良ってことになってるんだった。
「うん。お昼食べすぎちゃったのかな?」
「案外食い意地張ってんのな!」
切島くんが笑ったので私も笑って返した。
みんなに囲まれながら、あの後どういう試合展開だったのか聞いた。
「来年また頑張るよ」
表彰台に立てなかった皆も同じ気持ちだった。
「早く着替えて教室戻らないと相澤先生にどやされちゃう」
私の一言で皆慌てて荷物を持って教室へ戻っていった。
HRが終わり、皆体育祭で放出していたアドレナリンと反動による疲労とでよく分からないテンションで帰宅していった。
「名字」
「何?轟くん?」
振り向いて轟くんの方を向いた。
「あ、まだ言ってなかった。準優勝おめでとう。・・・おめでとうって言っていいのかな?」
皆優勝を目指していた。
優勝出来なかった彼に祝いの言葉を掛けたけれど、一瞬迷ってしまった。
「ああ、ありがとう。名字は大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ」
「本当か?」
轟くんの目は私の言葉を信じていないようだった。
疑うような瞳に私は少し視線を逸らしながら軽く頷いた。
「名字には、色々聞いてもらったし名字のおかげで自分の気持ちもちょっと整理できた」
「それなら良かった」
「・・・今度母さんの病院に行こうと思う」
「そっか。きっと喜ぶよ」
「恨まれてるかもしれねぇけど」
「それ、多分お母さんも思ってるよ」
「母さんが?」
「だって自分の子どもに熱湯掛けて後悔しない母親いないよ。轟くんが恨んでるからお見舞い来てくれないって思ってるかも」
「・・・そうだな。行ってくる」
「頑張って」
轟くんは私が机に添えていた指に自身の指を重ねた。
指先から体温が伝わってきた。
「・・・あったかい」
「もし、何かあったんなら話してほしい。今度は俺が助けるから」
私が轟くんを助けた自覚はないけれど。
体育祭でどうやら彼は一皮むけたらしい。
表情が以前に比べて吹っ切れていて穏やかだった。
「ありがとう」
轟くんのその気持ちだけで嬉しかった。
「じゃあ、俺はもう帰るけど名字も帰るなら・・・」
「あ、今日この後保健室にもう一度行くことになってるの」
表向きは体調不良なのでこの嘘もすんなり信じてもらえた。
嘘を吐くことに抵抗がないわけじゃない。
でも私は嘘を吐き続けなければならない。
教室を出て行く轟くんに手を振って別れを告げた。
