【7章】過去
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おじいさんとの出会いは路頭に迷った私にとって唯一の幸運だった。
結局特に何を聞かれるわけでもなく、ただ黙って「気が済むまでいればいい」と言ってくれた。
おじいさんが作る料理は、母とは違った。
基本畑で育てている野菜を煮込むだけ。
たまにハンバーグなど子どもが喜びそうなメニューが出てきたが、見た目はお母さんが作ってくれたものには程遠かった。
「無理して作らなくていいよ」
真っ黒になったおそらくコロッケと思しき物体を見て、私は気を遣ったつもりだった。
しかしおじいさんは意外にも負けず嫌いなのか、口を尖らせた。
「無理などしとらん」
「でも自分は食べないじゃん」
「わしは一人でゆっくり食事したいんだ」
あれから4年。
私は10歳になった。
親が死んだ悲しみにも少し慣れた。
おじいさんの存在も大きかったが、何より私はこの時人生初めて「恋」をした。
畑から近い(と言っても何キロも先だが)神社で知り合った男の子。
「やっほ」
「あ、名前ちゃん」
どうも同級生と性格が合わない彼は、時折この神社に来て時間を潰しているらしい。
「今日は何する?」
「かくれんぼとか?」
2時間ほど遊んで解散。
同じ年の子と遊ぶことなんてあまりなかったので新鮮だった。
学校に行っていない私は彼から聞く話は刺激的だった。
「どうして名前ちゃんは学校に行っていないの?」
「ん~、ちょっとね」
少し気が弱そうだけど、優しい彼が好きだった。
ニコリと笑ったときにできる目尻の皺も魅力的だ。
「そういえばね、この神社でもうすぐ秋祭りがあるんだって」
「へー」
「一緒に行かない?」
嬉しい誘いだった。
でも、人が集まってくるのは危険だ。
分かってた。
分かってたけど。
「うん、行く」
私はそう答えてしまったのだ。
*******************
私は何度も道を間違える。
あの男の子に恋をしたのはその内に1つだ。
「もうそろそろ帰ろうかな」
石段に座っていた彼は腰を上げた。
「結構暗くなっちゃったね」
秋祭りが楽しみで少し話しこんでしまった。
「早く帰らないと」
夕日が落ち切っていて辺りは暗い。
ふと、鼻に知らない匂いが掠めた。
「危ないっ!!」
先に歩こうとした彼の腕を引っ張って、後ろに放り投げた。
ズサッと身体を打ち付けた彼は何が起こったか分からず、ただ痛みに顔を歪めた。
「きひひ。久しぶりに子どもの肉が食える」
目の前の喰種は彼を捕食対象にしたのだ。
間一髪先に気付いて良かった。
「喰種・・・」
腰を抜かしている彼の腕を掴んで立たせた。
「立って!逃げるよ」
彼を置いて逃げれば少なくとも私は助かった。
しかしどうしてもできなかった。
好きだったから。
だが、子どもの足が喰種に敵うはずがない。
あっという間に追いつかれたし、狩る過程を楽しんでいるようにも見えた。
森の中を駆け巡って撒こうと思ったが無理だった。
私は覚悟を決めた。
「名前ちゃん?」
「ここにいて」
私は黒翼を出した。
彼がどんな表情をしているのか分からない。
振り返るのが怖かった。
「やっぱりお前喰種か。その人間、俺に譲ってくれよ」
「やだ」
これが私にとって初めての喰種との戦いだった。
人間が相手なら勝ち目はあるが、喰種相手だと身体的ポテンシャルは五分五分。
しかし子どもであり、経験値の少ない私の方が圧倒的に不利だ。
私はやられないようにするので精一杯だった。
だが確実に体力は削られていく。
防戦一方。
このままだと負けて私も彼もお陀仏だ。
真正面からの戦闘経験がない私には荷が重すぎた。
もう無理かも・・・そう思った時、目の前の喰種の首が飛んだ。
「え・・・?」
「こんなところにおったんか」
ドサリと崩れ落ちた喰種の身体の向こう側にはおじいさんが立っていた。
彼の両目は赤く光り、背中から黒翼が露出していた。
結局特に何を聞かれるわけでもなく、ただ黙って「気が済むまでいればいい」と言ってくれた。
おじいさんが作る料理は、母とは違った。
基本畑で育てている野菜を煮込むだけ。
たまにハンバーグなど子どもが喜びそうなメニューが出てきたが、見た目はお母さんが作ってくれたものには程遠かった。
「無理して作らなくていいよ」
真っ黒になったおそらくコロッケと思しき物体を見て、私は気を遣ったつもりだった。
しかしおじいさんは意外にも負けず嫌いなのか、口を尖らせた。
「無理などしとらん」
「でも自分は食べないじゃん」
「わしは一人でゆっくり食事したいんだ」
あれから4年。
私は10歳になった。
親が死んだ悲しみにも少し慣れた。
おじいさんの存在も大きかったが、何より私はこの時人生初めて「恋」をした。
畑から近い(と言っても何キロも先だが)神社で知り合った男の子。
「やっほ」
「あ、名前ちゃん」
どうも同級生と性格が合わない彼は、時折この神社に来て時間を潰しているらしい。
「今日は何する?」
「かくれんぼとか?」
2時間ほど遊んで解散。
同じ年の子と遊ぶことなんてあまりなかったので新鮮だった。
学校に行っていない私は彼から聞く話は刺激的だった。
「どうして名前ちゃんは学校に行っていないの?」
「ん~、ちょっとね」
少し気が弱そうだけど、優しい彼が好きだった。
ニコリと笑ったときにできる目尻の皺も魅力的だ。
「そういえばね、この神社でもうすぐ秋祭りがあるんだって」
「へー」
「一緒に行かない?」
嬉しい誘いだった。
でも、人が集まってくるのは危険だ。
分かってた。
分かってたけど。
「うん、行く」
私はそう答えてしまったのだ。
*******************
私は何度も道を間違える。
あの男の子に恋をしたのはその内に1つだ。
「もうそろそろ帰ろうかな」
石段に座っていた彼は腰を上げた。
「結構暗くなっちゃったね」
秋祭りが楽しみで少し話しこんでしまった。
「早く帰らないと」
夕日が落ち切っていて辺りは暗い。
ふと、鼻に知らない匂いが掠めた。
「危ないっ!!」
先に歩こうとした彼の腕を引っ張って、後ろに放り投げた。
ズサッと身体を打ち付けた彼は何が起こったか分からず、ただ痛みに顔を歪めた。
「きひひ。久しぶりに子どもの肉が食える」
目の前の喰種は彼を捕食対象にしたのだ。
間一髪先に気付いて良かった。
「喰種・・・」
腰を抜かしている彼の腕を掴んで立たせた。
「立って!逃げるよ」
彼を置いて逃げれば少なくとも私は助かった。
しかしどうしてもできなかった。
好きだったから。
だが、子どもの足が喰種に敵うはずがない。
あっという間に追いつかれたし、狩る過程を楽しんでいるようにも見えた。
森の中を駆け巡って撒こうと思ったが無理だった。
私は覚悟を決めた。
「名前ちゃん?」
「ここにいて」
私は黒翼を出した。
彼がどんな表情をしているのか分からない。
振り返るのが怖かった。
「やっぱりお前喰種か。その人間、俺に譲ってくれよ」
「やだ」
これが私にとって初めての喰種との戦いだった。
人間が相手なら勝ち目はあるが、喰種相手だと身体的ポテンシャルは五分五分。
しかし子どもであり、経験値の少ない私の方が圧倒的に不利だ。
私はやられないようにするので精一杯だった。
だが確実に体力は削られていく。
防戦一方。
このままだと負けて私も彼もお陀仏だ。
真正面からの戦闘経験がない私には荷が重すぎた。
もう無理かも・・・そう思った時、目の前の喰種の首が飛んだ。
「え・・・?」
「こんなところにおったんか」
ドサリと崩れ落ちた喰種の身体の向こう側にはおじいさんが立っていた。
彼の両目は赤く光り、背中から黒翼が露出していた。
