【7章】過去
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とにかく私は足を動かした。
森の中にひっそり建っている研究所。
しかし通い慣れていたので帰り道に迷う事はない。
トイレに行ったフリをしたのですぐに抜け出したことがバレるだろう。
両親には捜査局に見つかってはいけないからと黒翼を外で出すことは禁じられていた。
だが私はスピードを上げる為に黒翼を出して飛行した。
目立たないように低い位置で駆け抜ける。
ぐんぐん上がるスピード。
あまり使ったことがなかったのでバランスを取ることが難しかった。
しかし一刻も早く両親に会いたかった。
振り返ることなくだだ前に進んだ。
街に出る頃には黒翼をなおした。
あとは足を動かして、我が家の玄関扉に辿り着くと必死に叩いた。
「お母さん、お父さん!」
ガチャリとドアが開いた。
今しがた別れた娘が立っているのだから驚かないはずがない。
私は母のお腹に抱き着いた。
「どうしたの?」
母は驚いた様子で私を受け止めたが、父はすぐに外の様子を伺うと玄関扉を閉めた。
「何があったんだ?」
私は先ほど起こった出来事を両親に話した。
「もう貴方達の研究には協力しない!」
父は私の話を聞くやいなや研究所に電話をした。
烈火の如く電話越しに怒鳴りつけると、そのままガチャンと乱暴に受話器を置いた。
母に抱かれて座る私の傍にしゃがみ込むと頭を撫ぜられた。
「ごめんな、辛い思いさせて」
私は首を横に振った。
「でもいいの?」
「私達にとって一番大切なのは名前だから」
この頃は本当に幸せだった。
母と父に愛されて。
平和の象徴にはなれなかったけれど。
家族で幸せに暮らせればそれでよかった。
こうして研究所とは決別した。
*******************
母親は喰種であることさえバレなければ皆と同じ日常生活を送れると言っていた。
学校にも行くはずだった。
ピカピカのランドセルを背負う日を心待ちにしていたのだ。
あの日、私は初めてお使いを頼まれた。
「にんじん、じゃがいも、玉ねぎ・・・今日はカレーだな」
頼まれた材料はちゃんと買った。
「ただ・・・」
ただいま、そう言おうとしたけれど言葉にならなかった。
嫌な臭いがしたのだ。
私達家族だけじゃない、複数人の知らない匂い。
美味しそうな匂い。
慌ててリビングに駆け込んだ。
「お母さん?お父さん?」
白いコートを羽織った男が2人立っていた。
嗅いだことのない匂いはこいつらだ。
しかし私は彼らを知っていた。
「捜査局・・・」
「資料にあった娘だな。殺れ」
「でも、こんな小さな女の子なのに・・・」
「今小さくてもいずれ大人になる」
彼らの足元には父と母が倒れていた。
黄色いラグマットは赤色に染まっていた。
「お母さんは人間なのに・・・」
「喰種隠匿罪だ」
男が私に手を掛けようとしたとき、迷うことなく男を正面から黒翼で貫いた。
研究所と決別したあの日から。
私は母が反対する中、父と黒翼を操る訓練をしていた。
万一の時のために。
"まぁ、使うことはないと思うけどな"
父はそういって大きな手で私の頭を撫でてくれた。
でも私はずっと疑問に思っていた。
使うことはないと言いながら日に日に訓練が厳しくなっていることに。
そしてまるで焦っているかのように、自分の持つノウハウを私に叩き込んだ。
"大丈夫だとは思うが、万一自分の身が危険に晒されるようなことがあったときは・・・迷わず使うんだ"
「お父さん、見て。・・・できたよ」
横たわる父を揺すったが反応はない。
小さい子どもだと油断していたのだろう。
このリビングには死体が2つから4つに増えた。
「お母さん、起きて」
二度と目を覚ますことはないと分かっていたけれど。
それでも揺すらずにはいられなかった。
どうしてこんなことに。
「もしかして・・・私のせい?」
研究所から抜け出すときに黒翼を使ったのを誰かに見られたのだろうか。
こんなことになるならあの時食べておけばよかった。
抜け出さなければよかった。
後悔しても目の前の現実は消えてなくなってはくれなかった。
1時間は経っただろうか。
これ以上ここにいたら捜査局に捕まってしまう。
それでもいいか、と思った。
でもそれでは父が訓練してくれた意味が無駄になる。
私は立ち上がってシャワーを浴びた。
そして必要最低限の持ち物をリュックに詰め、家を飛び出した。
森の中にひっそり建っている研究所。
しかし通い慣れていたので帰り道に迷う事はない。
トイレに行ったフリをしたのですぐに抜け出したことがバレるだろう。
両親には捜査局に見つかってはいけないからと黒翼を外で出すことは禁じられていた。
だが私はスピードを上げる為に黒翼を出して飛行した。
目立たないように低い位置で駆け抜ける。
ぐんぐん上がるスピード。
あまり使ったことがなかったのでバランスを取ることが難しかった。
しかし一刻も早く両親に会いたかった。
振り返ることなくだだ前に進んだ。
街に出る頃には黒翼をなおした。
あとは足を動かして、我が家の玄関扉に辿り着くと必死に叩いた。
「お母さん、お父さん!」
ガチャリとドアが開いた。
今しがた別れた娘が立っているのだから驚かないはずがない。
私は母のお腹に抱き着いた。
「どうしたの?」
母は驚いた様子で私を受け止めたが、父はすぐに外の様子を伺うと玄関扉を閉めた。
「何があったんだ?」
私は先ほど起こった出来事を両親に話した。
「もう貴方達の研究には協力しない!」
父は私の話を聞くやいなや研究所に電話をした。
烈火の如く電話越しに怒鳴りつけると、そのままガチャンと乱暴に受話器を置いた。
母に抱かれて座る私の傍にしゃがみ込むと頭を撫ぜられた。
「ごめんな、辛い思いさせて」
私は首を横に振った。
「でもいいの?」
「私達にとって一番大切なのは名前だから」
この頃は本当に幸せだった。
母と父に愛されて。
平和の象徴にはなれなかったけれど。
家族で幸せに暮らせればそれでよかった。
こうして研究所とは決別した。
*******************
母親は喰種であることさえバレなければ皆と同じ日常生活を送れると言っていた。
学校にも行くはずだった。
ピカピカのランドセルを背負う日を心待ちにしていたのだ。
あの日、私は初めてお使いを頼まれた。
「にんじん、じゃがいも、玉ねぎ・・・今日はカレーだな」
頼まれた材料はちゃんと買った。
「ただ・・・」
ただいま、そう言おうとしたけれど言葉にならなかった。
嫌な臭いがしたのだ。
私達家族だけじゃない、複数人の知らない匂い。
美味しそうな匂い。
慌ててリビングに駆け込んだ。
「お母さん?お父さん?」
白いコートを羽織った男が2人立っていた。
嗅いだことのない匂いはこいつらだ。
しかし私は彼らを知っていた。
「捜査局・・・」
「資料にあった娘だな。殺れ」
「でも、こんな小さな女の子なのに・・・」
「今小さくてもいずれ大人になる」
彼らの足元には父と母が倒れていた。
黄色いラグマットは赤色に染まっていた。
「お母さんは人間なのに・・・」
「喰種隠匿罪だ」
男が私に手を掛けようとしたとき、迷うことなく男を正面から黒翼で貫いた。
研究所と決別したあの日から。
私は母が反対する中、父と黒翼を操る訓練をしていた。
万一の時のために。
"まぁ、使うことはないと思うけどな"
父はそういって大きな手で私の頭を撫でてくれた。
でも私はずっと疑問に思っていた。
使うことはないと言いながら日に日に訓練が厳しくなっていることに。
そしてまるで焦っているかのように、自分の持つノウハウを私に叩き込んだ。
"大丈夫だとは思うが、万一自分の身が危険に晒されるようなことがあったときは・・・迷わず使うんだ"
「お父さん、見て。・・・できたよ」
横たわる父を揺すったが反応はない。
小さい子どもだと油断していたのだろう。
このリビングには死体が2つから4つに増えた。
「お母さん、起きて」
二度と目を覚ますことはないと分かっていたけれど。
それでも揺すらずにはいられなかった。
どうしてこんなことに。
「もしかして・・・私のせい?」
研究所から抜け出すときに黒翼を使ったのを誰かに見られたのだろうか。
こんなことになるならあの時食べておけばよかった。
抜け出さなければよかった。
後悔しても目の前の現実は消えてなくなってはくれなかった。
1時間は経っただろうか。
これ以上ここにいたら捜査局に捕まってしまう。
それでもいいか、と思った。
でもそれでは父が訓練してくれた意味が無駄になる。
私は立ち上がってシャワーを浴びた。
そして必要最低限の持ち物をリュックに詰め、家を飛び出した。
