【6章】遭遇
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「名前ちゃん、帰ろうぜ」
「やだ。目が覚めるまでここにいる」
暗い病室でマイク先生が私に帰宅を促すが、私は相澤さんの目が覚めるまで傍を離れる気は無かった。
「さすがに俺も眠いっていうか」
「寝たいなら寝ればいい。私の見張りが必要なら他の先生とローテーション組んで」
「愛されてんな~、消太」
そうじゃないんだよ、マイク先生。
私は消太さんが目覚めたら、いの一番確かめないといけないことがある。
そのためにもここを離れるわけにも、寝るわけにもいかなかった。
「名前ちゃんは怪我してないの?」
「うん、おかげ様で。途中危なかったけど」
「良かった。助けにいくの遅れてごめんな」
「ううん」
「ん・・・」
相澤さんが呻いた。
私達は会話を止めて、視線を向けた。
「ここは・・・」
目元は包帯で覆われている。
口から洩れる言葉で意識が戻ったことが分かった。
「目覚めたな。先生呼ぶからな」
マイク先生がナースコールを押そうと手を伸ばした。
「待って!」
マイク先生の前に割り込んだ。
「名前ちゃん?」
「先生呼ぶ前に確かめたいことがあるの。・・・相澤先生、お腹減ってる?」
私の急な質問にマイク先生が眉を顰めたことに気付いているが、構わず続けた。
「美味しそうな匂い感じたりしない?」
「・・・?どういう意味だ?」
「名前ちゃん、消太怪我人だし・・・」
「大事なことなの!」
マイク先生の背中を押して相澤さんの横に立たせた。
「マイク先生のこと食べたいって思わない?」
起きたばかりの怪我人に聞くことではないことは分かっている。
それでもこれを確かめずにはいられなかった。
「・・・・・こんな不味そうなやついらない」
私は肩の力を抜いてナースコールを押した。
医者がやってきて相澤さんの容体を確認した後、病室を出て行き再び静寂が訪れた。
「ほら、消太も目覚めたし、帰ろ。な?ミッドナイトさん、きっともう寝てるから俺んち行こう」
「うん・・・」
私はマイク先生に促され、後ろ髪を引かれる思いで相澤さんが横になるベッドに背を向けた。
「・・・・・・マイク、お前一人で帰れ」
「Why!?」
「いいから。こいつの世話係は俺だ」
「いや、でも・・・」
「お前も分かってるだろ。大丈夫だ」
マイク先生は相澤さんに押し切られる形で、一人で病室を出て行った。
こんな瀕死な状態でも変わらない力関係に何だか笑えた。
********
意識が戻った時、全身に痛みが走った。
いや、もう痛みなのかすら分からない。
一番始めに思ったことは「あれからどうなった?」だった。
マイクから現状を聞き、緑谷を除き生徒達に大きな被害が無かったことに安堵した。
「・・・名前、こっちこい」
包帯に覆われていて見えないが、気配で離れた場所にいることは分かった。
渋るマイクだけを返した後、心の中で手招きした。
「ぐずっ・・・」
「泣いてるのか?」
生憎、腕も動かない。
泣いていてもその涙を拭ってやることは今は出来なかった。
「相澤さんのアホ。弱っちい」
「怪我人に鞭打つな」
「弱っちいから・・・だから・・・」
ポスッと上半身に軽い重みと温もりを感じた。
「・・・・・・私が守ってあげる」
「私が、相澤さんを守ってあげる」
なんともまぁ、情けない話だ。
彼女をヒーローにするどころかこんなことを言わせてしまうなんて。
だが、名前が俺を助けようとしてくれたことや、傍から離れようとしなかったことは素直に嬉しくもあった。
「ところで・・・」
上半身から重みがなくなったことで名前が上体を起こしたことが分かった。
「さっきのあれは何だ?」
このままの雰囲気でスルーするわけにはいかない。
起きてそうそう、何の冗談か分からない問いかけを受けた。
しかし名前の雰囲気はただならぬものであり、冗談でないことはすぐに理解した。
そのことに触れられる前に無理矢理マイクを帰した。
「あれは・・・」
名前は言い淀んだ。
しかし、何か大きな覚悟を決めたように息を大きく吸って吐く音が聞こえた。
「ちゃんと話す。でも今は治療に専念して。元気になったら・・・」
「今話せ」
「でも、話したら相澤さん失神するかも」
名前は力なく笑った。
「ついさっきまで失神してたから大丈夫だ。むしろ、寝すぎて目が冴えてる。しばらく眠れそうにない」
「・・・・・・相澤さん、きっと私のこと嫌いになるよ」
「それは俺が決めることだ」
何か重要なことを話そうとしていることは分かった。
元々異世界から来ているんだ。
回復能力の高さの話も最近発覚したばかりだし、また何か出て来るのではないかと常々考えていたので今更何を聞いても驚くつもりはない。
「・・・じゃあ言うけど。前に、相澤さん『どうして喰種を見つけたら捜査局に通報する法律を人間が作ったのか』って聞いたでしょ?」
「ああ」
「私は分からないって言ったけど、あれ嘘」
見えない分聴覚が研ぎ澄まされている。
名前の声は僅かに震えていた。
「・・・・・・喰種は人間を襲って食べるからだよ」
「やだ。目が覚めるまでここにいる」
暗い病室でマイク先生が私に帰宅を促すが、私は相澤さんの目が覚めるまで傍を離れる気は無かった。
「さすがに俺も眠いっていうか」
「寝たいなら寝ればいい。私の見張りが必要なら他の先生とローテーション組んで」
「愛されてんな~、消太」
そうじゃないんだよ、マイク先生。
私は消太さんが目覚めたら、いの一番確かめないといけないことがある。
そのためにもここを離れるわけにも、寝るわけにもいかなかった。
「名前ちゃんは怪我してないの?」
「うん、おかげ様で。途中危なかったけど」
「良かった。助けにいくの遅れてごめんな」
「ううん」
「ん・・・」
相澤さんが呻いた。
私達は会話を止めて、視線を向けた。
「ここは・・・」
目元は包帯で覆われている。
口から洩れる言葉で意識が戻ったことが分かった。
「目覚めたな。先生呼ぶからな」
マイク先生がナースコールを押そうと手を伸ばした。
「待って!」
マイク先生の前に割り込んだ。
「名前ちゃん?」
「先生呼ぶ前に確かめたいことがあるの。・・・相澤先生、お腹減ってる?」
私の急な質問にマイク先生が眉を顰めたことに気付いているが、構わず続けた。
「美味しそうな匂い感じたりしない?」
「・・・?どういう意味だ?」
「名前ちゃん、消太怪我人だし・・・」
「大事なことなの!」
マイク先生の背中を押して相澤さんの横に立たせた。
「マイク先生のこと食べたいって思わない?」
起きたばかりの怪我人に聞くことではないことは分かっている。
それでもこれを確かめずにはいられなかった。
「・・・・・こんな不味そうなやついらない」
私は肩の力を抜いてナースコールを押した。
医者がやってきて相澤さんの容体を確認した後、病室を出て行き再び静寂が訪れた。
「ほら、消太も目覚めたし、帰ろ。な?ミッドナイトさん、きっともう寝てるから俺んち行こう」
「うん・・・」
私はマイク先生に促され、後ろ髪を引かれる思いで相澤さんが横になるベッドに背を向けた。
「・・・・・・マイク、お前一人で帰れ」
「Why!?」
「いいから。こいつの世話係は俺だ」
「いや、でも・・・」
「お前も分かってるだろ。大丈夫だ」
マイク先生は相澤さんに押し切られる形で、一人で病室を出て行った。
こんな瀕死な状態でも変わらない力関係に何だか笑えた。
********
意識が戻った時、全身に痛みが走った。
いや、もう痛みなのかすら分からない。
一番始めに思ったことは「あれからどうなった?」だった。
マイクから現状を聞き、緑谷を除き生徒達に大きな被害が無かったことに安堵した。
「・・・名前、こっちこい」
包帯に覆われていて見えないが、気配で離れた場所にいることは分かった。
渋るマイクだけを返した後、心の中で手招きした。
「ぐずっ・・・」
「泣いてるのか?」
生憎、腕も動かない。
泣いていてもその涙を拭ってやることは今は出来なかった。
「相澤さんのアホ。弱っちい」
「怪我人に鞭打つな」
「弱っちいから・・・だから・・・」
ポスッと上半身に軽い重みと温もりを感じた。
「・・・・・・私が守ってあげる」
「私が、相澤さんを守ってあげる」
なんともまぁ、情けない話だ。
彼女をヒーローにするどころかこんなことを言わせてしまうなんて。
だが、名前が俺を助けようとしてくれたことや、傍から離れようとしなかったことは素直に嬉しくもあった。
「ところで・・・」
上半身から重みがなくなったことで名前が上体を起こしたことが分かった。
「さっきのあれは何だ?」
このままの雰囲気でスルーするわけにはいかない。
起きてそうそう、何の冗談か分からない問いかけを受けた。
しかし名前の雰囲気はただならぬものであり、冗談でないことはすぐに理解した。
そのことに触れられる前に無理矢理マイクを帰した。
「あれは・・・」
名前は言い淀んだ。
しかし、何か大きな覚悟を決めたように息を大きく吸って吐く音が聞こえた。
「ちゃんと話す。でも今は治療に専念して。元気になったら・・・」
「今話せ」
「でも、話したら相澤さん失神するかも」
名前は力なく笑った。
「ついさっきまで失神してたから大丈夫だ。むしろ、寝すぎて目が冴えてる。しばらく眠れそうにない」
「・・・・・・相澤さん、きっと私のこと嫌いになるよ」
「それは俺が決めることだ」
何か重要なことを話そうとしていることは分かった。
元々異世界から来ているんだ。
回復能力の高さの話も最近発覚したばかりだし、また何か出て来るのではないかと常々考えていたので今更何を聞いても驚くつもりはない。
「・・・じゃあ言うけど。前に、相澤さん『どうして喰種を見つけたら捜査局に通報する法律を人間が作ったのか』って聞いたでしょ?」
「ああ」
「私は分からないって言ったけど、あれ嘘」
見えない分聴覚が研ぎ澄まされている。
名前の声は僅かに震えていた。
「・・・・・・喰種は人間を襲って食べるからだよ」
