【25章】君に贈る明るい未来
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相澤さんは私の前に自身の血が入った小瓶を掲げた。
「以前、俺に名前の血を分けてくれた時、俺が喰種化しないか心配していたことがあっただろ?」
USJ事件で相澤さんが深手を負った時の話だ。
「ならその逆が起こってもおかしくはない」
「でも!喰種が人間化するなんて聞いたことない」
「名前は普通の喰種じゃない」
確かにそうだ。
人間を食べた事のない私が、人間の血を取り込むことでどうなるかなんて分からなかった。
「実際、血液検査で成分を調べたところ、この間処理した男の喰種には喰種特有と思われる成分が検出され、名前にはそれが見つからなかった」
人間になった。
それは私がずっと望んでいたことだし、喜ぶべきことであるはずなのに・・・。
「良かったじゃないか」
そう言って頭を撫でてくれる相澤さんに対して、私は笑顔を作ることができなかった。
****************
人間になったことで、私は無個性同然となってしまった。
黒翼も出ないし、誰かが近づいてきてもすぐに気付けない。
私はあの日から体調不良の名目で部屋に引きこもっていた。
「(だるい・・・)」
寝すぎて重くなった身体を起こす。
あれだけ人間になりたいと思っていたのに、私が望んだ形は戦闘能力はそのままで体質だけ人間になりたいという、喰種と人間のいいとこどりをする希望であったことに気付いた。
もちろんそんなことは叶わず。
まるっとそのまま人間になってしまった。
つまり、もう戦うことができない。
私の中でアイデンティティの喪失が起きてしまった。
*******************
名前があれから落ち込んで部屋で塞ぎ込んでしまっている。
生徒達が代わる代わる彼女の部屋に行くが、あまり効果はないようだ。
俺も授業の合間やなるべく残業せずに2人の時間を作るようにした。
「名前、入るぞ」
ノックをして合鍵で入った。
待っていても開けてくれないからだ。
「今日はドリアだ」
ランチラッシュが作った夕飯をテーブルに置いた。
人間になったのだから、空腹が限界を迎えても飢餓状態にはならないはずだ。
しかし今までの習慣が身に着いているのか、ご飯はしっかり食べている。
それだけが救いだった。
のそりとベッドから起きて上がって、俺の前に腰を下ろした。
「・・・ありがとう」
暗い顔をしながらドリアを食べる名前を見て、俺はずっと言おうと思っていたことを口にした。
「すまなかった」
********
病人でもないのに食事を持ってきてもらうなんて、厚かましいと思う。
でもその相澤さんの優しさに私は甘えてしまっていた。
自分のことを受け入れるのにいっぱいいっぱいで、相澤さんが自分を責めていることに気付いてあげられなかった。
私、彼女なのに。
「なんで、相澤さんが謝るの」
「名前に俺の血を入れたからこんなことになった」
「そんな、相澤さんが気にすることじゃ」
「気にするだろ」
「でも!相澤さんが血を分けてくれなかったら死んでたかも」
「それ、俺も同じことを言ったな」
クスリと笑う相澤さんにハッとした。
「・・・・・・正直、ホッとしたんだ」
相澤さんが表情を歪めた。
「人間になったと聞いて、これで平穏な生活を送れるようになるって・・・」
「名前も喜ぶと思ってた」
「自分の考えが浅はかだったよ」
「以前、俺に名前の血を分けてくれた時、俺が喰種化しないか心配していたことがあっただろ?」
USJ事件で相澤さんが深手を負った時の話だ。
「ならその逆が起こってもおかしくはない」
「でも!喰種が人間化するなんて聞いたことない」
「名前は普通の喰種じゃない」
確かにそうだ。
人間を食べた事のない私が、人間の血を取り込むことでどうなるかなんて分からなかった。
「実際、血液検査で成分を調べたところ、この間処理した男の喰種には喰種特有と思われる成分が検出され、名前にはそれが見つからなかった」
人間になった。
それは私がずっと望んでいたことだし、喜ぶべきことであるはずなのに・・・。
「良かったじゃないか」
そう言って頭を撫でてくれる相澤さんに対して、私は笑顔を作ることができなかった。
****************
人間になったことで、私は無個性同然となってしまった。
黒翼も出ないし、誰かが近づいてきてもすぐに気付けない。
私はあの日から体調不良の名目で部屋に引きこもっていた。
「(だるい・・・)」
寝すぎて重くなった身体を起こす。
あれだけ人間になりたいと思っていたのに、私が望んだ形は戦闘能力はそのままで体質だけ人間になりたいという、喰種と人間のいいとこどりをする希望であったことに気付いた。
もちろんそんなことは叶わず。
まるっとそのまま人間になってしまった。
つまり、もう戦うことができない。
私の中でアイデンティティの喪失が起きてしまった。
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名前があれから落ち込んで部屋で塞ぎ込んでしまっている。
生徒達が代わる代わる彼女の部屋に行くが、あまり効果はないようだ。
俺も授業の合間やなるべく残業せずに2人の時間を作るようにした。
「名前、入るぞ」
ノックをして合鍵で入った。
待っていても開けてくれないからだ。
「今日はドリアだ」
ランチラッシュが作った夕飯をテーブルに置いた。
人間になったのだから、空腹が限界を迎えても飢餓状態にはならないはずだ。
しかし今までの習慣が身に着いているのか、ご飯はしっかり食べている。
それだけが救いだった。
のそりとベッドから起きて上がって、俺の前に腰を下ろした。
「・・・ありがとう」
暗い顔をしながらドリアを食べる名前を見て、俺はずっと言おうと思っていたことを口にした。
「すまなかった」
********
病人でもないのに食事を持ってきてもらうなんて、厚かましいと思う。
でもその相澤さんの優しさに私は甘えてしまっていた。
自分のことを受け入れるのにいっぱいいっぱいで、相澤さんが自分を責めていることに気付いてあげられなかった。
私、彼女なのに。
「なんで、相澤さんが謝るの」
「名前に俺の血を入れたからこんなことになった」
「そんな、相澤さんが気にすることじゃ」
「気にするだろ」
「でも!相澤さんが血を分けてくれなかったら死んでたかも」
「それ、俺も同じことを言ったな」
クスリと笑う相澤さんにハッとした。
「・・・・・・正直、ホッとしたんだ」
相澤さんが表情を歪めた。
「人間になったと聞いて、これで平穏な生活を送れるようになるって・・・」
「名前も喜ぶと思ってた」
「自分の考えが浅はかだったよ」